事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「刑事シーハン 紺青の傷痕」Too Close to Breathe オリヴィア・キアナン著 ハヤカワ・ミステリ

2019-07-29 | ミステリ

若竹七海の「殺人鬼がもう一人」を紹介したときに、女性刑事や女探偵は犯罪とけなげに立ち向かう傾向があると指摘しました。体力において男性にどうしても劣り、男社会である警察という業界では常に息苦しさを感じているだろうと。

若竹の作品ではそれを逆手にとってとんでもない女性悪徳刑事を描いて痛快でしたが、このアイルランドの刑事(というか警視正まで出世している)シーハンは、ある事件で身体にも心にも傷を負っていることもあって、けなげと言うより思い切り無理をしている。どんなときも気を張って、上司や部下に自分がまともであることを証明しなければならないのだ。

「小便をするときに、どっちの手を使うかまで徹底的に調べ上げろ」

たいへんです(笑)。

平凡な自殺に見えたものが、しかしシーハンの指摘によって他殺であることが判明。つづいて容疑者と思えた人物がそれ以前に死んでいたことがわかるなど、事件は混迷をきわめる。おまけに、登場人物たちの闇が次々に明らかになるなど、北欧ほどではないにしろ、かなりダークな味わい。

意外な真犯人、という意図はわかるけれども、ちょっと描き方があざとかったのは、クライムノベルとして処女作なので仕方ないかも。むしろアイルランドの風俗小説としての方が魅力的。

「歩いてもすぐに一周できるくらい小さな国」

だの、いつも天気が悪いことをみんな愚痴るあたり、なるほど、と思う。

シーハンが自分の神経を休めるために、自宅で盆栽に凝っているとか、タイトルにもある紺青という色を最初に使ったのが北斎であるとか(訳者あとがきで、それ以前に伊藤若冲が使用していたと指摘されています)、日本人向けの描写も。同じ島国、同じ小国ですもんね。

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