我が家の狭い庭では、どくだみが花盛りだ。
先日の草取りの折、ある一角のどくだみは残しておいた。
一般論で言えば、あまり好ましい趣味ではないのかもしれないが、どくだみには愛着があった。
もっとも、カミさんの場合は、「どくだみがあれば、匂いが強いので、昆虫が来ないのではないかしら」、という期待があるようだ。
果たしてその通りかどうか、私は知らない。
私の場合、あの強い匂いが、私を少年時代に誘ってくれるのだ。
それも友人たちや学校の思い出ではなく、40代で他界した母に繋がって行く。
もちろん、大東亜戦争にも絡んで行く。
確かに辛い時代ではあったが、しかし、まさしく多感な少年期だった。
表面的にはお利口さんだった私だったが、悪ガキだった面があって、今になってみれば、赤面するばかりだ。
2~3年ほど前の同窓会に出た折、かつての私の所業が酒の肴にされ、手ひどく面罵された。
つまり、まだ赦してくれていない同級生がいたのだ。
そのあたりの私の記憶は、かなりおぼろの中にあるのだが、被害者の記憶は鮮明らしいのだ。それだけに始末に負えない。
あのとき以来、私は里帰りをしていない。
幾人かの友人たちは、帰郷するように言ってくれているが、私は帰れない。
思い出さされた疵は、私の疵ではなく同級生の疵として残っているのだ。
私としては甘えることは出来ない。
どくだみや我にもありし少年期 一平