MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

学ぶことを学ぶこと

2008-11-02 08:30:32 | 受験・学校

自分には全く関係のなかった“ハロウィーン”も無事(?)終わり、

今年も残すところあと二ヶ月を切った。

しかし見回しても明るい話題ニュースは殆どない。

外交問題、経済危機、食の安心崩壊、年金問題、医療崩壊…

教育に目を転じれば

受験戦争が続く中、落ちこぼれや不登校対策は後手に回り、

教育の格差は広がるばかり。

勝ち組のはずの一流大学のエリート学生さんたちは

大麻を吸ったり栽培したり…。

管理教育のひずみは随所に現れている。

そこで今回は、ちょっとまじめなお話を…

これからは個人の特性に合わせた教育が必要では、

と考えさせられる記事 ↓ 。

10月28日付 Washington Post 電子版

"Learning About Learning" 

『学ぶことについて学ぶこと』
―脳研究は教室内で成果を生むか―

暗い筒の中、仰向けに寝た Blair Smith さんがじっとしている間、スキャナーが磁波で彼女の脳を細かく調べていた。
単語が彼女の目の前に短時間現れる。
tack(方針)、vase(花瓶)、hope(希望)、glow(輝き)、vague(漠然とした)、cade(ビャクシン属の木)などなど。
11才の子はもしその単語に意味があると思うなら右手のボタンを押し、意味のない単語なら左手のボタンを押すように言われていた。
この検査では解答そのものより、単語に取り組む間に Blair の脳のどの領域に活動が見られるのかをスキャナーが作成してくれる地図がより重要なのである。

Learning

子供たちが文章を理解しようとする時、脳の特定の部位が活性化する。脳スキャンによって、研究者たちはその過程を測定することができる。

この研究の目的は、すぐれた読書能力のある生徒、読書に問題のある生徒、および学習能力障害と診断された生徒の間に存在する神経学的な違いを理解することである、と Baltimore にあるKennedy Krieger Institute で Education and Brain Research Program の責任者を務める Laurie E Cutting 氏は言う。
読み手が知らない単語に頭を悩ませる時、脳のどの部分が活性化するかを神経科学者が特定できるとすると、最終的には教師たちが個人に合わせて読書の指導を調整する助けになるかも知れない。

これはまだ始まったばかりだ。
多くの教育者は、授業法を構築する助けとなる科学的データを切望している。
一方で、神経科学はどのような作業がベストかについて幅広い指針を提供し始めている。
神経科学領域で最近の最も驚くべき新事実の一つは、脳の構造は以前考えられていたよりはるかに適応性があるということだ(神経可塑性 neuroplasticity と呼ばれる概念)。
これに対する理解は、脳を鍛えて算数の問題を解決したり本の内容を理解したりすることを向上させる手段を教師たちが見出す助けとなるかもしれない。

「神経科学が広範な脳梗塞患者で明らかにしてくれることが実にたくさんありますが、それらは教育にも密接な関連があり、10年20年後には我々に規範となる情報を与えてくれるでしょう」とヴァージニア大学の Curry School of Education の Robert C Pianta 学部長は言う。
「私は今こそ研究材料の豊富な5年間であると思っています」

脳研究はすでに、教師たちが複雑な病態―たとえば、注意欠陥多動性障害、失読症、失算症など―を感知し、この取り組みの支えとなる方法を展開してきている。
そもそもこれらの障害は血液検査や他の簡単な医学的診断法が役に立つようなものではない。

認知に関わる科学者たちは、これまでのいくつかの授業の計画をひっくり返すような "micro-development" 説を展開している。
子どもたちや大人たちが、分刻みに、思い出したように学び、しばしば後退することが、いくつかの研究で明らかにされている。
これは、生徒たちが理解に至るまで手探りで進むことが許されるべきであることを示している。
たとえば、電気の理論の説明を受ける前に、バッテリーと銅線を用いて電球を明るくすることを問われることによって理解するような感じだ。

脳の機能はどこまで深く神秘的で謎が続くのか。研究はすこぶるゆっくりとしたペースで展開してゆくように見える。

音声学に焦点を当てることで、読むことに難渋している子どもたちを救うという多くの教育者らの考えが、脳や行動の研究からのデータやその他の情報を解析した研究者たちによって確かめられるまで何十年もかかった、とある専門家は言う。

そんな経緯はあるが、神経科学と教育手段を結びつける動きは勢いを増してきている。
Fairfax 郡の Mantua Elementary School の Jan-Marie Fernandez 校長は、過去2年間にボストンで行われる脳科学会議に5人のスタッフを連れて行った。

「研究からわかったことで最も驚くべきことは、我々の脳が神経可塑性を持っているという事実であると思います」と Fernandez 氏は言う。
「たとえば障害を持った形で配線された脳があるとします。しかし、その配線を時間の経過とともに変えることができます」
脳の配線のつなぎ替えの話は、神経科学の世界で注目されている。
脳障害を持つ人に再び歩いたり話したりすることを教え得るという展望を供するものだ。

その会議で学んだことから、Fernandez 氏は読書が困難な生徒に対して、音素の認識、すなわち、文字を音にリンクさせる能力、に焦点を当てたプログラムを立ち上げた。
「今までのところ、実際に有用であるように思われます」と彼女は言う。

彼女がこれまで読んだ研究にヒントを得た新しい提唱には、子ども達が算数の授業の前にエアロビクス体操をするというものがある。
この試みのポイントは、算数に取り組めるよう彼らのニューロンに下準備をさせることにある。

最先端の教育施設は最近、脳の活動と教育の関連に新たな関心を示してきている。
Harvard University は mind, brain and education degree program を 2002 年に設立した。
Johns Hopkins University は今年、現在の研究成果が教育の実践にどの程度応用されているかを探索することを目的とした神経・教育計画について Maryland State Board of Education に報告した。

先月、Journal Nature に掲載された研究は、算数の授業における、初歩的な直観的な数の大きさの感覚と成績との関連について報告している。
これは算数に問題のある生徒を特定し、彼らへのよりよい指導法を構築する方向へ導くことを可能とする発見だ。
また幼稚園に入る前の授業拡大の提唱者は、柔軟な若い心への早期の教育の重要性を示す研究に注意を向けている。

前出の Curry School の Pianta 氏は、神経科学は自閉症の生徒の教育にも影響を与えてきていると言う。

「20年前なら、これらの子どもは、まあ言ってみれば、愛情を持たせる努力一辺倒に向けられた介入がなされていたかもしれません。
あるいは療法士はスキンシップを嫌う子ども達にスキンシップを薦めていたことでしょう。
しかし今、我々はこの子供の行動は彼らの脳の社会的、感情的情報を処理する能力の結果であるとの見方で、その行動を捉えています。
そういった情報処理能力を押しつぶすことのないよう、自閉症児との交流を構築してゆくことになります」と、Pianta 氏は言う。

Harvard's mind, brain and education master's degree program の責任者である Kurt Fischer 氏は、多くの教育理論が科学に基づいていると主張しているが、実際にはそうではない事実を警告する。

「我々が直面する主要な問題の一つは、実際には意味を持たない“脳科学を根拠とした教育”を謳ったものが多く存在することです。
例えば、それらの一つに、少年少女が全体的に異なった脳を持っており、全く異なった学び方をするという考えがあります。
それはエビデンスが示すものではありません。エビデンスは皆無です。
もう一つは感受期間というものが存在するという一種の凝り固まった考えです。例えば、ある一定の年齢以後は外国語を学ぶことができないというものです。
また、左脳人、右脳人という言い方を聞いたことあるでしょう。これは彼らが左半球あるいは右半球を取り除かれているのでなければ、全くのナンセンスです。
我々すべては脳全体を使っているからです」

Fischer 氏はさらに、新生児用ベッドでバッハを聞かせると赤ちゃんを賢くするという、広く支持されているが疑わしい考えを挙げる。
しかし そのような考えの流行は、教育者と大衆が教室の改革に科学的な裏づけを切望していることを示している、と Fischer 氏は指摘する。

冒頭の Kennedy Krieger のCutting 氏は若い研究対象者の Blair に彼女の脳スキャンの素敵なコピーを手渡した。

得られたデータを元に、研究チームは今度は Blair の一卵性双生児の妹にスキャンのためチューブの中に入ってもらう準備をした。
彼女らはともに全く良好に本が読めるが、彼らの調査から得られたデータは別の子供たちの助けとなることだろう。

将来は獣医になりたいという Blair は彼女の母親である Stephanie Smith さんの横に座ってはしゃいでいた。
でも脳をスキャンされるのはどんな気分だっただろうか?

「気味が悪かったけど、同時に平気でした。他の子供たちの助けになるんだからオーケーです」と彼女は言った。

例えば失読症(難読症)では、

『窓ぎわのトットちゃん』の著者、黒柳徹子さんも

読書・計算障害を持っているといわれている。

リトミック教育で有名なトモエ学園に通い、

その後音楽の道に進んだ後、女優となり、

現在テレビタレントとして多彩な能力を発揮しているのは

皆様、よくご存知の通りだ。

失読症は特に英語圏に多い学習障害の一つで、

俳優のトム・クルーズもこの障害を抱えていることは

有名である(MrK は“英語失語症”だが〔涙〕)。

このように、知的能力に問題がないにもかかわらず、

特定の学習能力に問題がある子供たちは思いのほか

多いのかもしれない。

このような子供たちを一緒くたにして教育する現代社会で

彼らに成績不良の劣等性のレッテルを貼ることは、

隠された優れた能力を殺してしまうことにもなりかねない。

この記事に出てくる検査は恐らく機能的MRIであろうが、

この検査は生徒全員に行うわけにはいかない。

単に成績の出来不出来を決めるのではない個性検査としての

簡便で確実な評価方法…その確立が今求められていると思う。

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