幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

幻の現在詩人 紫源二 の リアルタイム・ネット・ポエトリー

 お似合いのがらくたは厳重に監禁されている

2013-09-15 02:28:28 | Weblog

 
 
  冬になって、なにもやることがなくて、夕方の空気を感じて、好きなことができるとき
 
  だれも来ないあの山の裏にあるあの池で、ひとり裸になって泳ごう
 
  寒くて震えるだろうが、そのくらいの寒さで凍えたりはしない
 
  どうせぼくは凍え死ぬんだから、でもまだ、その日じゃない
 
  夜中、雑誌の編集者に呼ばれて、バイクを走らせた
 
  真冬なのに、マフラーもしないし手袋もしないで
 
  途中で凍え死にそうに身体が冷たくなった
 
  でも、これくらいじゃ死なないと思った
 
  ぼくはいずれ凍え死ぬが、今じゃない、もっと先に、もっともっと寒くて、凍ってしまう
 
  そんな日がいずれ来るはずだ
 
  そうしたら、あの子のところにバイクを走らせ、死ぬところを見せつけてやろう
 
  彼女とは結局、付き合えなかった
 
  だから最後には、かっこいいところを見せて
 
  つまり命懸けで来たんだというところを見せて
 
  あの世の3丁目3番地のトンネルをくぐろう
 
  死のトンネルは、ジメジメしていて、薄暗いんだ
 
  臨死体験者の言うような光輝くトンネルとは別物なんだ
 
  ぼくは薄暗いトンネルの中に入って行く
 
  トンネルを抜けると、言葉では表現できない風景が広がっている
 
  そして、なつかしむ
 
  こんな処にずっと昔いたことがある
 
  そんな知ってる場所だってことがわかる
 
  ここではあらゆる天才があらゆる芸術を創造していた、そして今でも天才が創造している
 
  でも誰にも見えない聞こえない 音楽、絵画、建築、彫刻
 
  ここにはインスピレーションが溢れている
 
  なぜなら、インスピレーションの泉があっちこっちにあって
 
  今にも死にそうなぼくなんだけど
 
  (もう死んでいる?)
 
  泉からあふれ出るインスピレーションがぼくをうっとりとさせるから
 
  死は怖いものではなく、あちらに行くだけのことだということだとわかってくる
 
  あらゆるものが無秩序に溢れていて
 
  周りの固定化された秩序を容赦なく流している川に
 
  創造がぶちまけたガラクタが漂っている
 
  ぼくにはそういうガラクタがお似合いだから
 
  浮かび漂うガラクタを集めて、ガラクタ箱にいれて集めていく
 
  ちょっとした現代美術のインスタレーションに使えそうだ
 
  ガラクタと言ったって、極彩色の、想像もできないくらいのガラクタだ
 
  きっと、なにもわかっちゃいないキューレターが大勢押し掛けてくるのだろう
 
  この世のガラクタこそ現代美術館に展示する価値があると本気で思っているが
 
  それ以上の感性がないから
 
  この世のガラクタとあの世のガラクタの区別もつけられない
 
  覗き穴から見たら、彼らの言う言葉は醜悪で、美を生産するどころか、奇形にしているのがわかる
 
  大脳の丸い脳みそがひとつひとつ神経細胞のつながりで出来ているから
 
  ぼくはときどき、魔法をつかう
 
  マギックってやつだ
 
  ぼくがカリフォルニアの生暖かい風を感じたときは
 
  サンフランシスコ通りで迷ってしまったときだったし
 
  知らない異国の道を炎天下、延々と歩いていると
 
  ぼくは呪術的マジッシャンとなって
 
  知らない人とでも真理について話を始めることができた
  
  夜は、至福の中で終わったし
 
  朝は、新しい冒険で始まった
 
  ぼくの内側の欲望がどんどんオオカミのようにはっきりしてくると
 
  どんな所に自分を連れていくのか
 
  ぼくはただ、直感に従っているだけで
 
  直感は至福、神秘、デジャヴを感じるような考え、思いつき
 
  そのデジャヴを感じていると、我が内側の欲望は至福を伴う冒険に大金を掛けた
 
  それがマギックってやつだ
 
  高貴なマナーを知っていて、ゲームのルールを知っていること
 
  大金を掛けて、すばらしいことを手に入れる
 
  それは、明日知らずになることだ
 
  チョコレートの包み紙を開けずにチョコレートを喰っても
 
  まずいだけだから
 
  そんなことはしないだろう
 
  だから、これからは、ちゃんと包み紙を開けて、チョコレートをたくさん食べて
  
  いらない脳の機能を、それ独自の方法で始末していくことだな
 
  だれだって何度もかよって馴染みになれば、客としてもてなしてくれる
 
  なじみ客でなければ味わえない裏メニューなんかもあるみたいだし
 
  明日はそれを食べに行って
 
  帰りは車に乗ってガラクタを買ってこようかな
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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