英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

「マクド難民」と南米の人々の幸福度  幸せの尺度は?

2013年01月13日 22時14分57秒 | 歴史
  毎日の生活に困窮している派遣社員ら「マクド難民」は幸せを感じていないが、貧しい生活をしているラテンアメリカの人々は幸せを感じている。なぜなのか。「幸福度」とは何かを考えさせられる。
   13日付朝日新聞の1面トップは「夜をさまよう『マクド難民』」だった。大阪市の繁華街ミナミのマクドナルドに午前零時を過ぎると、ぼさぼさ髪の男らが入ってくるという。30-40歳代の男性数人が「テーブルにうつぶせになったり、ソファーに足を乗せたりして所在なげに過ごす」らしい。
 大多数が大手電機メーカーなどで働いていた元派遣社員。リストラでクビになって再就職もままならず、あてもなく街をさ迷っている。1杯100年のコーヒーを飲んで、途方にくれている、と書かれていた。
 マクドナルドの店員も非正規社員で、「約17万人」が働いている。朝日の記者は「深夜も店に非正規の『社員』と『元社員』たちが隣り合わせで過ごす場だ」と記している。
やりきれない光景だ。少子高齢化で労働人口が減少しているのに、働き盛りの人々には働き口がない。矛盾している。企業が日本から海外に逃げ出し、経済成長が止まって都会ですら雇用が生み出せない。政府と企業は合同で、派遣社員や元派遣社員を支援し、正社員として雇用しなければならないと思う。
 企業にとり短期的には損するかもしれないが、長期的には企業のメリットになるのではないのか。政府にとっても雇用を増やせば、彼らの消費力が増し、経済にプラスになるのではないのか。素人の筆者に説得力がないかもしれないが、そう思う。
 30-40歳代の非正規社員、派遣社員、元派遣失業者はだれも幸せだとは思っていないだろう。自分を幸せな人間だと思う人々はなかなかいないと思う。これに対して正規社員や金持ちの人間は幸福なのか。必ずしも幸福だとは思っていない。
貧しい国々が多いラテンアメリカ諸国の人間が地球上で最も幸福だと感じている。AP通信は最近、米国のワシントンDCに本社を置くギャラップが発表した調査を報じた。
 「世界で最高に幸福な人々は、最富国のカタールの国民でもない。最長寿国の日本の国民でもないし、大卒が最も多いカナダでもない」。ギャラップが15万人から聞き取り調査をした結果、上位10か国中7か国がラテンアメリカ諸国だったという。
 ギャラップによれば、中米のグアテマラは上位7番目だ。内戦と犯罪が蔓延している国。死亡者のうち殺人の占める割合は世界で最も高い国のひとつだという。
 幸福な生活の基準をギャラップが「ストレスを感じない」「相手を傷つけずに敬意を抱いて付き合う」「笑いが微笑みが絶えない」「前日、何か面白いことに出くわす」「前日に楽しい気持ちになる」とし、世界148か国の1,000人に尋ねた。
 パナマ(中米)とパラグアイ(南米)の人々のうち85%がすべて5つの基準に「YES」と答えたそうだ。エルサルバドル(中米)、トリニダード・アンド・トバゴ(カリブ海の島国)、タイ、グアテマラ、フィリピン、エクワドル(南米)、コスタリカ(中米)が続いている。これらの国は富を基準にして見れば、すべて中貧国か貧しい国々だ。
 先進国のなかでも経済的に豊かなシンガポールの国民がこの質問5つにもっとも否定的な感情を抱いていることがわかった。ドイツやフランスの国民も自らを幸福だとは思っていないらしい。
必ずしも長寿、食べるに困らないことや一人あたりの所得が高いことなどが幸福の基準ではないようだ。ブータンは世界で最も幸せな国だ、と日本のテレビで紹介されている。ブータンは消費国ではない。要するに人間は「物質的な富」「生活の質」を追求しただけでは幸福とは感じないらしい。
 筆者がそう感じて読み進めていたが、少し理解不足らしい。ラテンアメリカの国民性は、実際に感じたことを無視して「否定的な話」を避ける傾向があるという。米州開発銀行の元エコノミストがこのように論じている。「ラテンアメリカの文化は、どんな質問もポジティブに答える傾向がある」
 アルメニアの社会学者は「不幸と感じるのは、国民のメンタリティーの一部だ。アルメニア人はいつも陰気で不幸だと思う。苦難の歴史がそうさせている。ラテンアメリカ人がほほ笑むのは、あえて他人と問題を共有したがらないからだろう」と話した。(AP)
 これに対して、ギャラップの依頼を受けて調査した学者は「調査結果は確かに国民性や文化を表現しているだろうが、結果に過小評価は禁物だ。苦しい日常生活を送っているラテンアメリカの人々が友人、家族、宗教を大切だと考えている証だ」と力説した。
 幸せな国パナマの労働者は仲間と朝食をとり、建設現場で働く。また幸せな家庭を持っている。犯罪国家だが、パナマ運河から生み出される仕事が失業率を引き下げている。これに対して、シンガポールのビジネスマンは自分を犬のように働くのに微々たる給料しか支払われていないと考え、有給休暇もなくいつも仕事の事ばかり考える毎日だと不平を鳴らしている。APはこう伝えている。
 幸せを感じている南米の国民は、楽天的な国民性から何ごとも人生をポジティブに考えるのだろう。しかし少なくとも食足りて楽しんでいる。友がいて家族がいる。
 筆者が若い時に訪問したポルトガルの人々も親切だった。幸せそうだった。昼食をおごってくれ、自宅の招いて夕食を食べさせてくれた。電化製品などのし好品は高かったが、食料は安く、食足りていた。ほどほど貧しかったが、明るかった。
 「夜をさまよう『マクド難民』(日本の若者」にも食足りて幸せな家庭を持ってほしい。就職し、幸せな家庭を持ってはじめて人生や社会をポジティブに思うことができる。そのためにも企業や政府がやるべきことはあるのではないかと思う。そうすることにより企業の長期的な展望も明るくなる。武田信玄公が「人は石垣」と言っているではないか。

写真はPublic domain

この記事についてブログを書く
« 大阪・桜宮高校のバスケ自殺... | トップ | 歴史(時)は変化する   中... »

歴史」カテゴリの最新記事