幾月か前、ある労働組合の委員長と会った。
10年余も委員長をしていた。もう世代交代を考えるべき頃だった。
M君本人も、2~3年前からそれを承知していた。組織内では提案をしていたらしい。
しかし、会社自体が大変革中であった。そんなおり労働組合としては、委員長を交代させる余裕はなかったようだ。だから、彼の申し出でを、組織では受け入れなかった。
後継者問題もあったのかもしれない。
M君と私は、旧知の間柄であった。
私も交代を促したこともあった。彼もそのつもりは持っていたようだった。
今年も彼の意思は、交代にあったようだ。
しかし折悪しく、会社に対し、強い逆風が吹いてきていた。
「今の時点での交代は、敵前逃亡になるのではなかろうか」
誠実で、どちらかと言えば不器用な彼は、そんな思いに悩んでいたように思えた。
もちろん、そんなことを口にするM君ではなかった。組織の長が等しく悩むのは、自らの進退である。孤独な自問自答の中で、決しなければならない。
幾月か前に会ったおり、M君の苦悩をかいま見た思いをした。私自身の過去を思うとき、彼の胸中がよく見えた。
「自分が思っている以上に、人は育っているものだよ」
問われもしないのに、私はそんなことを言った。年寄りは余分なことを考える。
そんな私の話を、彼は黙って聞いていた。思いあぐねている様子もあった。
そのころの私は、病後だったので、今よりもアルコールに恐怖があった。ビールすら舐めるようなピッチで飲んでいた。
M君は大の酒豪なのに、私のペースに合わせてくれた。日本酒をグイグイやるタイプの彼が、ビールを飲んでいた。
2人は、チビチビやりながら、昔話や世間話をした。
「それじゃぁ、また会おうや!」
話に折り合いをつけ、またの逢瀬を口にしながら、二人は席を立った。
「今夜はありがとうございました」
さっぱりしたような顔で、彼は手を出した。目元にキラリと光るものがあった。
「うん、今夜は楽しかったな」 そう言って、私もその手を握り返した。
9月に入ってから、その会社の労組人事を耳にした。
M君は新進に後事を託したのだろう。
冒頭に掲げた写真はセンニチコウ。先日実家で撮影した。
花言葉は、「終わりのない友情」だそうだ。千日も紅いからだろうか。
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受けるのも
辞めるのも最終的には自分で決めるものですね
その決断は相当なエネルギーがいること思います
ひよどりさんのアドバイスが優しく沁みたのでしょうね
千日紅輝いてきれいです
紫の色がなんとも。。。。。。家族写真のようです
辞める時
これが一番難しいのではと思います。
自分がいなくては・・・
私はこれがいちばん嫌いなことです。
教育もありましょうが、
任せること、
これができない人が多いのではないでしょうか。
母を見ているとそう思います。
組合委員長のMさん、きっと生真面目で、どなたにも慕われるお人柄なのでしょうね。現役ですから、たぶん私と同世代なのかと・・・。
出処進退の決断がどんなに大変なことか、よく分かります。右肩上がりではなくなったこの時代、ややもすると後退戦のさ中にあってどのように決着を見るか。組合委員長の方でしたら、その重圧はものすごいものだろうとお察しします。
ひよどりさんは、そんなMさんの背中をそっと押して差し上げたのだろうと思います。Mさんとしては、相当うれしかったのでしょうね。
ますます、ひよどりさんのお人柄が好きになってしまいました。
この時代は、景気経済も何が起こるか分からず、当事者は辛い立場でしょうね。
本当によくなさっていると思います。
欲しいときもありますね。
多分、ひよどりさんの言葉の中から、決断できる
ヒントを見つけ出したのではないでしょうか。
あるいは、こんな軽いものではなく、もっと深い
信頼関係なのかもしれませんね。
よい話だったので、自分なりにいろいろ思いを
めぐらせていました。
千日草は子供の頃実家の庭にいっぱい咲いていました。懐かしい花です。
千日紅を撮ったのははじめてでしたが、面白い花ですね。
特に辞めるのは難しいようですね。
「時の神様」がうまい具合に按配してくれないと、スッキリしない結果になりそうです。
辞めるのには辞める「勢い」が必要だと思います。
小泉さんには「勢い」がありましたが、安倍さんや福田さんにはその「勢い」がありませんでしたね。
どんなポストでも、「時の神様」がうまくやってくれないと、タイミングを失います。
労働組合は組合員の選挙によって選出される仕組みがありますから、よけいに難しいようですね。
推薦されている状況の中で、どのように対処していくか。
福田さんのように、支持率が下がっているなら、いっそのこと辞めやすい。
しかし、支持されているという状況下の中、自分の出処進退をきめるのは、かなりの重圧だと思います。
「敵前逃亡」との誹りは、もっともイヤでしょうから。
会社の役員等は、期間がおおよそ決まってきます。
しかし労組となると、おおよそは停年よりも若い世代なので、なかなか難しいようです。