文学論や作家論の世界で、ひところ、「戦中派」、「戦後派」、「焼け跡闇市派」や「第三の世代」という括り方があったように思う。
そのような先輩たちの活躍を見たり聞いたりしながら、私は読者の一人として、小説を読んだり映画を観たりしてきた。
戦中派や戦後派たちの苦労を、作品で読んだり映画で観たりしながら、「オレたちって、なんとも間の抜けた世代だなあ」と、ずっと思い続けている。
それでいて、一方では、いっぱしの戦争経験者という自覚も持っている。
艦砲射撃を逃れ、山のトンネルを目指して逃げた経験もある。
機銃掃射の銃口に怯えたこともあった。
焼夷弾空襲で焼け出された世代でもあった。
しかし、それは銃後のハナシ。つまり内地の経験なのだ。
先輩たちのご苦労を聞いたあとで、「オレたちだって………」と、もぞもぞ言う程度のことだ。
今でも、「オレは昭和のひと桁世代!」と、いっぱしの口は叩くが、戦地で戦った経験がのなさが、ある種のウシロメタサとなっている。
そんな私が口ずさむ歌は、もっぱら「昭和時代」のものばかり。
新しい歌は覚えられない。
冷し酒果ては昭和の唄ばかり 一平