「明日はプレゼン会場に直行しまーす」
「会議のあとは問屋にまわって……うーん今日は直帰ですね」
“直行直帰”は、民間会社ではこのようにひんぱんに使われているフレーズです。人気サイト「ほぼ日刊イトイ新聞」の名物コーナーだった「オトナ語の謎」では
社外からそのまま帰ることが直帰であるなら、 家から現場へ直接向かうことが直行である。 家から現場に行ってそのまま帰るなら直行直帰となり、 カタカナで表すと「チョッコーチョッキ」。 むろん、ぺーぺーの新人くんにはできない高等技術だ。
……と紹介されています。
※その他のオトナ語
「基本オーケー」
こう言われた場合、要するにオーケーではない。
「ちょっと3分いい?」
もちろん3分ですむはずがない。
「そういった意味では」
意味などない。
出張は、もちろん所属からスタートして所属に帰ってくるのが基本です。しかし出張先との距離、会議の設定時刻、復命が緊急を要するか、職員の負担軽減などの観点から、直行直帰は公務員の世界でもそうめずらしいものではありません。
ところが、出張旅費はたとえ直行直帰していようとも所属→出張先→所属の分が支給されてきました。これにかみついたのが公務員の読者が多いことでも知られる東北のブロック紙「河北新報」。昨年の秋、この新聞は調査報道のお手本のようなスクープを連発しました。ちょっと紹介しましょう。
2007年11月14日(水)
通勤区間の出張に旅費 出先勤務の青森県職員延べ550人(河北新報)
青森県の地方出先機関に勤務する青森市在住の県職員が、勤務先から青森市内に自家用車で出張してそのまま帰宅する際、通勤手当と別に相当額の旅費を受け取っていたことが13日、分かった。過去5年間を見ただけで、少なくとも総額は1500万円近くに上り、単年度で約12万円受給していた職員もいた。オンブズマン関係者は「完全な二重取りで、税金の無駄遣い」と批判。弘前市民オンブズパーソンは独自に調査に乗り出した。
河北新報社が県情報公開条例に基づいて入手した旅費請求書によると、2002~06年度に支給された同様の旅費は計約1480万円。延べ約550人が、地方の勤務先から車で青森市の本庁などを訪れた後に帰宅したり、本庁などに顔を出してから出勤したりした場合、1回に付き数千円をもらっていた。
こうした県職員の旅費支給は条例に基づき、勤務先と青森市との距離に1キロ当たり、37円を掛けて算出する仕組み。しかし、各職員には県職員給与条例も同時に適用されており、旅費支給に関係なく月ごとに2000~3万5000円の通勤手当も出ている。
弘前市民オンブズパーソンの高松利昌事務局長は「民間ならばあり得ない。市民感情を逆なでする支給だ」と指摘。既に中南地域県民局の06年度分について情報公開を請求しており、開示された後で文書を分析し、結果を公表する。
旅費条例を担当する県人事課は、07年度から算定式を1キロ当たり25円に改めたことなどを挙げた上で、「二重取りだとまでは思わないが、県職員の論理が通らないこともあると認識している。課内でも議論を続けている」と釈明している。
……この流れは山形県にももちろん波及し、決着をみたのは今年の3月。財務システムの更新ともあいまって、現在もなお大混乱の最中なのです。だから旅費の支給はもうちょっと待ってください。次号で、具体例を示します。