英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

日韓のものの見方の違いがあらわ?  半導体輸出優遇撤回をめぐる紛争から見えてくる現実(下)

2019年07月14日 13時22分14秒 | 日韓関係
   韓国向け半導体材料の輸出優遇措置撤回をめぐり、日韓両政府の事務レベル協議は平行線をたどり終わったが、「韓国側が日本側に輸出規制強化の撤回を求めた」との発言をめぐって、両政府が非難合戦を展開している。
  韓国当局者は「われわれは日本側に撤回を求めた。(会合は)問題解決のための協議と呼ぶのがふさわしい」と公表した。これに対し、経済産業省は「協議ではなく、事実関係の説明を行う会議だと、韓国側も合意していた」と批判した。
  また規制強化撤回要求についても、韓国の担当者が問題解決を求めてきたが、「撤回」の言葉は議事録で確認できなかったという。
  韓国は宣伝がうまい。特に左派の文在寅政権は上手い。事実を膨らませて述べたり、ときには人をだますことが上手だという。韓国人には申し訳ないが、犯罪のなかで窃盗がどこの国でも一番多いが、韓国では詐欺が窃盗より多いという。
  韓国人の呉善花・拓殖大学教授は共書「売国奴」で「韓国は詐欺なんですね。窃盗よりも詐欺が一番多い国なんて、韓国しかありません。日本でも昨今、オレオレ詐欺が流行していますが、それでも詐欺の発生率は世界的にかなり低いんです。・・・韓国では人をだますのは普通にあることで、だまされた方が悪いとすらいいます」と述べている。
  この本を読んで、私の在日韓国人の友人から聞いた話を思い出した。彼の息子さんは日本で生まれ、日本で育った。韓国籍のため、一年間にわたり韓国の高校に留学した。息子さんは同胞のうそや事実誇大にあきれることがあったという。
  彼の血は韓国人でも、日本人の考え方や、ものの見方、倫理観を持っていると言うことだろう。日本文化や慣習の中で育ったがために、日韓の倫理観の違いを肌で感じたのだろう。
  文在寅大統領の左派政権誕生後、輸出管理に関する不適切な事案が増加している。この事実は、日韓の倫理観や考え方の相違は事実として存在するが、左派政権がそれをさらに増幅させているのはぬぐえない。
  韓国の産業通商資源省の内部文書によれば、2015年から2019年3月まで、韓国から戦略物資が無許可で流出した不正輸出案件は156件。不正輸出された物資は、いずれも核兵器や化学兵器の製造・開発・使用に利用可能で、国際社会が厳しく統制・監視している。
 摘発件数は2015年が14件、2016年は22件、2017年は48件、2018年 は41件、2019年はわずか3か月の間に31件になっている。実際の数はこの数字より多いとみるべきだろう。文在寅政権の管理体制がずさんだといわれても反論のしようがない数字だ。
  その上、文在寅政権が誕生して以降、韓国人の国民性の短所である、事実を冷徹に見ない形式主義や自尊心、見栄などが際立っているように思う。宣伝戦を重視し、単眼思考の左派政権の本質を露呈しているのだろう。
  国連安保理北朝鮮制裁委員会のパネル委員だった古川勝久氏は「大量破壊兵器関連の規制品を巡る輸出規制違反事件がこれほど摘発されていたのに、韓国政府がこれまで公表していなかった事実に驚いている」と話している。
  韓国政府がこれから先、日本政府の「正論」や日本人の理にかなった議論に耳を傾け、姿勢を変え、日本の主張に従うとは思えない。
  日本は国際社会に日本の正当性を客観的に理路整然と論じ、国際社会を味方につけ、韓国に日本の「正論」を受け入れさせる以外に道はないと思う。世界の世論を納得させるためには、今回の措置の正当性の主張はあくまで輸出管理の論理で完結しなければならない。韓国民は特殊な考えを持った国だからだ。
 
 ●過去の人々の価値観で、その過去を判断する必要性
  韓国政府と多くの韓国民は1910年に日本による韓国併合は不法だと主張する。しかし過去を、現在の社会通念や国際法、意識、理念で裁いてはならない。過去と現在の人々の考え方やものの見方は違う。昨日の常識は今日に非常識であることが、時の変化の流れの中で、しばしば起こる。これは歴史学のイロハだ。 
  歴史は変化する。現在と過去は違う。現在の価値基準で過去を判断すれば、大きな過誤をきたす。これが多くの韓国民、とりわけ文在寅大統領のような左派弁護士には理解できないようだ。
 「日本による韓国併合は合法か」をめぐって、2001年11月に米ハーバード大学で開催された締めくくり第3回会議で、国際法の権威で英国人のジェームズ・クロフォード・ケンブリッジ大学教授は、当時の国際慣行法から、英米を始めとする列強に認められている以上、手続きなどで大きな瑕疵があろうとも「無効」ということはできないと指摘し、韓国以外の欧米日の学者が賛意を示した。日韓米のほか、英独の学者も加え「日韓併合問題」で結論を出す総合学術会議だった。
  過去を判断するには過去の人々の社会通念や常識、法律に照らして判断しなければならない。現在の価値観で過去を裁いてはならない。分母が違えば比較できないのと同じだ。
 韓国では盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権当時の2005年に「親日反民族行為者財産還収特別法」(親日財産帰属法)が制定・施行された。日本への併合を民族の恥とし、日本の手先として働き財を為した者から、財産を取り上げる法律だ。
  この法律に基づき、戦前の親日派や日本に協力した韓国人の子孫を法廷に引きずり出し、有罪にした。しかし、かつて大学で法律を学んだ人々なら理解できるが、決して見逃せない禁じ手が内在している。日韓併合時の法律では認められていた爵位や土地、現金の取得が、その後にできた法律で罪とされ返還を命じられている点だ。法律の施行前にまでさかのぼって法を適用させる(法の遡及)のは、法治国家の法律では認められない。「罪刑法定主義」に反する。
  この具体的な説明を、産経新聞が最近の記事で説明しているので引用する。「仮に2020年の東京五輪にあわせ、日本で喫煙が全面禁止にされたとしよう。罰は一律に懲役5年と法改正され、法の施行(運用開始)は2020年1月1日に決定したとする。この場合、1月1日以降に喫煙した者は起訴と裁判を経て有罪となる。これが正しい、というか韓国を除くほぼ全ての国の法運用だ。だが、韓国のように法を遡及させた場合、法の施行日以前に喫煙した者も全員犯罪者として処罰できる。施行日の前日に30本吸っても、30年前に1本吸っただけでも、等しく有罪だ」
  韓国社会はこのようには考えず、次のように論ずる。喫煙は悪いと断じ、法で罪にあたると定める。その悪いことを、過去にさんざんやってきた連中がいる。法の不備につけこんで悪いことをしてきた連中を罰しなければ正義にもとる。こうして「遡及すべし」の世論ができあがる。
  世界の先進国が、なぜ「遡及」を法律から除外したのか。法の遡及が可能なら、与党議員は、政敵を始め自分たちの気に入らない人物をことごとく刑務所送りにするだろう。それが可能になる。政府に反対する者を刑務所に収監したい場合、その人物がデモに参加しているところを動画や写真で記録し、デモ参加の証拠を固めてから、デモ禁止法を施行すれば、逮捕できる。
  日本から独立してから反日教育を受けた韓国人のうちの多くとみられる人々、とりわけ文在寅大統領のような左派弁護士は、遡及不可能とする国際社会と各国の法律に違反する考えをもっているため、元徴用工問題、慰安婦問題など植民地に絡む対日問題について、日韓の取り決めをことごとくひっくり返すのだ。

 ●韓国人に偏見を持たず、それでいて理不尽な行為には毅然に対応
 日本の対韓半導体輸出厳格化問題の背景には文大統領ら韓国の左派知識人の歴史観、法律観があり、韓国メディアの主観的な“正義感”がある。これを覆すのは並大抵のことではない。
 日本政府と日本人はこの現実を直視し、文在寅政権を相手にしないことだ。そして日本自らは国際慣例と国際法を厳格に履行して諸懸案を遂行し、国際社会に日本の立場を理解させる努力をすることが重要だと思う。
  韓国は元徴用工のような問題についての日本の会談要請には見向きもしないが、今回の半導体問題では会談を日本に要請する。日本人には理解しがたいことであり、われわれの倫理観では許しがたいことだとは思うが、そうであって、韓国からのいかなる挑発には乗らない冷静な姿勢を貫くべきだ。
  韓国は日本の敵ではないが、味方でもない。友好国でもない。しかし日本人の長所・短所を理解し、たとえ日本人と異なる見解や見方を持っていても、冷静で客観的な態度で理路整然と議論する韓国人(在日韓国人を含む)を大切にしなければならない。そして良識的な韓国人に日本の正当性を訴えていくことだ。それが韓国世論が日本の主張に耳を傾ける端緒となる。
  また韓国民に偏見を持たず、多くのビジネスライク国家のひとつとして淡々と公平に韓国に対応する姿勢を貫くべきだ。親北朝鮮で左派の文在寅政権が辞任し、韓国政治の表舞台から去るまでは、少なくともこの姿勢を堅持しなければならないと思う。
    日本政府と日本国民は、文政権だけでなく将来の韓国のどの政権に対しても、「理不尽」な行為には毅然とした態度で臨むことがこれから必要だと思う。日韓の歴史観、法律観、文化、ものの見方など多くの点で大きな違いがあるからだ。

(写真)半導体規制強化をめぐる日韓事務レベル初会合

半導体輸出強化の正当性を国際社会に訴えよ 元徴用工問題と絡める韓国政府の巧みな戦略(上)

2019年07月14日 13時08分50秒 | 日韓関係
  日本政府は4日、半導体などの材料3品目を対象に、韓国への輸出許可の手続きを厳密にする規制強化策を発動した。これを受け、米紙「ニューヨークタイムズ」など海外紙や国内主要紙のなかには、「世界貿易機関(WTO)のルールに違反か」「自由貿易に逆行」などの日本政府への批判がわき上がった。一方、韓国政府は日本がWTOのルールに違反していると非難し、WTOに提訴すると息巻いている。
  また韓国政府は、韓国人の元徴用工問題をめぐる最高裁判決に対する日本の報復だと国際社会に訴えている。韓国最高裁は日本の植民地時代に元徴用工を動員した日本企業に損害賠償を支払へとの判決を下した。
  日本政府が韓国への規制強化策を発動して以来、1週間あまりがたった。経済・金融分野において全くの素人である私は、日本政府が日韓請求権協定に基づいて元徴用工問題をめぐる話し合いを韓国政府に申し入れたが、韓国政府が現在まで応じないことへの強攻策だと思った。しかし、元経済産業省貿易管理部長の細川昌彦・中部大学特任教授らの話から判断すると、そうではないとの結論に至った。
  かつて経済産業省で貿易管理の責任者だった細川氏は「韓国に対して新たに『輸出規制を発動』するものではない。2004年から特別に優遇して簡略化していた韓国向け輸出手続きを、2003年まで実施していた普通の手続きに戻すものだ」と強調。輸出に際しての「個別許可」は、輸出管理の世界では国際的な原則であり、特別に信頼できる相手国についてのみ、「包括許可」による手続きの簡略化が認められていると話した。
  優遇対象国は、3年ごとに有効な「包括許可」を得られ、その期間は日本当局の許可なくいつでも輸出できる。日本はこの対象国を「ホワイト国」と呼ぶ。2004年にこの「ホワイト国」に韓国が追加された。
  個別許可は韓国企業と日本企業との半導体についての一つの契約ごとに必要だが、製品について一度個別契約を締結すれば、その製品を何度も出荷してもよく、出荷ごとに許可を得る必要ないという。
  日本は安保戦略友好国のインドや友好国のインドネシアを「ホワイト国」に指定していない。また欧州連合(EU)が輸出管理のうえで特別優遇しているのは日本を含めて8カ国で、これに韓国は入っていない。
  細川氏は「EU並みの手続きに戻したとも言える。それでどうして『自由貿易に逆行する』との批判が各国から出るのだろうか」と疑問視している。
  「ホワイト国」は4分野での輸出管理の枠組みに参加し、国内で厳格に輸出管理をしていることが必要不可欠だという。
  日本は厳格に輸出管理をしているかどうかを確認するための協議をホワイト国と定期的に話し合ってきた。この協議を、日本は欧州などほかのホワイト国と実施してきている。しかし近年、韓国だけは、日本との輸出管理の協議に応じていないという。その理由は分からない。
  韓国は1990年代、国際的な輸出管理の枠組みのメンバーではなかった。細川氏は「私は韓国がそのメンバーに参加できるよう、各国に働きかけ、韓国にも再三足を運んで、韓国が輸出管理をしっかりできるように全面的に支援していた。その結果、韓国も国際枠組みのメンバーになることができ、韓国からも日本のそれまでの協力、働きかけに感謝されていた」と話す。
  韓国への半導体素材の輸出規制を実施した責任者の世耕弘成・経済産業相がツイッターで、今回の措置について3点を挙げた。

 (1)輸出管理での意見交換に韓国が応じていないこと
 (2)輸出管理に関する不適切な事案が発生していること
 (3)元徴用工問題などで信頼関係が損なわれたこと

  細川氏は世耕大臣のコメントは適切ではないと論じ、「(3)はあくまで一般的な『背景』で、今回の措置を行う『理由』とは違う。理由はあくまでも輸出管理上の理由でなければならない。国内の対韓国強硬論の声に応えたいのかもしれないが、それは国内政治の論理だ。また韓国にもそうしたメッセージを送りたいのかもしれないが、それは本来の輸出管理とは別次元の問題だ」と話す。
  私も細川氏の話を聞いて納得した。(3)を持ち出しては、国際社会や世界各国政府の理解を得られないと思う。あくまで韓国が(3)を絡めて、米国や国際社会に日本の不当性を訴えていくだろう。