Takeda's Report

備忘録的に研究の個人的メモなどをおくようにしています.どんどん忘れやすくなっているので.

Webにおけるアイデンティティとセマンティックスの表現と利用 (草稿) (その1)

2009年05月02日 | 解説記事
人工知能学会誌用の解説記事の草稿です。

今回は「WebアイデンティティとAI」という特集の1つです。この特集、とっても意欲的でぜひ一読の価値があります。

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1. はじめに
 本稿ではWebの世界においてモノやコトのアイデンティティはどのように表現されるかについて考察する。ここではモノやコトを一括してエンティティと呼ぶことにする。ご承知のようにWebの世界にはURI (Uniform Resource Identifier) というアイデンティティの手段がある。URIは世界中で一意に同定できかつアクセスもできるという強力なアイデンティティの手段である。URIはこれまでにない強力さと便利さをもっていたため、Webの初期にはURIさえあればアイデンティティの問題は解決できるという楽観的見方もあった。しかし、このアイデンティティURI神話というべきものはすぐさま現実の様々な問題に直面した。Webの世界におけるアイデンティティについてどう表現し利用するという問題はそれほど単純ではないことが認識された。しかし、その解決はWebの世界にとって重要なことであり、現在盛んに議論されている。本稿ではこの問題に関する最近の議論を紹介するとともにその中の一つの問題であるアイデンティティ統合について筆者らが取り組んでいる事例を紹介する。
なお本稿の議論は、3つのワークショップ[Hayes06][Bouquet07] [Bouquet08]の議論によるところが大きい。とくにDavid Booth[Booth06][Booth08]とHarry Halpin [Halpin06][Halpin08]の論考は興味深い。興味のある方はこれらのワークショップの論文を直接参照されたい。
まず第2章ではコンピュータがアイデンティティをどのように扱うのかについての枠組みについて述べる。その上で、第3章と第4章では具体的にWebの中でのアイデンティティの表現の仕方について考察する。第5章と第6章ではWebの中でのアイデンティティの利用について述べる。第5章ではLinked Dataというアプローチによるアイデンティティを介したWebの新しい利用法について、第6章では研究者情報サービスにおけるアイデンティティ統合について述べる。
本稿においては人、モノ、コトを区別せずにエンティティとして考察するが、第5章ではその例として人のエンティティを扱う。

2.意味、参照、アイデンティティ
エンティティのアイデンティティを語るにはそもそもエンティティが何を意味しているかがわからないといけない。一般にモノやコトを定義するには内包的な方法と外延的な方法がある。内包的な方法では何らかの公理と他のエンティティを使って個々のエンティティが「定義」される。その定義を満たしていることがそのエンティティのアイデンティティである。もし、内包的な定義が完全にできるならばアイデンティティにおける曖昧性は存在しない。
外延的定義においては実世界(参照される外部の世界)におけるエンティティをもってその定義とする。参照されるべき外部世界が明確であり、またその世界におけるエンティティが明確であり、そして参照が明確であれば、ここにも曖昧性はない。もっともそれは外部世界のアイデンティティ問題に置き換わっただけである。
中間的な定義もあるであろう。一部のエンティティは外部世界の参照によって定義され、一部のエンティティはそれらのエンティティとの関係で示されるといった具合である。実際の問題においては内包的定義のみ、外延的定義のみで完結することは難しく、混在して使われていることが多い。
アイデンティティの問題は、内包的定義(普通にいうところの定義)、参照、参照される外部世界のエンティティという要素に分けて考える必要がある。

(続く)

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