細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『沈黙・サイレンス』はスコセッシ監督の夢の映像的なコンフェッションか。

2017年01月12日 | Weblog

1月6日(金)10-00 飯田橋<角川映画試写室>

M-001『沈黙/サイレンス』" SILENCE" (2016) A I Films / Sharpsword Films / Catchplay / I M Global / Fabrica de Cine.

監督・マーティン・スコセッシ 主演・アンドリュー・ガーフィールド、リーアム・ニースン <138分・ビスタサイズ>・配給・KADOKAWA

1988年に来日して、黒澤明監督の『夢』の製作の際に、この遠藤周作の原作「沈黙」を知り、さっそく映画化を思いついたというスコセッシ監督の新作。

という次第で、「ギャング・オブ・ニューヨーク」以来、10数年ぶりの新作が日本での製作作品ということもあって、試写室は朝早くから満席という前評判だ。

イタリア系ニューヨーカーのスコセッシ監督が、このキリシタン弾圧のテーマを選んだのかは、やはりあの「最後の誘惑」からのキリスト教に関する使命感からなのだろうか。  

あの生けるキリストの悩みを描いたのも、1988年の黒澤の「夢」の製作をした年で、おそらく「沈黙」の映画化に関しては、そのときの<出会い>があったからだろう。

17世紀、江戸時代の初期、ポルトガルの宣教師のアンドリューが、当時、マカオから密航してキリシタン弾圧の非常に厳しかった長崎地区で棄教したといわれたリーアム司祭の真実を知るために密航。

長崎は禁教の弾圧が厳しくて、外海地区のトモギ村という貧しい漁村に辿り着き、そこで窪塚洋介扮する密通者の情報を頼りに、隠れ家のような教徒の集会に出て情報を集めて行く。

タイトルが「サイレンス」ということもあって、映画はアンドリューが漁村のキリシタンの情報を頼りに、行方の判らないリーアム神父を探す、という一種サスペンス映画のタッチだ。

久しぶりにメガホンをとったスコセッシ監督は、もともとは映画の仕事ではなくキリスト教の宣教師になりたかったというので、このテーマは彼の、心の<夢>だったのだろう。

陰湿な九州の海岸地区の集会小屋や地下や岩窟の隠れ集会場を転々としていく展開は、まるでダークなサスペンスで、まるでゲシュタポ追求のスパイ映画。

かなり原作と、歴史的な事実に忠実に描こうとしているスコセッシの誠意が感じられる演出は重厚で、大島渚監督の時代劇なども参考にしたような危機感が緊迫していく。

ナガサキの宗教検査官のような、謎めいた通訳のような侍の浅野忠信が、その重苦しさを消すような軽妙な人物を演じていて、この飄々とした存在が、この映画の重苦しさを救っているのはありがたい。

貧しく厳しい弾圧の捜索行のようなドラマは、あのスティーブ・マックイーンとダスティン・ホフマン共演の「パピヨン」での逃避行を思い出したが、ラストではリーアムがドラマを締める。

高倉健と仕事をしたかった・・と言っていたスコセッシ監督は、このナガサキの慇懃な代官の役を、もしかしたら健さんで・・と、考えていたのでは・・・と思ってしまった。

 

■レフト線ギリギリの強いゴロがフェンスを走り、ツーベース。 ★★★☆☆

●1月21日より、全国ロードショー 


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