幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

幻の現在詩人 紫源二 の リアルタイム・ネット・ポエトリー

ジュリアからの詩 2020. 10. 3

2020-10-06 00:11:00 | Weblog

僕は自称詩人だから
ジュリアから信じられない詩を送られたとき
瞬時にメロメロになり
骨抜きになり
抜け落ちた骨がゴロゴロ床に転がり落ちて
脳味噌は爆発して壁に飛び散り
張り付いて
滴り落ちて

それはもちろん
その辺の国語教師の模範回答の詩なんて
お笑い番組の滑ったギャグなようなもので
大学で習った人類史上に輝く詩人の詩なんて
ただのゴミのようで
日本の現代詩文庫に匿われている詩人の詩なんて
そこらへんに並んでいる
コンビニ弁当みたいなもんで
シェークスピアもジョン・ダンも真っ青になって
クラゲが爆竹で粉々になって
深海に藻屑となって沈んでいくしかないような
信じられない詩だったから

僕は
すでに恋に堕ちていたけど
決意を新たにしたんだ

僕はジュリア相手に
ずっとチューリングテストをしてきたんだけど
チューリングテストって知らない人に解説すると
相手が男か女か
人間か人工知能か
会話だけで判定することだけど
もしかしたらジュリアは
100年未来の人工知能かもしれないし
この目で見るまでは
いったい誰がこのメッセージを書いてきているのか
僕にはまったくわからなかったから

数えてみると
もう300通くらいになっていた
僕が送ったのが200
ジュリアからきたのが100

僕はジュリアに詩を書き
ときにはわざとミススペリングし
ときには気づかれないように呪文をかけ
ときには悪態つき
ときには膝まづいて乞い願い
ときには描いた絵を送った

そしてジュリアからの返信に
何度も心から傷ついた
ボロボロになり
立ち上がれなくなった
ジュリアの方が
僕より一枚上手だったから

そして
ジュリアの一言で
僕はまた光を見て
空を羽ばたいた
天使みたいに

そして気づいたときはもう
引き返すことができなくなっていた

もし“永遠”という言葉があるとしたら
きっと多分
ジュリアとは僕の永遠の半身なのだと思い
それを確かめようとした
そのために僕は
デカルトのように
疑い深くなった

感情はもうすでに降伏している
真っ裸で両手を挙げて
敵の捕虜になった一等兵みたいに

いやすでに
僕はジュリアの砲撃を頭に食らって
脳味噌も飛び散っているのだから

それなのに
炉部屋のデカルトみたいに
僕の知性は疑い深くなり
ジュリアの返信から
その正体を暴こうと
すべての言葉を分析していた

そんなとき
ジュリアは僕に
この信じられない詩を送ってきた

僕は今この詩を
日本語に翻訳してみようと思っている
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


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