英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

歴史の過誤を絶えず振り返る必要性     独裁者ヒトラーの首相就任から80年   ドイツで記念のイベント

2013年02月01日 18時34分18秒 | 時事問題と歴史
 外国メディアは、柔道女子選手15人に暴力やパワーハラスメントをした問題と園田監督の辞任を報道している。英国の放送局BBC、米国の通信社AP、フランスの通信社AFPなどが報道し、米国・インディアナ州のリパブリック紙がAPの記事を転載している。2月1日付朝日新聞(社会面)によると、2020年夏季五輪を招致する文部科学省幹部やJOCは影響を心配している。朝日新聞は英紙「デーリー・テレグラフ」を引用。「20世紀初頭の軍隊的やり方が残っている」を引用している。
 英国でも20世紀初頭には、軍隊内で体罰が横行していたのだろう。精神論が展開されていたわけだ。100年も前の遺物は一刻も早く捨ててほしい。歴史は継続するというが、このような継続は御免こうむりたい。
 JOCや文科省は「オリンピック招致」の心配をする前に、日本の悪しき「文化」を一掃するために知恵をしぼるべきだ。さて今日の話は、20世紀の暴君、アドルフ・ヒトラーについて話したい。
 80年前の一昨日、ヒトラーはヒンデンブルグ大統領の前で宣誓し、首相に就任した。ヒトラーの国家社会主義ドイツ労働者党は総選挙に勝利し、その後1年間でドイツを完全に掌握、独裁国家を樹立した。 ドイツ人は現在、ヒトラーの首相就任80周年を記念して国中で歴史を振り返っている。
 総選挙で保守党の国家人民党(DNVP)は、共産党の躍進を恐れナチスと手を組んだ。大企業や中小企業から農民も大衆までもがヒトラーを支持した。ナチの脅迫と宣伝が功を奏した。ドイツ国防軍上層部もヒトラー陸軍伍長(第1次世界大戦の階級)を軽蔑しながらも、屈辱的なベルサイユ条約を破棄して軍の威信を取戻し、再興を図るために伍長を支持した。
 「この日を昨日のように記憶している」。英紙ガーディアンはフリッツ・ラスティツヒ氏の話を30日付記事で伝えている。
当時14歳のラスティツヒ氏が同日夕方、学校にいると、突然カーキ色の軍服を着たナチ親衛隊SSとSAの楽隊が学校に面した道路を行進していた。警察が楽隊の前後にいて、道路を隔てた反対側の建物をサーチライトで照らし出し、ナチの政敵に目を光らせていた。
 90歳のユダヤ系ドイツ人の作家、インゲ・ドイチュクローン女史も1933年1月30日を回顧している。
 ドイチュクローン女史の母はこれからの運命を予感しているかのように、当時10歳の女史にこう言ったという。「インゲ、あなたはユダヤ人。あなたは少数派、だから自分で自分の身を守るしかないのよ」
 80年後に生きるわれわれは、1933年1月30日が世界史にとって暗い、決定的な転換点だったことを理解している。その日を境にして暗黒の時代が到来したことを知っている。日本人も例外でなかった。軍部、特に旧陸軍指導部や一部民間人指導者は、ナチス・ドイツに心酔し、日独伊三国軍事同盟を締結、日本国民を地獄に追いやった。
 ラスティツヒ氏はこう言っている。「80年は長い。当時の出来事は依然現在に通じている。もしわれわれが何が起こったかを忘れれば、現在再び同じことが起こるかもしれない」
 全体主義もジェノサイドもドイツだけの話では今日なくなった。世界中で起こっている。ラスティツヒ氏は国民が目の前のことのみの現象に熱狂すれば、国家と国民の運命は危険にさらされると警告している。
 首都ベルリンのゲシュタボ(秘密警察)本部跡地でナチスの過去を振り返る特別展が30日に開幕した。 ドイツ人はこれから1年にわたって展示会、コンサート、ガイドツアーなどを通して“反省会”を開催する。 ヒトラーがいかにして権力を掌握したのか。国民がどのようにしてヒトラーの権力掌握に手を貸したのか。
 また連邦議会(下院)で追悼式典が30日に行われ、ナチスによる犠牲者を悼んだ。
式典では、ナチスの迫害にあいながらも生き延びたドイチュクローンさんが「肌の色や宗教、政治思想の違いから生きる権利を否定するようなことが二度と起きてはならない」と訴えた。(時事通信)
 日本でも21世紀に入って熱狂があった。国民は小泉首相と民主党に熱狂した。感情だけで動いた。小泉首相を支持したのは国民の自民党への嫌気からだったように思う。民主党には夢を見た。実現できない政策を唱える民主党に熱狂した。そこに潜んでいる危機を筆者は感じた。このような環境から独裁者が呼び込まれるのだ。幸い、小泉首相は民主主義者。民主党の幹部も“人の好いおっさん”だった。しかし日本人は気づいているのだろうか。自分たちがしたことを?気づいていることを願う。
 ドイツ人は歴史を振り返っている。過去の過誤を現在と未来に活かそうとしている。日本人も歴史を振り返り、過去を真摯に見つめてほしい。
太平洋戦争さえ知らない若者が多くなっているという。太平洋戦争の撃墜王の坂井さんが生前、電車の中でショックを受けたという。二人の学生が「お前知っているか。日本と米国が戦ったんだって」「うそー、ほんとうか」という会話を聞いたからだ。
 われわれ日本人も満州事変や日中戦争、太平洋戦争開戦日を記念して、なぜ愚かな戦争をしたのかを討議してもよいのではないかと思う。ドイツのような催し物を1年間ぐらい続けたらよいと思う。過去を知らない者は未来をも失うだろうから。

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