幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

幻の現在詩人 紫源二 の リアルタイム・ネット・ポエトリー

 明日を考えないために

2008-06-27 01:09:01 | Weblog

 

 5人の女
 
 歩道を歩いている
 
 犬をつれたみすぼらしい老婆
 
 凱旋門を自転車で走り抜ける
 
 買い物かごには
 
 腐った野菜
 
 それを食べるのだろう
 
 それを煮て食べるのだろう
 
 それを洗って生で食べるのだろう
 
 それを焼いて食べるのだろう
 
 それを火であぶって食べるのだろう
 
 
 それなのにどうしてぼくは
 
 こんなに悲しいのだろう
 
 あの5人の女がそれぞれに
 
 ぼくを見ていたから
 
 ぼくは一人を見て
 
 それを見ているもう一人を見た
 
 そうしたらもう一人がそれを見ていた
 
 あとの二人は
 
 目を瞑っていた
 
 きっと海と山を見ていたのだろう
 
 一人は水着を着て肌を焼き
 
 一人はコートを着て見物
 
 
 水がたくさんあって
 
 その中に浮かんで
 
 沈んでいく
 
 
 昨日あったことを今日はもう忘れ
 
 明日あることを今日はもう考えない
  
 
 
 

 
 

最新の画像もっと見る

コメントを投稿