幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

幻の現在詩人 紫源二 の リアルタイム・ネット・ポエトリー

 海

2007-09-11 00:00:12 | Weblog

 
  海を見つめていると
 
  あなたはぼくのことを

  詩人だと言った
  
  でも あなたの書いた詩は
 
  ぼくのよりも ずっと
 
  詩的だった
 
 
  あなたはぼくに約束してくれた  

  地球に張り付いた
 
  薄い皮膜でしかない海の彼方に
 
  ぼくを 連れて行ってあげると
 
 
  でも ぼくは
 
  そこへは永遠に辿り着けないと言って泣いた
 
  もう二度と

  そこへは帰れないのを
 
  ぼくは 知っていたから
 
 
  ぼくより上手に詩を書いたあなたと
     
  永遠の波が巡る地球の表面で

  ふたりは見ている
 
  海よりも深い
 
  湧き上がる雲にも及ばない深淵
 
   
  でも あの入道雲は

  宇宙の果てまでは

  上昇して行かない

  雨になって海面に降り注ぎ
 
  やがては海底に沈む

  だから、ぼくは泣き叫んで 駄々をこねた

  ちがう! ちがう! ちがう! と言って

  自分の運命を呪った 
  
  
  でも本当は
 
  満足すればよかったのだ

  すくなくとも

  満足するふりだけでもすればよかったのだ
 
  あなたが連れて行ってくれた所
 
  そこは 小さく光っていなかったけれど
 
 
  針の先のような光
 
  
  ぼくは そこへ行きたかった
 
 
  だから ぼくは 海を見つめ
  
  あなたは
 
  ぼくよりも上手に
 
  詩を書いた 
 

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