英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

安倍首相は民主主義者でないことを再確認する      「共謀罪」成立に思う

2017年06月15日 10時22分32秒 | 日本の政治
 「条約の目的はテロ対策ではない」。「テロ対策を趣旨に含む国際組織犯罪防止(TOC)条約の「立法ガイド」を作成した中心人物、米ノースイースタン大のニコス・パッサン教授は「共謀罪」についてこう述べる。パッサン教授は太平洋を越えた向こうから条約締結の正当性に疑問を投げかけている。
  犯罪を計画段階から処罰できる組織的犯罪法改正法が15日朝、成立した。この法律の中核は俗にいう「共謀罪」だ。この法律の危険性はだれの目にも理解できるのだが、大衆は一部の人々を除いて身近なこととして認識していないようだ。特に20~30歳代の若者にその意識が希薄だ。民主主義社会にどっぷり浸っていると、そのありがたさも忘れてしまうのかもしれない。確かに、若者は将来に不安を抱いている。それは理解できるが、だから今より悪くならなければよいと考え、現状維持を求め安倍晋三政権を暗黙のうちに支持しているようだ。
 どうも20~40代の世代は自分らで世の中を変えていこうという気概がないのだろうか。リスクを恐れず勇気を出して自らの手で変革していく意思がないのだろうか。先週、社の後輩で管理職の友人が「20~40代の社員の多くは与えられた仕事は完ぺきにこなすが、自らのイニシアチブをとってリーダーシップを発揮することがない」と嘆いていた。
 どうもこの傾向がますます強まっているように感じる。このような閉塞した、無関心社会のなかでは、権威主義政権や独裁政権が育まれていく。歴史がこの事実を示す。
 安倍首相と与党「自民党」は中間報告という異例の手続きで委員会審議を一方的に打ち切り、「共謀罪法案」を参院本会議に上程した。
  この手続き過程が安倍晋三氏の政治信条や思想を浮かび上がらせる。幾人かの記者は「安倍はイエスマン」を取り立て、議論を嫌うと筆者に語ったことがある。今回の「共謀罪」成立過程から、このことが実証されたと思う。
 一方、野党、特に野党第一党の「民進党」議員もこの法案成立の責任の一端がある。彼らは金田勝年・法務大臣の資質ばかりに目を向けた質問をし、法律の中身についての徹底的な質問をしなかった。大衆受けのパフォーマンスとみられても反論はできまい。
 与野党ともに議論する姿勢がない。特に安倍首相と自民党にはその傾向が強い。安倍首相はたぶん民主主義制度を理解してはいないようだ。彼の議論を聞いていると、野党議員からの主張に耳を傾けるのではなく、自己主張を繰り返し、相手を批判する。
 ここがウィンストン・チャーチル首相との大きな違いだ。チャーチルは政敵を愛し、イエスマンを嫌った。安倍はその真逆の人物だと理解してよいと思う。
 「加計学園」の獣医学部新設問題や「森友学園」への国有地売却問題にしても、安倍政権は議論して事実を明らかにしようとしないどころか、「加計学園」問題では、義家弘介文部科学副大臣が「総理のご意向」などと書かれた文書の存在を証言した文部科学省職員について、国家公務員法違反に当たる可能性があると示唆した。公務員は政府の下僕ではなく、国民の下僕である。義家氏はそれを理解しているのだろうか。
  今日ほど民主主義制度の根幹が揺らいでいる時代はない。われわれは過去を忘れる。ナチス・ドイツのアドルフ・ヒトラーがどのような経緯を経て独裁者になり、「狂った理念」を実現しようとし、数千万の人々を戦争や迫害で殺したのか。安倍首相は気づいていないのだろうか。
  安倍首相は独裁者ではないが、権威主義者であり、議論が苦手のようだ。このような政治家から民主主義制度が崩れ始め、彼の何代か後に独裁者や独裁者集団が現れる。一方、目の前のことにしか興味を示さない大衆にも安倍首相に政治権力を与えた責任がある。
 民主主義制度は完ぺきな、素晴らしい制度ではない。ただ、ほかの制度と比べれば、ましだ。国民一人ひとりが民主主義制度を守り育てようという意思を持ち、議論をすることを心掛けなければ、この制度は崩壊して暗黒の時代が再来する。チャーチルは政界を引退する直前の英議会で議員と英国民にこのような趣旨の話をした。
  わたしのような団塊の世代はあと15~20年もすれば皆鬼籍にはいる。ヤングマン、君らの未来は安倍首相や与野党の議員により与えられるものではない。君ら自身の行動によって、より良い未来が実現するのだ。そのためには自由と民主主義が不可欠だ。それなくして君らの希望や望みは実現しない。それどころ独裁者や権威主義者を招くことになってしまう。肝に銘じていほしいと願う。