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神の名を口にしてはならぬ  ~歌劇「モーゼとアロン」~

2020年12月19日 | 映画・音楽・舞台・美術などの評
「神の名をみだりに口にしてはならぬ」
モーゼの十戒に出てくる戒めの言葉です。

ユダヤ教、キリスト教のことは、ほとんど理解しているとは言えない私ですが、
多くの宗教の開祖は、偶像崇拝や教団を作ることを強く戒めました。

エジプト文明の神々に対抗する立場のモーゼは、権威を強く否定する身に育ち、神の名を口にした瞬間から、それは戦争をうみ、権威を振りかざすものに変質してしまうということを目の当たりにしていました。

そもそも神は、かたちのないものであり、言葉では言い表すことのできない「何者か」であることは、古来、文明圏を問わず世界の原初信仰に共通する考え方でした。
それが共同体の発展、古代国家の登場とともに一神教が生まれ、権威のために神々が利用されるようになりはじめます。
モーゼが生きていた時は、まさにそのような矛盾を背負った時代でした。

 
そのためモーゼの兄アロンは、形のないもの、言葉にできないものをどうやって人に伝えたら良いのかと、巧みに言葉を駆使してモーゼが行わない偶像もつくりあげてしまいます。
 
 
ユダヤ人でもあるシャーンベルグは、まさにこれを自らのテーマとして、この物語を最後の仕事として取り組みました。
十二音技法をはじめとする現代音楽の先がけをなしたシェーンベルグですが、この曲は電子音楽が普及するような時代にならなければ上演は不可能であろうと考えていたようです。ところが、時代は彼の想像よりもずっと早く進化しました。
 
かたちのないもの、言葉にならない何者かの表現は、宗教と芸術に共通する根本テーマでもあります。
 
     何ごとのおわしますかは知らねども、
          かたじけなさに涙こぼるる
                   西 行
 
最近、アフガニスタンの中村哲医師の活動に始まって、中東の歴史、ユダヤ教、キリスト教、イスラムなどの宗教や習俗などをこのところ集中して学んだので、何度か、聞いては途中で挫折していたこの難曲を、ようやく通して聴けるレベルになりました。
 
 
主題が明確に理解できるようになったら、今まで難曲とばかり思っていたものが、モーゼとアロン以外はほとんど合唱で語られてることなど、意外とシンプルな構造として聴けるようになりました。
 
 
シェーンベルグ 歌劇「モーゼとアロン」
指揮 ピエール・ブーレーズ
BBC交響楽団 BBCシンガーズ/オルフェウス少年合唱団
モーゼ:ギュンター・ライヒ
アロン:リチャード・キャシリー
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