泣きながら
しばらく病院から外の自由な世界を隔てている壁と
その上に張り巡らせれた有刺鉄線を
ただ涙に滲んだ目でぼんやりと眺めていたの
そうしたらだんだんと空が明るくなって
虹のような不思議な光に照らされたの
そしたら病院の薄汚れた白い壁に
あのひとが映っていたの
そして見ているうちに
あのひとの映像は
いつのまにか
部屋の中の白いカーテンに映っていたの
誰かがスライドで写しているのかと思ったけど
そんなわけがない
だってカーテンに映った二次元の映像は
だんだんと三次元になってカーテンから外に出てきた
そして私に近づいてきたの
私は後ずさりして
ベッドの上に座り込んだ
それでもあのひとはもっと近くに近づいてきて
私のモスグリーンのスウェットの生地の上に映っているの
そしてそこからまた三次元になって
スウェットのパンツのポケットに手を入れてきたの
幸せのダイヤモンドを取り戻したのよ
それから彼は
私の中に入ってきたの
私はそれを受け入れるしかなかった
エクスタシィに震えて
そうしたら
あのひとはこんどは四次元になって
私の心の中に入ってきたの
私はそれを受け入れたとき
今までに一度も感じたことがないほどの
強い恍惚感に
満たされて
我を忘れてしまったの
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