英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

日本の人口減少と将来   われわれは自身で将来を決めなければならない

2017年11月20日 22時05分37秒 | 時事問題
 「日本は大国であることをあきらめてしまった」。朝日新聞の編集委員、大野博人氏が「日曜に思う」で、フランスの歴史学者で人類学者のエマニュエル・トッド氏(66)の言葉を紹介している。興味深い記事だった。トッド氏は新著「私たちはいったいどこへいくのか 人類史の素描」(邦訳は来年、文藝春秋社から刊行予定)の中にこう書いているという。
 「日本は、人口動態問題を解決するのに大規模な移民に頼ることを拒んでいる」「労働力不足を補う多少の取り組みは始めているけれど、日本は明らかに人口減少を受け入れています。そして人口減少を受け入れている国は、もはや国力を追求しようとしない国です」「国力を維持するより、自分であり続けることを選んだのでしょう」
 「国力を追求しようとしないで、自分であり続けることを選んだ」国かどうかは、私には分からない。ただ日本の人口が2010年以降、減り続けていることだけは事実だ。数年で日本の人口の50%以上が50歳以上になるという。
  トッド氏は「労働力不足を補う多少の取り組みは始めた」と記す。これは、ブラジルの日系人やベトナムやミャンマーからの「技能実習生」を意味しているのだろう。この制度の建前は、途上国の発展に寄与する支援だが、本音は最低賃金以上での一定期間の労働力の確保である。この制度は日本企業のための割安な労働力確保であり、歴代政府が日本の人口減少問題の方向性を打ち出さないで、その場限りの解決策に終始してきた明確な証拠だ。別の言い方をすれば、日本人が持っている保守性と長期的な展望のなさからきているのだろう。
  一度走り始めると、よほどのことがないと歩かないのだ。明治維新以降、欧米に追いつこうとして無理を重ね、朝鮮を併合、満州国をつくり、中国に侵攻、挙げ句の果てに必敗の米国との戦争に突入。そしてすべてを失った。これは国民性と言ってよい。
  安倍政権は人口減少を食い止めようとして幼児教育の無償化などの新政策を打ち出している。共働き夫婦の金銭的な負担を蹴らし、安心して子づくりできる環境を整えようとしている。しかし上手くいくのだろうか?私には政府や政治家が現実から目をそらし、人口減少と外国人労働力の問題について真剣に取り組んできていないように映る。
  われわれが人口減少を認めるのか、認めないのか。認めるのなら、どの程度まで認めるのか。また外国人労働者を「使い捨て」にするのではなく、日本人労働者と同じ労働待遇で働いてもらう。そして、人材育成の効果を上げ、母国で生かされる訓練をする制度に作り上げていく必要があるのではないだろうか。また、「外国人技能実習生の中から、優秀な人材を日本に定住してもらうことも考えなければならない時期にきていると思う。
  私は日本が人口を増やして大国になることを望まないが、子孫が豊かで、最低限の防備ができる人口まで増やすことは必要ではないだろうか。20世紀的な「力」を信奉している中国が台頭している現状ではなおさらだ。私のブログを読んでくださる読者、特に若い読者が人口問題を長期的な観点から考えてほしいと願う。


写真はトッド氏