幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

幻の現在詩人 紫源二 の リアルタイム・ネット・ポエトリー

 そこで待ち合わせをしよう

2009-07-18 02:28:23 | Weblog

 
 
 どうしようもないくらいの
 
 地響きのような低音が
 
 ソプラノ歌手の絶唱のような高音に変化して
 
 一瞬にして無音になる
 
  
 ぼくは飛行機に乗っている
 
 NYからミラノへの直行便
 
 大西洋を横断している最中だ
 
 見回しても
 
 さっき聴いた音の正体は分からない
 
 でも気にすることはない
 
 きっと気圧の変化で耳がおかしくなっただけだろう
  
 
 機内に座っているのは白人ばかりだ
 
 後ろを振り向いても美人は見当たらない
 
 でも、前に座っている金髪の女性は
 
 きっときれいかもしれない
 
 白いスーツの肩のシルエットと
 
 まっすぐ長く伸びた金髪のコントラストが美しい
 
 でもさしあたり、彼女が美人かそうでないかは重要な問題ではない
 
 
 ぼくが今一番知りたいことは
 
 明日、本当に世界が滅亡するかどうかだ
 
 そんなのは当たるはずもない占いか
 
 ノストラダムスの大予言のような
 
 デタラメのデマに違いない
 
 でも
 
 地球上がこんなに真っ暗になってしまった現在
 
 ただのおとぎ話ではなくなってきている
 
 
 いずれ地球上のすべての生命は死滅するだろう
 
 それなのに
 
 飛行機がその上空を飛んでいることが不思議だ
 
 どこまで行っても夜間飛行だ
 
 
 太陽が急に輝くことをやめたのだから
 
 
 それでもぼくは
 
 あなたを愛し続ける
 
 愛し続けているからこそ
 
 今
 
 大西洋上空を飛んでいる
 
 あなたに会いに行くために
 
 
 もしかしたら 
 
 前に座っている金髪の女性が
 
 あなたかもしれない
 
 
 それとも
 
 あなたは
 
 アメリカ大陸にいたのかもしれない
 
 フロリダのホテルのプールサイドで
 
 日光浴をしていたのかもしれない
 
 それなのに
 
 ぼくはミラノに向かっている
 
 なぜなら
 
 そこにダヴィンチの壁画があるから
 
 さんたまりあでらぐらっつぃえ
 
 最後の晩餐
 
 
 地球の最後は
 
 ダヴィンチの最後の晩餐の前で迎えたい
 
 そう思いついたから
 
 あなたとそこで待ち合わせをすることにした
 
 
 あなたは
 
 世界のどこから来るのか分からない
 
 ぼくの一方通行のテレパシー
 
 受信したら
 
 どうしようもないくらいの
 
 地響きのような低音が
 
 ソプラノ歌手の絶唱ような高音に変化して
 
 一瞬にして無音になる
 
 そしてあなたは
 
 国際便に乗り込む
 
 
 場所を見つける
 
 最後の晩餐のある銀色の教会のある町
 
 
 感じるままに行動すれば
 
 道が開ける
 
 その瞬間
 
 たったひとつのハートが
 
 眠れない夜のようにも
 
 鼓動する
 
 鼓動し続ける
 
  
 そしてもしあなたが
 
 たった一つの夢を見ているのだとしたら
 
 ぼくは知っている
 
 夢の中で歩いている風景は
 
 そこに行きつける
 
 たった一つの道だということを
 
 
 太陽が東の空から昇ることを止めた朝
 
 さしあたり
 
 人類が間もなく滅亡するであろう地球上で
 
 たどりつける唯一の場所
 
 そこであなたと愛し合うために
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 

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