南の島に行って青い海に浮かんだ
白い砂が風に飛ばされて目が見えなくなった
深い海の底に沈めば明日を思い煩うこともないと思った
でも夜になれば腹が減って見知らぬ街の雑踏の中を歩いた
外国人観光客の一人として誰でもない自分のまま
思い出もない見知らぬ誰かと一緒に明日もわからないその日暮らしをすれば
親も兄弟も友人もいない自分でいられる
旅とは本来そのようなもの
行くあてもなく彷徨いながら
自分は誰かと問う自分すらもいない
過去の記憶は風化した遺跡のように風に飛ばされ
未来を写し出す映写機はショートして点滅しているだけ
光の明滅は
南海の波しぶきとなり
スローモーションになり
孤立した現実が夢の中に浮かんでいる
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