事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「KAMIKAZE TAXI」(1995 ビターズエンド)

2019-11-02 | 邦画

日本のいちばん長い日」「関ヶ原」「検察側の罪人」と、近年は大作請負人のようになっている原田眞人が、95年にビデオ作品として撮影した作品の劇場公開版。噂に違わず、すごい映画でした。

チンピラの達男(高橋和也)は、右翼政治家の土門(内藤武敏)に女を世話する。その嗜虐的性向から、あてがった女タマ(片岡礼子)を傷つけられた達男は、土門の金を奪う計画を立てて成功はする。しかし所属する組から追いこまれ、仲間たちが一気に始末されてしまう。ひとり逃走する達男の前に、ペルーから来た日系人タクシードライバー、寒竹(役所広司)が現れる……。

ビデオのタイトルが「復讐の天使」だったことからもわかるように、達男と寒竹(かんだけ……すばらしいネーミングだっ)がやくざと土門に復讐する過程がメイン。その骨格はもちろん泣ける。殴り込みは高倉健と池部良を彷彿とさせるし。

しかしこの作品がそれにとどまらず、劇場公開、インターナショナルバージョンの発売にまで至ったのは、命を捨ててもかまわないとまで思い詰める寒竹の動機付けがあったからだろう。日本人にはおよそ想像もつかない悔恨が彼にはあり、だからこそ最後に彼は死地に向かうのだ。悪役としての政治家が国粋的で、移民を侮蔑している設定もそれを補完している。

原田眞人の演出はまことに快調。ベタなシーンを徹底的に省略するスマートさがいい。快作「バウンスko GALS」を2年後に撮る下地は着々と準備されていたわけだ。

そしてそして、なによりも役所広司!たどたどしい日本語で語る過去が、浮ついた日本人を撃つ芝居が泣かせます。そして、彼の最大の取り柄がユーモアであることを再確認。この作品の翌年に彼が主演したのがあの「Shall We ダンス?」だったのはその象徴だ。殴り込みの際に、土門の家で働いている移民への寒竹の語りかけなど、うなるほどうまい。

激しい暴力描写、ヘアヌード(片岡礼子はいつも景気よく脱いでくれますねえ)ありなのでR指定は必然。心の準備をしてからご覧ください。傑作です。

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今月の名言2019年10月号PART2 身の丈。

2019-11-02 | 受験・学校

Stevie Wonder - Front Line

PART1「文春砲連発」はこちら

「どんなに裕福でも2回しか結果は提出できないので、試験の条件は平等な制度」

萩生田光一文科大臣の、いわゆる身の丈発言はこう続いていた。言っている本人だってこんな理屈は信じていないだろう。彼はこうも発言しているのだ。

「民間試験なので、全ての人が(本番の)2回しか受けてはいけないというルールにはなかなかできない」

世の中は不平等なものなのだから、それを承知することも必要だと擁護する人もいる。安倍晋三べったりの彼は、現内閣の姿勢をもっとも体現する人物だし、内閣支持率が堅調であることから、そう考える人も実は多いのだろう。弱者に気を払うことをやめた内閣、弱者を叩くことに熱心な人々。

しかし百歩ゆずって不公平不平等が仕方がないとしても、今回の入試英語への民間試験導入は筋が悪かった。大学も困惑、高校も混乱、誰よりもいまの高校二年生たちは不安で仕方がなかったはず。誰も、こんな事態を歓迎などしていない。

わたしは共通一次すら経験していない最後の世代だけど、人の一生を左右するであろう入試制度の改革が、どうしてこうも拙速に進められようとしたのか。

「読む・聞く・話す・書く」の4技能が必要だとする議論が、民間業者の活用に結びつくという理屈がどうにもわからない。しかもTOEICが逃げ出し、東大も当初は採用しないとし、北大や東北大、そして慶応や明治も不使用とされるほどに脆弱な計画……

にしても、導入が延期された以上、文科省のメンツは丸つぶれ。ろくでもない大臣がやってきたことを官僚たちは恨みがましく思っているだろう。そして、官房長官のコメントがふるっている。

「(萩生田光一文科大臣は)適材適所だと思う

文科省もなめられたものではないですか。

高校生諸君、もう気づいていることと思う。君たちの英語力を上げようという動機でこの話が右往左往したわけではないと。これがオトナの世界だ。すばらしきオトナたちの世界へ、ようこそ。

本日の1曲はスティービー・ワンダーの「フロントライン」。英語の真の意味の「ベテラン」「ボランティア」「ベトナム」「ユニフォーム」が理解できますよ。

PART3「大丈夫」につづく

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