事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

あ・じゃ・ぱんPART3

2012-01-23 | ミステリ

Rurikoyujiroimg02 PART2はこちら

この作品において、矢作俊彦はこれまで特集してきた「マンハッタン・オプ」「ららら科學の子」「リンゴォ・キッドの休日」などと同じように、というかそれ以上にワイズクラックを放出している。それこそが戦後を語る上でむしろ必要な手順だったとでも主張するように。

・(大杉栄を殺した甘粕正彦について)ハリウッドにも、似たような人物はたくさんいる。しかし、彼らは自分の手で、滅多に人は殺さない。ことに女と子供は殺さない。女と子供は、たぶらかすだけだ。

・ここ(日本)では、福沢諭吉が輸入して、森鷗外が正札をつけたものが、父親として流通している。

・未曾有の世界戦争が終わり、世界中の若者が一斉にあったかいベッドに帰還して、誰も彼もが理想に燃えて腰を動かした結果、そのあと世界は子供で溢れた。(→団塊の世代)

……こんなレトリックが連続するのである。ほぼ全ページ。やれやれ。

そしてそれぞれのマニアでしか判読できないようなギャグがたいそうしこんであり、すべてを理解できるのはおそらく本人しかいない。

Ramplingfarewell_my_lovely_2 ということで映画ファンであり、芸能界について近ごろ強くなったわたしだから解読できる部分をちょっと解説。

・西側の首相が吉本創業家の継承によっているといっても、吉本穎右(えいすけ)という名前はなじみがないことと思う。彼は現実における田中角栄のような政策を打ち出すのだが急死してしまう。その後を継いだのが吉本シズ子……これは、かの有名な吉本せい(山崎豊子の「花のれん」参照)の息子である穎右が、笠置シズ子と子までもうけながら結婚を反対された事実を反映している。これ、長い間タブー扱いでした。吉本シズ子が首相として放つコメントの痛快さは橋下某のわかりやすさとは別種。

・ある登場人物が「お豆腐屋さーん!」といいながら登場するのは、60年代の日活映画に耽溺していた矢作俊彦ならでは。これ、「赤いハンカチ」における浅丘ルリ子なのである。

ネタバレになるので紹介が難しいが、このストーリーの核には、彼女と吉永小百合、そして原節子の存在が確実にある。必読!

あ・じゃ・ぱん あ・じゃ・ぱん
価格:¥ 3,045(税込)
発売日:2002-03

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