幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

幻の現在詩人 紫源二 の リアルタイム・ネット・ポエトリー

ミュージック・ビデオ

2022-08-15 22:38:00 | Weblog

僕はべつにモテるわけじゃない
でもこのミュージック・ビデオを見ると
いろいろなことを思い出すんだ
まるでこのビデオに出てくる一人ひとりに
全部見覚えがあるみたいに
あんなこともあったな
あの人は今何をしているんだろう?って

このミュージック・ビデオを見つけたのは僕が最低のときだった
疲れ果てて立ち上がることもできずに
スマホでYouTubeを検査してたら
このミュージック・ビデオが見つかった

だいたい
最低のとき
最高なものが見つかるものだ

なんだか
このミュージック・ビデオは
僕の人生を凝縮しているみたいに感じて

思い出した

最低に落ち込んでいるとき
僕のそばに来て慰めてくれる人がいたことを

そういう子が
今では思い出になってしまったのだけど
ときどき強烈に思い出す
でも
あのときには戻れない

戻ったとしても
そのときは気づかないんだ

でも今になってわかる
あの子の気持ちが

僕は鈍感だから
分からなかったけど
もしかしたら
僕のことが好きだったのかもしれない

でもそんなことが重要なんじゃない
あの子は僕のことを誤解していたんだ
僕の安アパートには何もなかったし
僕は金持ちの息子でもないのに
なんで僕のところに来るんだろうって

でも本当は若いって
そういうこと

無一文の二人が出会って
無一文から始める
それが若いということ

僕には自信がなかった
でもあの子は
僕には自信があるように見えたのだろう
だから僕について来ようとした

でも本当は僕は
明日をも知れない
何も
何一つ
どうやって明日を迎えたらいいのかも
まったくわからず
ただ彷徨い
なんとか生き延びて
疲れて
世の中を呪った

でもそんな僕のそばに来て
なぜかあの子は慰めてくれた

それが何故なのか
僕には分からないまま
出会って
ひと時を過ごして
別れた

繰り返し

繰り返し

だから
繰り返すうちに

だんだんと
歳をとっていくと
身体の関節が硬くなって動かなくなってくるように
心も臆病になり
出会いを避けるようになる

出会いの後には
別れがあるのが
分かってくるから