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連日、かんぽの宿の追及をしているが、年末年始の「年越し派遣村」を受けて、『日経ビジネス』に寄稿した「『派遣切り』の悪循環を許すな」と題する文章をここに掲載しておく。企業も参加する基金構想については、日本経団連にも野党3党で申し入れを終えたところで、具体的実現を急ぎたいと思う。考えてみれば、仕事と同時に寮を追い出されて家を失い、街に彷徨している人たちが大量に出てきているのに、温泉付の宿泊施設が1万円で叩き売りをされる。「構造改革」という社会的規範の変更が生んだ著しいミスマッチを変えられるのは今だと思う。

『派遣切り』の悪循環を止めよ

衆議院議員 保坂展人

[雇用対策3つのポイント]

1、内部留保を持つ企業は雇用継続を
2、非正規労働者の救済基金に拠出を
3、社会的連帯・相互扶助再構築の好機に

雇用問題は、通常国会での論戦の大きなテーマとなった。昨年秋から、急速に加速した派遣・非正規労働者の中途解約や雇止めの当事者たちは、年末年始に日比谷公園に出来た「派遣村」として私たちの前に姿をあらわした。筆者は、派遣・請負という非正規労働の現場で起きていることを、厚生労働省との交渉に紹介議員として同行するなどしてよく聞いてきたつもりだったが、製造業を中心に大量に解雇されると同時に、寮・アパートを追い出された人たちが寒空に放り出される事態は、想像をはるかに超えるものだった。

 これは、けっして自然災害ではない。だが、非正規で働いているという理由だけで、個人の努力や働く姿勢などとは無関係に日常を遮断し、またたくまに仕事と家を奪い去るという事態は政治災害であり、労働市場の規制緩和が生んだシステム障害であることは論を待たない。しかも、今回は製造業全般にわたって雇用が収縮していて、仕事を替えて食いつなぐことが困難な状況だ。

私は、雇用保険の運営に関心を持ってきた。一般的に言えば、派遣・非正規労働は流動性が高く、身分も不安定な雇用形態である。にもかかわらず、派遣労働者は「1年以上の雇用が見込まれる者」というハードルに阻まれて、多くの人は「雇用保険に加入出来ない」と派遣会社に扱われてきた。さらに、この条件をクリアして雇用保険に加入出来ても、差別待遇は続く。たとえ「会社都合」の失業であっても、派遣労働者は1カ月の待機を強要される。その期間、派遣会社から「悪条件の職場」のあっせんを断った段階で「自己都合」に切り換えられ、さらに3カ月の待機期間(計4カ月)を強いられる。派遣労働者を雇用保険制度の枠外に置くような措置を、厚生労働省が局長通知によって平然と準制度化していたことは強調しておきたい。

 私たちは、予算委員会の議論や厚生労働省交渉で強く改善を申し入れ、派遣・非正規労働者の雇用保険加入の入口を拡げ、また廃止対象となっていた雇用促進住宅への入居を認めさせるなど、いくつかの点で制度を現実に近づけることが出来た。しかし、大きな洪水に素手で立ち向かうような部分的な対応の域を出ないことは否めない。
 
3月の年度末にかけて、非正規労働者の失業に歯止めをかけるためには、製造業を中心とした大企業が巨額の内部留保を吐き出して、社会的責任を負うことが大切だ。まずは、雇用継続の努力が社会的責任の証であることを理解してほしい。また、直接雇用の社員と違って、派遣社員や請負労働者は間接雇用であり、大企業は雇用責任を問われないとされてきた。しかし、昨年前半までの好景気にわいた大企業は、不安定で安価な非正規労働力をうまく使って、空前の収益を計上した。地域経済・雇用に対しての悪影響を考えれば、すでに職を奪われた派遣・非正規労働者の救済のための「基金」に企業は相応の拠出をするべきではないか。

 非正規労働者が大量に失業する事態は、個々の企業の経営の思惑を超えて、大きな社会的不安を創り出す。仕事や住居を一挙に失い、貯蓄や退職手当もなく、街を彷徨する人たちが、野宿をして凍死したり、餓死していくというケースが続出した時に、日本の社会がバブル崩壊後も何とか維持してきた社会的紐帯がズタズタに切れてしまう。犯罪は激増し、個人も企業も安全のために高額の対価を要求されるようになる。また、低賃金にもかかわらず黙々と働いてきた人たちの「勤勉性」「正確性」は瓦解する。景気が悪化したら、ポイ捨てされる労働力が未来永劫に勤勉に正確に作業するわけではない。

大変な危機が押し寄せていることは間違いないが、一点の希望がある。それは、日本社会の根底に「困った時はみんなで助け合おう」という気風、言い換えれば社会的連帯と相互扶助の精神が深く根を降ろしていることだ。製造業の雇用収縮で疲弊を極めている地方から、企業と市民、行政と国が智恵を絞って「衣食住の確保」「生活支援」「就業のためのシステムづくり」をつくりあげる必要がある。危機の時代だからこそ、みんなが智恵を出し合い、支援網をつくり、雇用保険制度とかみ合わせをはかる。50年前の日本で、炭鉱離職者が相次いだ時代に3年間の生活支援制度をつくり、大都市に移動する移動経費・住居・職業訓練、そして就業斡旋などをしてきた歴史が日本にはある。50年後の今、何もやれないはずがない。

(『日経ビジネス』09年2月2日号掲載原稿)



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