熱が出て鏡を見る
いつもと違う顔が映っている
親父の顔に似ている
あまり好きではない
でもこの顔が
この肉体の
DNA本来の顔なのだろう
でも“私”という霊が宿って
肉体本来の顔とは少し違った顔になっていた
でも改めて考えてみると
僕は本当の私の顔を知らない
知っているのは
この肉体の顔だけだ
そして
今鏡に映っている顔が
肉体本来の顔になっているのだとしたら
逆に今私の霊は
肉体から抜け出しているのだろうか
きっと少し抜け出しているのだろう
熱が出て
私は
私が少し抜け出した
私の肉体の顔を見ている
私はこの肉体の顔を好きではない
これは私の顔ではない
親父によく似ている
DNAの作り出した顔だ
私の霊本来の顔は
こんな顔ではない
でも私は
その私本来の霊の顔を
見たことがない