英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

容疑者に殺された、悩む若者を理解する思いやりは大切   座間市9人殺害を考える

2017年11月22日 14時17分37秒 | 時事問題
 死にたいと思うほどの若者の悩みを逆手にとり、金銭目的と思われる目的で9人を殺害した白石隆浩容疑者の行為は断罪そのものだが、一方、彼の甘い自殺の誘いに乗った若者の心にも思いをはせる。
 新聞報道によれば、白石容疑者自身はまったく自殺するつもりはなく、被害者が部屋に入って少し身の上話をした直後に、隙を突いて殺したという。
 捜査関係者によると、白石容疑者は被害者のうち最初に殺した2人と最後に殺した八王子市の女性については詳しく供述しているが、3~8人目はうる覚えだっと供述している。東京地検立川支部は、事件の全体像を把握後、精神鑑定する方針だ。
 それにしても、なぜ、9人もの若者が白石容疑者の毒牙にかかったのか。さらに10人目の女性を標的にしていたようだ。
 ドイツの文豪ゲーテが1774年に刊行した『若きウェルテルの悩み』(わかきウェルテルのなやみ、ドイツ語: Die Leiden des jungen Werthers )を、私は若い頃、読んだ。誰でも若者は将来への不安から生きる意欲を失い、自殺願望に陥る。このような若者は繊細な精神を持ち、彼らの性格は真面目で、優しくておとなしい。
 男女9人の犠牲者は本当に自殺したかったのか、と私は自問自答する。11月22日付けの朝日新聞で、自殺問題に取り組む民間団体「京都自死・自殺センター」代表、竹本了悟さんの話は考えさせられる。
 浄土真宗本願寺派の僧侶が中心になって2010年に設立したセンターに、電話とメールで受ける悩み相談は年に約4千件。メールで相談を受ける6割近くが20代以下で、小・中学生と思われる相談もあるという。
 同団体は月に一度、つらさをかかえる人が集まる「おでんの会」を開いている、と朝日は報じる。
 「参加した20代の女性はこんな感想をつづった。『おでんの会に来させてもらったときは楽しいひとときを過ごすことができますが、一人になるとまた死にたい気持ちがわきおこってきます。でも定期的におでんの会があることで、どうにか生きることができているように思います』」
 竹本氏は自殺願望の若者に「一生懸命に生きなければ駄目だ」と忠告することは逆効果だと話す。彼らに寄り添い、彼らの悩みを聞くことだという。「何かせねばと気負わなくていい。ただ温かく隣にいてあげてほしい」
 老齢期を迎えつつある私は70年近くの人生を振り返り、悩みを幾度となくかかえたが、自殺しようと考えたことはなかった。しかし、自殺未遂に終わった人や、深刻な悩みから躁鬱病を患い自殺した人を、それぞれ一人知っている。
 自殺を考えるまでの悩みを抱える若者は、複雑で繊細な心の持ち主ではないのだろうか。私は繊細な心を持っていないのかもしれない。ただ、小学校の頃、母親にエジソンの伝記を買ってもらってから、リンカーン、ベーブルース、ベートーベンなどの少年向けの伝記を読み続け、歴史が好きになった。過去に登場する偉人が、人生での私の拠り所だったかもしれない。伝記に登場する偉人も人生で悩み苦しみ、それを克服して人生を全うした。
 英国の宰相ウィンストン・チャーチルは「生き生きと活動している人はまず目的を持っていると見て間違いない」と親友に話している。またチャーチルは「長くつきあえる趣味を持ちなさい」と助言もしている。
 「どんな人も人生は一度だけだ」としばしば話したチャーチルは生涯、人生を無為に過ごさなかった。ポジティブに生きた。目的を見つけて一生懸命生きた。そして困難にぶち当たっても、強い精神力で克服した。 勇敢で死地に飛び込むことが朝飯前だったチャーチルは部下に「死ぬときが来れば死ぬだよ」と言った。その意味は、ただ一度しかない人生を一生懸命生きなさいということだろう。
 歴史上の偉人はいろいろなことを教えてくれる。私は、人生に悩む若い人々が過去の人々(偉人でなくても周囲の人々)から、人生の目的を見いだしてほしいと願う。そうすれば、自殺したいいう気持ちは少しは薄らぐのではなかろうか。
 竹本さんらが運営するセンターのホームページは http://www.kyoto-jsc.jp だ。