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 児童ポルノ禁止法案の審議が始まった。率直に言って、予想以上にスゴイ内容が与党から提案されていることを、あらためて思い知った。篠山紀信さんが宮沢りえさんを撮影した「Santa Fe」(1991年朝日出版社※99年は小型版の初版でした)が午前中の審議から例として出された。与党提案者の葉梨議員は、「内容を見ていないからわからないが」と前置きしながら、児童ポルノの要件を満たしているのであれば、「1年以内に処分された方がいいと思う」と述べた。すなわち、今回の与党案で児童ポルノの「単純所持」を犯罪化することで、1年の猶予を与えるからその間に該当するものは大手出版社から出た著名な写真家の写真集だろうが、廃棄するなり処分するのがよい……という見解を述べたのだ。与党案が通過すれば、出版社は「児童ポルノと疑われる過去の出版物」の在庫を大量に廃棄し、古本屋さんは過去に出版された『平凡パンチ』『プレイボーイ』『GORO』などの雑誌のバックナンバーが陳列されていれば、さっさと廃棄処分しなければならない。また、一般人も与党案成立後、1年をかけて「違法な児童ポルノと疑われる写真集の類は廃棄するなど処分を急いでください」との呼びかけを受け、古くなった本棚を点検しなければならないという事態が起きないとも限らない。

 これこそ、本末転倒の話である。マスコミの注目を集めていたアグネス・チャンさんは、タイのチェンマイでビルマ(ミャンマー)から売られてきた子どもたちが、いかに酷い扱いを受けているのか、また、いかに買春をされて写真を撮られているのか、その苦痛に満ちた訴えを情感を持って語った。マスコミでは、そのシーンが映し出されるだろう。「私(保坂)も、チェンマイ・チェンライに行って児童売春の影の組織に誘拐されたり、売られてしまった子どもたちを救出している施設に行き、子どものたちのインタビューをジャーナリスト時代にしたことがある」と言った上で、「今、議論しているのは、そうした性的搾取の被害にあった児童を救出するという法律の目的をさらに徹底しようということには同意・賛成するが、あまりに『児童ポルノ』の概念が拡張されるのはよくない。『Santa Fe』は児童ポルノではないと私は考えるがどう考えるか」と聞いてみた。それでも、彼女は「18歳以下の少女ヌードは認められない」という立場のようだった。

 はたして、宮沢りえさんは、写真集『Santa Fe』の被写体となって、どのような損害・被害を被ったのだろうか。ご本人に聞いてみるしかないが、「被写体となる被害児童の人権救済」という本来の立法目的を超えて、現行法の規定している2条3号のあいまいな定義が一人歩きしていると感じた。「児童ポルノ」はどのように定義されているのか。法律の条文を見てみよう。

児童買春・児童ポルノ禁止法

3 この法律において「児童ポルノ」とは、写真、ビデオテープその他の物であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。

一  児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの

二  他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したもの

三  衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したもの

 特に三が曖昧で幅広いと言われている。この定義で見る限りは『Santa Fe』は、この法律で言う「3号ポルノ」に該当してしまうおそれが強い。従って、宮沢りえさん以外にも少女ヌードなどを撮影してきたカメラマンは、過去の作品の出版物だけではなくて、紙焼きやネガも処分しなければならないということになるのではないかという懸念を私は表明した。

 私たちは今、危ないところにいる。児童ポルノの禁止という誰もがうなづく「当たり前」のことの影に、表現の自由を大幅に脅かす危険が宿っている。それが「単純所持規制」だと、論点が明確になった。

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