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 関東地方では、猛烈な暑さが続いている。しかし、この暑さの中でも、いつの日か秋の気配が近づいている。政権交代後、ふたり目の総理をつとめた菅直人政権も、どうやら退陣が確定したようだ。 民主党代表選挙の行方や、その後の「大連立」などの話題が新聞紙上を飾っているが、2年前の「政権交代への期待」「新たな改革のドラマの予感」などヒートアップした空気は、猛暑の中でも冷えきっているように感じる。3月、東日本大震災が起きて、福島第一原発事故がおきた。多くの人々が「昨日の延長が明日ではない。昨年の繰り返しが来年ではない」ことを感じている。「アメリカ国債」の格下げが生んだ世界経済の危機は、日本では超円高圧力となって企業経営を圧迫している。危機は、日本でも、また世界規模でも同時に進行している。

 危機の時代、人間は本能的に「過去の記憶」を頼りに、「過去の常識」に回帰しようとする。「原子力発電所がレベル7の大事故を連続して起こした」という現実に目をそむけて、「原発がなければ経済空洞化する」という旗をふる人たちがいる。福島で起きたことは、今後は2度と繰り返されない」と断言出来ることもなく、「事故は起きたが、もう起きないだろう。これまで通りにやりたい」という本音が見え隠れする。経済空洞化と言うなら、原発事故が福島県に住民の居住困難な地域をつくりだし、首都圏の経済にも重大な影響を与えたこと。例えば、海外からの観光客は激減していることをどう評価するのだろうか。老朽化した原発が、地震に揺さぶられながら稼働し続けていることの方が、長期的で決定的な「空洞化」をもたらすことを心配する。

 過去に帰ろうとしても、私たち人間は「過去への回廊」(タイムトンネル)を持っていない。私たちがいるのは現在であり、歩いていけるのは近い未来であり、あるいは遠い未来である。1945年の敗戦以後、日本は比較的平和で穏やかな日常のらせん的繰り返しで経済成長と生活環境の向上を実現することが出来た社会だった。だから、「過去の経験則」を判断材料にして未来の進路を選択することで、決定的な危険に遭遇するようなことは少なかった。けれども、2011年3月11日を経た私たちは、「過去の経験則」を「有効」無効」と仕分けするだけではなく、「過去」に存在しない進路を拓くために、「現在」を分析した上で、「未来への架橋」をしなければならない。

 3・11は、私たちに「暮らし方の見直し」を求めた。それ以前にも、少数の人々が「食の地産地消」を志したり、エネルギーを抑制して地球環境に負荷のかからない生き方を選んできた。けれども、原発事故に起因する電力需要逼迫が懸念され、この春から現在の猛暑の最中も「節電」が多くの人の課題になった。一般家庭や企業・工場等が努力した結果、東京電力管内では「電力需要逼迫」の危険は遠ざかり、東北電力に融通をする余裕さえ出てきた。昨年までの15%どころか、25%以上の「節電」も可能となったことは、これからのエネルギー政策を考えていく上で大きな判断材料を与えてくれる。

 電力情報はもう電力会社の占有物ではない。リアルタイム使用量を見ながら、使用者・消費者である企業・工場、そして一般家庭が使用し、また使用を控える。これは「電力需給調整」を電力会社の指令室に委ねるのではなくて、川下である使用者・消費者が主体となって行なうことの出来る社会の萌芽を含んでいる。自然エネルギーをたくみに使って、小規模に電力を生産、または蓄積し、賢く使っていくシステムが開発され、また家電製品等に普及していけば、原発依存率はどんどん低くなる。

 当面は、電力供給を燃焼効率のよい天然ガスでつないでいきながら、自然エネルギーの比率をあげていく。そんな未来図に大きな異論は起きていない。けれども、これは社会インフラの大規模な「システム変更」をともなう。湯水のようなカネをつぎこんで何の展望も持てない「核燃サイクル」からはただちに撤退して、もんじゅや六ヶ所再処理工場も止めて、「トイレなきマンション」と呼ばれる「使用済み核燃料」の処理方法の研究開発を加速させるべきだ。このような政策決定が出来ないと、「過去の呪縛」が「未来の選択」を妨げることになる。

 そうした議論がどのように熟していくのかを見守りながら、地域で出来ることを積み上げていきたい。

 

 




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