幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

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 あめがふっている/いた

2008-08-25 00:11:24 | Weblog

 

 あめがふっている窓の外
 
 じめじめしているからクーラーをかけている
 
 窓を閉め切って
 
 けっして誰にも開かれない窓の外は
 
 夜
 
 どこにあるのかわからない
 
 涼しい風の吹き抜ける川面
 
 そこで戯れる子供時代の記憶
 
 ひとり遊びにあきもせず
 
 母がいることも忘れていた
 
 太陽が沈み
 
 あたりがオレンジ色に染まり
 
 涼しい夜風が吹いてくるまで
 
 
 それは 悲劇の始まり
 
 繰り返す悪夢から逃れるため
 
 苦し紛れに唱えたチャント
 
 それが歌になり
 
 呪文になり
 
 やがて賛美歌になったとき
 
 すっかり熱にうなされて
 
 死の淵からあの世を垣間見ていた
 
 
 それが唯一の慰めの記憶
 
  
 天空の黄金の昼間を
 
 裸で漂っていた
 
 
 そんな夢を見ながら
 
 裸でシーツにくるまっていた
 
 あのとき
 
 ぼくは忘れていたのだ
 
 夢を見ていた夢を忘れていたことを
 
 記憶を失って 気づいてみたら
 
 それもまた つじつまの合わない記憶だった

 今となっては もう とりかえせない
 
 現実がなんだったのかさえ 覚えていない
 
 きっとそれが ぼくの 選択だったのだろう
 
 
 そして気づいてみたら
 
 今 ここに いた
 
 それ以外 すべてが 夢だったように
 
 
 
 
 
 
 

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