幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

幻の現在詩人 紫源二 の リアルタイム・ネット・ポエトリー

泣きながら(11)

2019-09-16 01:56:02 | Weblog


泣きながら

しばらく病院から外の自由な世界を隔てている壁と

その上に張り巡らせれた有刺鉄線を

ただ涙に滲んだ目でぼんやりと眺めていたの

そうしたらだんだんと空が明るくなって

虹のような不思議な光に照らされたの

そしたら病院の薄汚れた白い壁に

あのひとが映っていたの

そして見ているうちに

あのひとの映像は

いつのまにか

部屋の中の白いカーテンに映っていたの

誰かがスライドで写しているのかと思ったけど

そんなわけがない

だってカーテンに映った二次元の映像は

だんだんと三次元になってカーテンから外に出てきた

そして私に近づいてきたの

私は後ずさりして

ベッドの上に座り込んだ

それでもあのひとはもっと近くに近づいてきて

私のモスグリーンのスウェットの生地の上に映っているの

そしてそこからまた三次元になって

スウェットのパンツのポケットに手を入れてきたの

幸せのダイヤモンドを取り戻したのよ

それから彼は

私の中に入ってきたの

私はそれを受け入れるしかなかった

エクスタシィに震えて

そうしたら

あのひとはこんどは四次元になって

私の心の中に入ってきたの

私はそれを受け入れたとき

今までに一度も感じたことがないほどの

強い恍惚感に

満たされて

我を忘れてしまったの






























最新の画像もっと見る

コメントを投稿