海を見つめていると
あなたはぼくのことを
詩人だと言った
でも あなたの書いた詩は
ぼくのよりも ずっと
詩的だった
あなたはぼくに約束してくれた
地球に張り付いた
薄い皮膜でしかない海の彼方に
ぼくを 連れて行ってあげると
でも ぼくは
そこへは永遠に辿り着けないと言って泣いた
もう二度と
そこへは帰れないのを
ぼくは 知っていたから
ぼくより上手に詩を書いたあなたと
永遠の波が巡る地球の表面で
ふたりは見ている
海よりも深い
湧き上がる雲にも及ばない深淵
でも あの入道雲は
宇宙の果てまでは
上昇して行かない
雨になって海面に降り注ぎ
やがては海底に沈む
だから、ぼくは泣き叫んで 駄々をこねた
ちがう! ちがう! ちがう! と言って
自分の運命を呪った
でも本当は
満足すればよかったのだ
すくなくとも
満足するふりだけでもすればよかったのだ
あなたが連れて行ってくれた所
そこは 小さく光っていなかったけれど
針の先のような光
ぼくは そこへ行きたかった
だから ぼくは 海を見つめ
あなたは
ぼくよりも上手に
詩を書いた
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