事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「おろしや国酔夢譚」(1992 大映=東宝)

2018-08-24 | 邦画

あまりに佐藤純彌監督の評伝が面白いので、「敦煌」につづいて「おろしや国酔夢譚」も見てしまいました。こちらは初見。

原作井上靖、監督佐藤純彌、製作総指揮が徳間康快という布陣は「敦煌」といっしょ。その「敦煌」が商売として成功だったかは微妙なところ。徳間は、もう少し低予算で作品を仕上げればどうかと提案。

でも、前回は砂と暑さに苦しめられたのに、今度は極寒のシベリアが舞台なのである。佐藤監督も続投の西田敏行もよくこの話を受けたよな。

主人公は伊勢の船頭、大黒屋光太夫(緒形拳)。彼の船は17名を乗せて江戸へ向かったが嵐のために漂流。たどり着いたのはアムチトカ島。それどこなんだ……アリューシャン列島で、現在のアラスカ!

当時はロシア領で、先住民族と、アザラシなどを求めてロシアの商人が住んでいた。まず、光太夫たちに立ちはだかったのは言葉の壁。そして、肉食の習慣がなかったこと。

彼らは光太夫のリーダーシップのもとに、流木などを使って船をつくり、イルクーツクに渡る。そして、はるばるサンクトペテルブルクに赴き、女帝エカテリーナの許可をえて帰国する。しかし、帰国できたのは3名だけだった……。

世界地図で確認してもらえばわかりやすい。ものすごい距離を彼らは漂流し、踏破している。大冒険である。しかも寒い。実際に、撮影中に西田敏行は死を覚悟したという。

この物語がしかし興味深いのは、大黒屋を演じた緒形拳の静かさだ。冷静に状況を見極め、静かに対処する。真の意味でのリーダーとは、彼のような人物なのだろう。熱さを前面に押し出すだけでは、人はついてこないのだろうなと納得。

ただし、緒形拳には最後に大芝居が用意してある。エカテリーナの前で浄瑠璃の「俊寛」をうなるのだ。流刑の俊寛を使うのはうまい。

しかし緒形は最初、それすらも拒否したのだという。彼なりの演技プランと、この大芝居は相容れなかったのか。しかしこの激発は、静かな男だったからこそ胸をうつ。名演でした。

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« フェーン!~遥かなる台風の影響 | トップ | 「銀河鉄道の父」 門井慶喜... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

邦画」カテゴリの最新記事