細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『共喰い』昭和末期に呑まれた家族の食い倒れ。

2013年07月11日 | Weblog

●7月9日(火)13−00 六本木<シネマートB2試写室>
M−082『共喰い』(2013)スタイルジャム/集英社/ミッドシップ/日
監督/青山真治 主演/菅田将暉 <102分> 配給/ビターズエンド ★★★☆☆
あの傑作「サッド・ヴァケーション」などで強烈な映像感覚を見せた監督の、またも下関郊外を舞台にした衝撃作。
昭和の最後の夏。田中慎弥の原作を、より鮮烈なエンディングで締めた血と汗と精液にぬり込められたドラマだ。
監督は、ある種、あの時代の「日活ロマンポルノ」が貪っていた情欲の地獄を、異色のホームドラマにしている。
父親の異常なまでの性欲と暴力癖を自分の内心に感じた青年は、その妄執から脱皮しようとするが、現実は泥沼の日々だ。
それは、古びた魚屋で日々ナマ魚を解体している片手の元妻が凝視していた。田中裕子が好演している。
ちょっと「エデンの東」のような家族構成だが、シェークスピアの家族悲劇のスタイルも感じさせる。
哀しいのは、そのセックスと暴力に翻弄されていく、歪んだ愛情の救いようのない惨状。
タッチは、今村昌平の作品や、園子温監督の「ヒミズ」にも似通っているが、この情欲の地獄もまた、あまりにも哀しい。
汚れた廃液と精液と唾液の河口で、青年はセックスのイメージにも似た「うなぎ」の捕獲を待っている。
その不気味なうなぎを、ひとりウマそうに食べている父親。これって戦後の昭和の象徴なのだろうか。
全編、不快な風景と、もっと不快な人間達の殺し合いを見せる映画のエネルギーは、またしても強かに圧倒する。
日本映画のタイプとしては大嫌いだが、これもわれわれの住む日本に塗り込められた狂気の現実なのだ。

■強烈なサードへのゴロがイレギュラーして、グラブを弾いてブルペンへのツーベース。
●9月7日より、新宿ピカデリーなどでロードショー


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