事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「特捜部Q Pからのメッセージ」ユッシ・エーズラ・オールスン著 早川書房

2013-03-05 | ミステリ

51stnjgyxpl_sx230_ 誘拐を“職業”にしている男がいる。彼の手口はこうだ。

・新興宗教にはまっている子だくさんの一家をマークする

・そのなかで子どもを2名選択する

・海沿いの小屋に2人を拉致

・さほど高額ではない身代金を親に要求

・「天国と地獄」(黒澤明)に似た手法で金を受け取り

・子どものうちの1人を殺し、1人を解放する

……このルールによってこの男はくりかえしくりかえし犯行を行い、決して逮捕されない。なぜなら、この誘拐は『事件』にならないから。理由、想像できますか。

犯人はもちろん異常者ではあるけれど、被害者たちと真逆なようでいて、実は似た宗教観にとらわれている。闇は深い。

「Pからのメッセージ」は、特捜部Qシリーズの第三作。一作目の「檻の中の女」(女性を監禁し、その施設の気圧を一年に1気圧上昇させる)、二作目の「キジ殺し」(人間狩り&動物虐待)も不道徳な話だったが、今回も陰惨ですわあ。どうなってんだデンマーク。

誘拐そのものが卑劣な犯罪なのに、この男のやっていることは悪魔的ですらある。よくもまあこんなことを思いつくものだとつくづく。

犯罪が陰惨であるだけ、カールとアサドのおとぼけコンビの暴走っぷりが加速する。そのあたりのさじ加減がちょうどいいので、向こうでベストセラーになっているのもわかる気がする。

「ミレニアム」のスティーグ・ラーソン亡きあと、オールスンには期待が大きい。早川に限らず、英米以外のミステリが実は豊潤であることを利用しない手はないので(苦しまぎれとはいえ)意外な作家がこれからも続々と出てくるかも。

契約料が高騰しないうちに手をつけとけ!と各社が競争しているし、エージェントは血眼になっているだろう。翻訳ミステリ不況から脱するためには、なりふりかまってはいられないですもんね。

にしても、北欧の方々って、けっこうな割合で不倫とかかましてるんですねえ。不道徳は犯罪方面だけじゃないわけだ。お勉強になります。

第4作の特集はこちら

特捜部Q ―Pからのメッセージ― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) 特捜部Q ―Pからのメッセージ― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
価格:¥ 2,205(税込)
発売日:2012-06-08
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