極彩色で縁取られた画面に展開するストレートな『泣ける話』。新劇出身である役所広司を中心にして、いつもの中島メンツがくり広げる舞台劇というコンセプトは予想以上に成功している。
“何者か”に撃たれたヤクザ(山内圭哉好演)、子役出身なものだからかわいい演技しかできない自殺常習者、ヤンキーまるだしのミニスカナース、娘の披露宴にも呼んでもらえないジュディ・オング狂いのオカマ……こんな欠格者たちに純粋無垢なパコをとりかこませたストーリーはずるいっちゃずるい。
でもその欠格者たちを土屋アンナ、妻夫木聡、國村隼などが魅力的に演ずるものだからそのずるさに気づく前にエンディング。おまけにそのエンディングが、館内総泣きのあの涙ボロボロ大会ですから……
「あのじいさんは、パコの心になんかを残してやりたいんだ」
酒とタバコでつぶれた(ようにきこえる)アンナのハスキーボイスでかまされるからこそこのセリフは哀しい。加瀬亮と阿部サダヲがひたすら笑わせるし、実はいちばん出番のなかった“消防車に轢かれてしまった消防士”役の劇団ひとりにも、ちゃんと見せ場が最後に用意してある。ストーリー全体が『阿部サダヲが物語る』設定になっていることもラストで効く。
泣けて泣けて仕方がない観客には、涙のとめ方までお医者さま(上川隆也)がちゃんとレクチャーしてくれてます。周到。
こどもの頬にふれたことがある人なら、そしてその頬の柔らかさをいとおしいと思った人なら落涙必至。ぜひ。
※ここからはネタバレ。
エンドタイトルにはみんなびっくりするはず。
・つい先日までNHKの連続テレビドラマに主演していた某女優
・日本でいちばん有名なお妾さん
・どんなときもカメラを手放さない夫婦
などがこっそり出演しているので。どこに出ているかというと、それぞれ
・リコーダーを阿部サダヲに舐められて泣くシーン&裁判(ウチの奥さんが気づいてました)
・オープニングの写真のなか
・今もってわかりません!
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます