花の四日市スワマエ商店街

表参道スワマエ商店街会長のひとり愚痴

石川梵著 鯨人(くじらびと)

2011年04月17日 | わたくしごと、つまり個人的なこと
石川 梵著「鯨人(くじらびと)」集英社新書

小さな船に乗り、銛1本で巨大な鯨をしとめる、そんな営みを続ける村がある。インドネシア諸島東に位置するレンバタ島のラマレラ村に惹かれた写真家の石川梵氏は、17年間にわたりこの地を訪れともに生活をしながら写真を撮り続けた。この本は、長年にわたる彼と村人たちとの交流と鯨漁の記録だ。
命を懸けて巨大な鯨に挑むラマファ(船の先に立ち銛を持つ人)、カメラを構え続ける石川氏、その瞬間、瞬間の死闘は圧巻だ。
“ラマファ”は自分の為だけじゃない。貧しい人、夫を亡くした人のために鯨と戦うんだ。ラマレラに先祖代々伝わる教えに感動する。
そして、筆者はこう結んでいる。

食うために、生きるために命がけで体を張るラマファ。食われないために死に物狂いで暴れる鯨。その戦いを目の当たりにして感じたのは、太古の昔から人類と他の生き物が延々と繰り広げられてきた生の営みそのもの。
その最も原初の形を目撃したという感覚だった。その行為は野蛮でも残酷でもなく、むしろ神聖であり、崇高にすらみえた。
生き物と生き物との間で交わされる命のやり取りの崇高さに、私はしびれるほど心を動かされた。

しかし、何かが欠けていることに石川氏は気付いていた。それは、人間側からの記録ではなく、哺乳類である鯨側からの記録だった。
石川氏は、鯨のその瞬間の目を撮るために、再度ラマレラ村を訪れるこことなる。