県は19日、石木ダム(川棚町)の建設に伴う付け替え道路の工事を約10カ月ぶりに着工しようと試みたが、ダムに反対する建設予定地の地権者らの抗議を受け、作業に取りかかることができなかった。県は20日も着工を試みるが、地権者らも抗議を続ける構えだ。

 この道路は、水没予定地から移設された墓地に続く約620メートルの区間に造られる予定で、用地はすでに県が買収。県は昨年7月にも工事に取りかかろうとしたが、地権者らの抗議にあい、見送っていた。

 工事を巡っては、県の申し立てを受けた長崎地裁佐世保支部が3月、地権者ら16人に対して工事の妨害を禁止する仮処分を決定。この日は決定後初めて、着工を試みた。

 午前9時半ごろ、現場に続くゲートに県石木ダム建設事務所の古川章所長らが現れると、地権者や支援者約40人が道をふさいだ。古川所長は「妨害行為が違法だという裁判所の判断が出ている」と説明して退去を求めたが、地権者らは「工事強行より 話し合い!」などと書かれたプラカードを掲げ、無言で立ちはだかった。

 県側はこの後も断続的にゲート内に立ち入ろうとしたが、入れなかった。古川所長は取材に、「状況を確認して、入れるようであればいつでも入る」と話した。追加の仮処分申請については「(現時点では)全く白紙」とした。

 家族が仮処分決定を受けたという地権者の女性は「私たちはただ、ここに住みたいと思う、それだけなんです。この道路工事を許してしまえば、ダム本体の工事まで止まらなくなってしまう」と話した。

 道路の工期は8カ月程度とみられる。関連予算の執行期限は今年度までで、県は着工を急いでいる。

 ダム建設の予定地には、移転を拒む13世帯が暮らす。住民らは「県・佐世保市の水需要予測は過大」などとしてダムは不要だと主張。県や佐世保市側は「安定的な水の供給にはダムが必要」と反論し、用地の強制収用を可能にする手続きを進めている。

 民主党政権下でのダム事業の見直しで、国は12年、「地元の理解を得る努力」を求めたうえで事業継続を認めた。中村法道知事が昨年、説明に赴くなどしたが、地権者らの理解を得られなかった。

県は未買収の土地の一部について、明け渡し期限などの裁決を県収用委員会に申請し、収用委が検討している。(小野太郎)