幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

幻の現在詩人 紫源二 の リアルタイム・ネット・ポエトリー

 恋

2012-06-01 20:52:56 | Weblog

 
 
  一生、恋もしない人がいる
 
  そんなことは、別に驚くほどのことじゃない
 
  そう何処かの本に書いてあった
 
  それに、恋なんて一言で言っても
 
  ピンからキリまであるじゃないか
 
  数字者の恋は打算的だし
 
  行政書士の恋は散文的で退屈
 
  そして、詩人の恋はナルシスチックで付き合いきれないし
 
  画家の恋は即物的過ぎて身体がもたないらしい
 
  なにが一番いいのか分からないけど
 
  恋に恋する乙女には
 
  黙ったままで、本性を表さないのが一番
 
  どうにでも想像の通りに裏切らないために
 
  押し黙ったまま
 
  恋心が勝手気ままに幻想を紡ぐままに任せて
 
  幻想で見えない現実を根こそぎいただくのさ
 
  それが、恋の妙技
 
  一生恋と無縁の老いぼれになるより
 
  いっそ嫉妬に焼かれる方がまし