20人の呪縛
とある5月末の昼下がり。
喉が少々いがらっぽいので国会内の医務室に行くと、内科の先生が聴診器をあてながら、
先生:「咳が出ますか?」
私:「今朝から。」
先生:「痰はどうですか?」
私:「粘っこいのが出ます。」
先生:「20人集まりましたか?」
私:「えっ!!!?」
20人・・・あなたはなんの話だと思いますか?
連日、会う人、会う人から「20人集まりましたか?」という質問を頂戴します。
最近では、「こんにちは」と同じように、私への挨拶になりつつあります。
こんな質問を毎日受けるようになった理由は、私が自民党の総裁選挙に立候補すると表明したからです。総裁選挙に立候補するには国会議員20名の推薦が必要なのです。
しかし、こういった質問ばかりを受けて私は思いました。
「みんなどうして僕に総理大臣になったら何をしたいのかと聞いてくれないのか?」
私は、今から10年前に初当選しました。
国会議員になって、東海道線で東京と選挙区を行ったり来たりする日々が続きました。
帰路につく新橋駅のホームや平塚駅から乗った電車の中で、私の顔を見て、多くの方から声をかけて頂きました。
今、考えるとこうした出会いやちょっとした立ち話が、この10年間、真っ直ぐに道を歩んでこられた元気の源だったのかもしれません。
最近、総裁選挙の話題がメディアで取り上げられることが多くなりました。これだけを見れば政治への関心が高くなっていて良いことのように思えます。
しかし中身はどうでしょう? 連日、「誰と誰が会談」「何派がどうした」というテーマだけで、“この国の次のリーダーを選ぶ選挙”が議論されています。
何かが違う気がする・・・。
先日、茅ヶ崎駅のスターバックスで、若いサラリーマンから声をかけられました。
男性:「私は、政治には関心が無いけど、老後の年金だけはちゃんとして欲しい。
本当は、政治家や官僚は、年金とか国民の関心が高いことなんかどうでもよくて、自分自身のことしか考えていないんじゃないか。だいたい、政治家は、国民に都合の悪いことを、いつも知らないうちに決める。」
私は、「はっ!」と激しい衝撃にかられました。
もしかすると、私たち政治家が、日々、議論している声が、国民に伝わっていない。
いや、本当は、国民の声が、ちゃんと政治に伝わっていない。
「何のために総理を目指すのか?」
「総理になって何がしたいのか?」
今、私は、一つの答えを導き出したような気がします。
「20人集まりましたか?」
永田町の住人から聞かれるそんな質問など、国民にとってはどうでもいいこと。
そもそも、自民党の総裁選挙に立候補するために、「国会議員20名の推薦が必要だ」なんてことを、多くの国民は知らないし、関係がない!!
そんな些細なことの前に、何かをしたくて政治家になったのならば、先に何をしたいかを言って手を挙げるのが筋。
そんな正論に立ち返ってみました。
「国民が本当に求めているもの・・・」
5月に、とある新聞社が実施した世論調査によると、政府に求める政策課題の中で、
最も多いのが“年金・福祉などの社会保障問題”でした。
実に、52%、国民の約半分以上が、“年金”を初めとした、社会保障問題に関心があるという結果が明確に出ていたのです。
今の政治は、例えて言うならば“注文の多い料理店”のようなもの。
食べたい料理を注文するのはお客様なのです。
そして、出された料理の味を評価するのもお客様。
この半年、私なりのメニュー(政権構想)を考えました。
私の一番のお薦めは、“年金制度改革”と“教育制度改革”、そしてそれを実現するための“政治改革”です。
他にも、私なりに、今、注文されると思われるメニューを綴りました。
これからの数ヶ月、私が準備したメニュー(政権構想)をもとに、
“お客様が注文したいものを注文できて、美味しいとご満足頂ける”ような
そんな社会の実現のための議論を、皆さんと繰り返しながら、
国民と永田町の距離を縮めたいと思います。