カラオケに行けば、唄いたい曲があった。
一節太郎が唄っていた「浪曲子守唄」だ。
この曲はとても唄いやすい。なにしろ、「浪曲」と「子守唄」が一緒なのだから、古風な作りの演歌だ。しかも、とても調子がよい。
前奏から、「チャーンチャチャチャン・・チャチャチャーンチャチャチャーン・・」と、調子よく入ってくるので、まだ生酔い状態でも唄えるのだ。
こう見えても、私は酔った末でないと唄えない。照れてしまって声が出ないのだ。
しかし、「もう少し呑めば、本調子なのだがなあ」という酔い加減でも、この曲の前奏が鳴り出せば、なんとかなるのだから不思議だ。
仲間とカラオケに行けば、「調子合わせ」と言いながら、私はまずこの曲を選ぶ。
♪ 逃げた女房にや 未練はないが
お乳ほしがる この子がかわい
子守唄など にがてな俺だが
馬鹿な男の 浪花節
一つ聞かそか ねんころり ♪
このような内容なので、まずは思い切り声を出すことができる。調子合わせにはもってこいの曲と言える。もちろん、上手や下手は論外のこと。
一番と二番の間に、本来は次のようなセリフが入る。
「そりや・・・無学なこの俺を親にもつお前は、ふびんな奴さ。
泣くんじゃネエ、泣くんじゃネエよ。
あんな薄情なおっ母さんを、呼んでくれるな。
おいらも泣けるじゃねえか。
ささ、いい子で、ねんねしなァ」
いくら厚面皮の私でも、このセリフを言うほどの元気はない。だから、今まで一度も言ったことはなかった。だいいち、曲の合間なのでセリフが追いつかない。
とは言っても、セリフ入りのカラオケで、セリフを言わずにいるのは、とても妙な時間を過ごすことになる。
そこで考え出したのが、「江戸子守唄」を入れることだった。
♪ ねんねんころりよ おころりよ
ぼうやはよい子だ ねんねしな ♪
・・・・
(略)
セリフの背景を使って、これを三番までを唄うと、ピッタリと枠内に納まるのだ。
なんと素晴らしい発明!
それを知って以来、なんら臆することなく、「浪曲子守唄」を選ぶことにしている。
同席の人が白けた気分になるのは、当方の老齢に免じて、お許しをいただくしかない。
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