事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」 夢枕獏著 角川文庫

2018-06-02 | 本と雑誌

チェン・カイコーの映画「空海 KU-KAI 美しき王妃の謎」の原作。全四巻、十数年にもわたって雑誌に連載された大長編。夢枕獏絶対の自信作(あの人はいつも自信たっぷりだけど)。

映画では空海と白楽天が楊貴妃(チャン・ロンロンは綺麗だったなあ)の死をめぐる謎を解いていくストレートなお話だった。しかしこちらは空海が橘逸勢(たちばなのはやなり)という相棒と軽妙なやりとりをしながら、西洋の呪術と真っ向勝負する過程が延々と描かれる。簡単に総括するとゾロアスター教VS密教って感じ。その最終決戦の場が「鬼との宴」なのでした。

東映版の「空海」については、監督の佐藤純彌さんがキネ旬誌上で「映画(シネマ)よ憤怒の河を渉れ」と題された聞き書きによる回顧録を連載していて(めちゃめちゃに面白い)、密教について解説してくれている。ちょっと紹介すると

佐藤:それまでの密教は東大寺の東密と天台宗の天密に大きく分かれていましたけど、真言密教がそれらの流れをひっくり返したことは間違いがないし、それ以降の発展も全然違うものになっていったという(略)いわゆる葬式仏教とは違うんだということを知らしめたいということで、それ以外の(スポンサーの真言宗青年連盟からの)要求はほとんどありませんでしたね。

-最澄との対立のくだりもきちんと描かれていますね。

-あそこは逆によく天台宗が許したなあと(笑)

佐藤:ほんと、そうですよね(笑)

夢枕獏は、空海の天才はまずその語学力にあったと喝破し、だから本来であれば二十年間は在唐するところをわずかの期間で日本に帰ることができ、同時に密教を華開かせることができたと読者に提示している。若くして帰ることができたから、日本中に弘法大師が開いた温泉や滝があるわけね。

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