英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

中国共産党は将来、必ず滅ぶ  南シナ海をめぐるハーグの仲裁裁判所の判決に思う       

2016年07月13日 14時55分27秒 | 中国と世界
 オランダ・ハーグの仲裁裁判所は12日、中国の南シナ海での主権の主張を退け、南シナ海をほぼ囲い込む境界線「九段線」は「歴史的な権利を主張する法的根拠はない」などとする判決を示した。ハーグの仲裁裁判所に中国の不法を提訴したフィリピンは全面的に勝利した。
 一方、中国国営の新華社通信によれば、中国の王毅外相は、「仲裁案は、法律の衣をまとった政治的茶番劇だ」と非難、「判断は、地域の平和と安定に役に立たず、中国とフィリピン両国の共通利益にそぐわないものだ」と述べ、改めて判断を受け入れない姿勢を示しました。
 フィリピン外相は仲裁裁判所の判決を歓迎しているが、先月末に就任したドゥテルテ大統領は、「(仲裁手続きの結果が)フィリピンに有利な場合も、話し合おうではないか」と中国に呼び掛けるなど、アキノ前政権が回避してきた中国との2国間協議に前向きだ。経済支援や鉄道網整備と引き換えに、領有権問題を棚上げし、係争海域での中国との共同資源開発も容認する姿勢だ。
 アキノ前政権と違って、ドゥテルテ大統領は主権の問題で中国と取引しようとしている。中国はドゥテルテ大統領の商人的気質を利用して、比国政府に経済援助の甘い飴をしゃぶらせ、南シナ海をわがものにするだろう。ドゥテルテ大統領は国家の核心的な利益である領土をソロバンの材料にしようとする愚を犯すのかもしれない。
 日本のメディアはリベラルも保守系新聞もそろって、「南シナ海仲裁裁 中国は判決に従う義務がある」(読売新聞)、「南シナ海判決 中国は法秩序を守れ」(朝日新聞)と中国政府に勧告している。
 筆者は中国の習近平政権を観察していると、戦前の日本の歩みに似ているように強く感じる。欧米列強に独立を踏みにじられそうになった日本が必死で近代化していく19世紀後半。そして日露戦争に勝利し、世界の5大国として自己主張をはじめ、自らの国力を顧みることなく、アジアの主導権を握ろうとし、中国を侵略。中国を支援した米英と衝突し、奈落の地獄へ落ちていく悲惨な道だった。1945年8月15日、日本はすべてを失った。今日、中国は日本と同じ道をたどっているとしか思えない。中国政府と国民は、かつて日本から受けた悲惨な被害から日本を憎んでいる。ことあるごとに日本を批判する。時として不当極まる攻撃もする。筆者は中国共産党と幹部に忠告する。日本ばかりに目を向けて批判しているうちに、足元の土が崩れ始めているではないか。
 習近平政権が「日本の軍国主義を決して忘れない」「侵略を忘れない」と繰り返し述べ、日本を批判する前に、現在の自らの行動が戦前の日本の侵略行動と似ていることに気付くべきである。多分、気づいているにちがいない。中国は判決を無視する構えだが、主権を巡る主張の根拠が否定されたことになり、外交的に厳しい立場に立たされるのは必至だ。
 中国が判決前、南シナ海の実効支配を誇示しようと、大規模な軍事演習を実施したことも看過できない。南シナ海の権益確保に躍起になるのは、戦略原潜の拠点として利用するなど、軍事面で米国に対抗する意図があるのだろう。
 日本は戦前、中国東北部(旧満州)を侵略、当時の蒋介石国民党政府が従わないとみるや、中国本土(華北、華中、華南)へと侵略を繰り広げて行った。現在、中国はベトナム、フィリピンの領土を事実上侵略し、日本の尖閣諸島をも狙っている。
 想像力を膨らませれば、中国は、戦前の日本と同じように、ますます国際的な孤立を深めていくだろう。英宰相ウィンストンチャーチルはアイゼンハワー大統領の若きスピーチライター、ジェームズ・ヒュームズに「歴史を勉強しなさい。歴史から学ぶものがたくさんある」と言った。
 中国も日本に「歴史を学べ」と説く。中国の「歴史を学べ」は自国に都合のよい「学べ」だ。そのような「学べ」ではなく、中国がチャーチルの言葉「過去の過誤と成功に学び、それを現在と将来に生かせ」を肝に銘じるべきだ。そうでなければ中国共産党は将来、必ず滅びるだろう。中国は危機に直面するだろう。
 チャーチルは晩年、第2次世界大戦中に秘書として仕えてくれたジョン・コルビル卿に「わたしはソ連の崩壊を見ることなくこの世を去るだろう。しかし君はソ連の崩壊を見られるだろう」と話した。チャーチルは政治制度における歴史の中心的な流れは民主主義と自由だと喝破していた。旧ソ連のような全体共産主義国家、一党独裁制国家は必ず淘汰されると読んでいた。コルビル卿はベルリンの壁が崩壊する2年前に死去した。1991年ソ連は崩壊した。
 旧ソ連の崩壊を目の当たりにした鄧小平ら当時の指導部は、共産主義独裁制の維持を血眼になって探し出し、経済を資本主義にして政治の一党独裁を維持した。習近平ら彼の弟子はそれを引き継いでいる。しかし、どう考えても、自由主義経済と政治制度である共産党一党独裁は矛盾する。民主主義と自由の中でこそ資本主義経済は花開くのだ。
 中国社会は現在、矛盾だらけだ。共産党は言論を弾圧し、国内の少数民族を弾圧し、上意下達の硬直した政策を推し進めている。そこには自由な発想と言論のぶつかり合いがない。政府への批判もない。中国共産党と御用メディアは「国民の政府批判と政府の誠実な説得と反駁」が政府と国民を最後には一致団結させることを知らない。いかなる困苦にも耐え、国家が難局を切り抜ける唯一の政策だとは理解していない。それは彼らが投票ではなく「鉄砲」で政権を奪取したからにほかならない。
 ほころびは中国社会のあらゆる階層に出てきており、そのほころびはこれから大きくなるだけだろう。共産党独裁と、そこから富を蓄積してきた共産主義者には先見性も勇気もない。想像力もない。ただただ彼らにとり唯一の強力な拠り所であり味方は「武器」「懐柔」「脅し」という古典的な手法だけであり、彼らの頭脳は100年遅れている。中国共産主義者は最後まで「力」を信奉し、それに基づいて行動するだろう。しかし恐怖の核時代の中で、中国がしゃかりきに軍備を増強し、核弾道を増やしても、民主主義と国際協調という大きな歴史の流れがが大河となって中国共産党は飲み込むだろう。第1次、2次世界大戦の戦間期に、日本の政治指導者や軍部政府がこの歴史の流れに気づかず、依然として日清・日露戦争の国際環境だと勘違いして滅んだように、中国共産党も滅亡するだろう。