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 文 保坂展人

  • 2014年2月10日

  27年ぶりの大雪が降った後の東京都知事選挙は、残念ながら50%を切る低投票率の中で終わりました。何度か、このコラムで書いてきたように「脱原発・エネルギー転換」という大きなテーマが議論されようとして、その議論は十分に深化したものではなかったとはいえ、多くの人が意識したことでしょう。

 そもそも「国のテーマであり、都政のテーマではない」という意見がマスメディアからたびたび流れましたが、そうであれば「国政のテーマ」として「脱原発・エネルギー問題」の方向性に決着をつける選択の機会が改めて必要だということになるでしょう。

 より日常的な政策課題である「経済・景気対策」「高齢者福祉」や「待機児対策」に関心が高かったとも言われています。私は、都知事選を伝える新聞記事やテレビの特集、また開票速報番組を見ていて違和感を覚えることが何度かありました。「待機児童」にしても「高齢者福祉」にしても、都道府県事務として都の手続きや審査はありますが、多くの現場は特別区が担っています。

 東京メトロポリタンテレビで放送された池上彰さんの開票特番でも、私は「都区制度改革の課題」を法人住民税、都市計画税、固定資産税など、ごく普通の市が持っている課税自主権が特別区にはなく、都が徴収して再配分する形になっていることを紹介し、「税源と権限の移譲によって、東京の中の分権を進めてほしい」と発言しました。88万人を抱える自治体として、都市計画決定権もないのはあまりに不自由です。

 地域内分権を話題にするなら、人口88万の世田谷区も集権的にやっていないかと問われるかと思います。28年間、区長として仕事をした故大場啓二さんがつくった「地域行政制度」が世田谷区にはあります。区内を五つの地域(世田谷・北沢・烏山・砧・玉川)に分けて、総合支所を設置しました。さらに、より身近な地区に行政拠点として出張所をつくりました。現在も、27カ所の「出張所・まちづくりセンター」として存在しています。

 この春から実現に移す改革はこの27カ所の「出張所・まちづくりセンター」を身近な「福祉の窓口」を位置づけるというものです。介護保険の実務にあたる地域包括支援センターを世田谷区では「あんしんすこやかセンター」と呼んでいます。3年以内に、これを27カ所の「出張所・まちづくりセンター」の中に入れ、さらに社会福祉協議会の職員もデスクを置いてもらうように準備しています。最初の年は1カ所、次の年は5カ所、3年後に27カ所全体に広げます。 この地域行政制度ができあがったのも、地域内分権の発想からでした。超高齢化社会を迎えるにあたり、地域にきめの細かい福祉ネットワークを拡げていく必要があります。しかも、地域に住む住民が参加・運営するような公共サービスの機会も広げていきたいと考えています。これからの時代には、公共サービスや行政の仕事にも大きな転換が必要となります。一方通行の供給形行政サービスからインタラクティブな参加・協働型の自治体へと変わろうと考えいるのです。

「東京の中から『地域分権』をすすめよ」(「太陽のまちから」2014年2月10日)



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