新・ほろ酔い気分

酔っているような気分のまま、
愚にもつかない身辺雑記や俳句で遊んでおります。
お目に留めて下されば嬉しいです。

私はひっつき虫(その1)

2014年11月25日 15時10分41秒 | 身辺雑記

 私は「ひっつき虫」である。

 正式な学問上の名称は知らない。そんなものはどうでもいい。

 春の終わりごろに黄色い小さな花を咲かせ、写真のような姿になるのは初冬。

 ここに実を落として、来春に芽を出してもよいし、どこかに動かされ、そこで新しい天地を得てもいい。

 もちろん、わが種族の本意としては、少しでも離れたところへ移動して、そこで新しい芽を吹かせたいはずだ。

 とは言っても、タネの形や備わった機能からして、誰かの力を借りて、遠くへ運んでもらうしか手段はない。

 ここまで刺々しい姿になってしまっては、たんぽぽのように、風にまかせて移動するような軽業はできない。

 ドングリの実や柿の実などであれば、鵯や烏に啄んでもらい、彼らの消化器官によって運んでもらう手段もある。

 しかし、私のような形では、鳥や獣に食べてもらうわけにはいかない。なにしろトゲトゲだらけなのだ。

 残る手段は、通りかかった獣や人間にひっついて、運んでもらうことを期待する。「ひっつき虫」の所以でなのだ。

 ところが、この辺りには野犬がいない。猫も少ない。不景気になったものだ。

 そんなこんなで塞いでいたら、カメラを持った老人がやってきた。私が待つ荒れ地の中にまで、ドカドカと入ってきたのだ。

 「ラッキー!!」 私は老人のズボンにひっついた。

 暖かい日差しの昼ごろであった。 

(続く)

  

コメント (2)
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