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温かい春の風に思い切りあたって、気分よくなっていたら、どうも喉の調子がおかしい。微熱も出てきて、久しぶりに風邪をひいたらしい。頭も身体もボーッとするので、動きも緩慢になる。昨日は、光事件の元少年に広島高裁が「死刑判決」を出した。従来までの「永山基準」を塗り替えるものとして注目される。先週、私たち死刑廃止を推進する議員連盟では「死刑判決全員一致制」「重無期(終身)刑創設」の法案を発表していたが、今回の判決が1年後に始まる「裁判員裁判」に与える影響は大きい。

今朝の朝日新聞はこう書いている。

「死刑を執行する立場の法務省も世論を強く意識する。ある幹部は『裁判員制度の導入が決まったころはかえって死刑判決が減るとの見方もあった。だが、最近の報道や世論を見ていると、どうも逆ではないかと思う』と話した」

[引用終わり]

この発言は、私の実感と一致している。裁判員制度とは、「素人の感覚を大事にして、市民が司法に参加する仕組み」と宣伝されてきた。法律に精通しているわけでもなく、テレビドラマの中の法廷しか知らない多くの市民が「素人の感覚」で裁きの場に立つ。そして、3日間で3人の職業裁判官と6人の裁判員が評議に加わり判決を下す。もう1ヶ所、今朝の朝日新聞の記事から引用する。

[引用開始]

最高裁が差し戻す判決を出したときに、「これまでの判例より厳しい」と感じた裁判官は多い。「少年事件であるため死刑をちゅうちょしてきた裁判官には、重大な影響を及ぼすだろう。あとは、裁判員がどう考えるかだ」とあるベテラン刑事裁判官は話す。

 被告が少年であることは量刑にどう影響するか。最高裁の司法研修所が05年、国民にアンケートしたところ、約25%が「刑を重くする要因」、約25%が「刑を軽くする要因」と答え、「どちらでもない」が約50%だった。裁判官は9割以上が「軽くする要因」と答え、その違いが浮き彫りになった。ただ、裁判員制度が始まると死刑判決が増えるかどうかは別の問題で、裁判官の間でも意見は分かれる。

 厳罰を求める世論に加えて、「被害者参加制度」も今年中に始まる。犯罪被害者や遺族が法廷で検察官の隣に座り、被告や証人に直接問いただしたり、検察官とは別に「死刑を求めます」と独自に厳しい求刑ができたりするようになる。このため、「死刑が増えるのでは」との見方がある一方で、「やはり究極の刑を科すことには慎重になる市民が多いのでは」との意見も少なくない。

[引用終わり]

被告が少年であることで「量刑を重くする」が25%、「軽くする」が25%で拮抗しているというデータを最高裁司法研修所が調査した結果だということに私は驚く。 「少年には重くする」という人たちがこれだけ存在すること自体が、日本の学校教育の場で「法教育」がなされていない証拠だ。法曹関係者の大半は「軽くする」と答えるだろう。

昨年の最高裁判決で示された『特に酌むべき事情がない限り、死刑を選択するほかない』という判断を今回の広島高裁は踏襲した。従来までの「永山基準」に比べると、死刑のハードルが一段と低くなったことは間違いない。

[土本武司元最高検検事のコメント]

「最高裁はこの四半世紀の間に死刑についての考え方を「原則『不適用』」から「原則『適用』」へ転換した、と私は受け止めています。(『週刊朝日』5月2日号)

この認識も共有出来るもので、これからの死刑判決と執行の増加傾向を予想させるものだ。最高裁が大きく方針転換した背景には「厳罰化」を求める世論の動きがあると言われる。それでは、なぜ「厳罰化を求める世論」は生れたのか。

BPO・放送倫理検証委員会が指摘しているように、テレビ報道や番組のあり方が問題だ。私が驚いたのは、委員会の検証作業の中で語られたテレビ制作者の言葉である。

[BPO委員会報告書から引用]

近く導入される裁判員制度のもとでは、被疑者・被告人の生育歴やそこから読み取れる人間像の報道が相当程度制限される可能性が取り沙汰されている。言論表現の自由を旨とする放送局にはこうした制限に対する批判が強いようだが、そうであればいっそう、いまのうちにきちんと被告の内面・人間像に迫り、この種の報道の公益性や有益性を示しておくべきではなかったろうか(裁判員制度のもとでの報道のあり方については、まだ確定的ルールは決まっていない)。

 こうした試みがなされなかったのは、どうしてなのだろうか。

 そう質問したとき、聴き取り調査に応じたある番組制作スタッフが浮かべたのは、「それが何か(問題ですか)?」という表情である。それは、被告の内面を限られた手がかりからでも洞察してみる、それを番組にする、という発想など、最初から頭になかったことをうかがわせた。

[引用終わり]

メディアの中でもテレビの力は圧倒的だ。今となって化けの皮がはがれてきている「小泉改革」「郵政民営化」で、あれだけの「熱狂」が生れ、その熱にうかされたかのように「小泉は戦う」「刺客を差し向けた」と自民圧勝を生んでいったのもテレビの力だった。

「改革か、妨害か。それが問題だ」と言えば、テレビ的にはわかりやすい。「死刑か、無期か。それが問題だ」と制作スタッフが追っていたテーマ設定は、二分法であり、その他のことは「関係ない」と切り捨てられる。この構図設定と、世論のうねりは、相乗効果をもたらす。

永山事件の死刑判決を出した元裁判官が「もし、制度としての終身刑があれば選択していた」最近のインタビューで述べているように、「死刑」と「無期」との間に大変な落差がある。だが、「死刑か、無期か」の二分法の世界から外れた刑罰は、真剣に議論しなくていいのか。

1997年11月28日。今から11年前、世田谷通りで起きた片山隼君(当時8歳)の交通事故死事件で、「事件処理の状況」を訪ねた父親に対して、検察庁の窓口が「あなたに教える義務はない」と突き放し、門前払いをしたことを当時の法務委員会で追及し、下稲葉耕吉法相にこの対応を「まことに遺憾で申し訳ない」と謝罪してもらったことがある。交通事故被害者遺族への情報開示のひとつの契機となった。

それから11年、潮流は大きく変化した。「死刑」は当然だという風潮も強くなっている。でも、市民が死刑判断に参加する国は、日本が唯一である。議論を尽くすためにも「死刑判決・全員一致制」「重無期(終身)刑創設」に、耳を傾けてほしいと願っている。







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