ノーベル文学賞をいつとるか、とまで評価される村上春樹だけれど、そのユーモアのセンスがきちんと認められているのだろうか。かつて映画評論家の川本三郎と「映画をめぐる冒険」というビデオガイドを著したことがあり、読者を抱腹絶倒させる手腕におそれいったことがある。ちなみに、村上春樹の著作をコンプリートしたいマニアたちは、どうしてもあの本だけが手に入らなくて切歯扼腕しているのだとか。ウチに来ればいいのに。土蔵(笑)のどこかにありますよ。
「村上ソングズ」は、和田誠のイラストとともに、村上のお気に入りの曲を自ら訳した歌詞集。レコードのライナーノートは誤訳が多いし、古い曲は訳詞も入っていないことが多いので(REMのように歌詞を絶対に同封しないバンドもいる)、ちょっとやってみる気になったのだそうだ。できあがったのは素晴らしい一冊の本。一流のユーモアは健在。図書館で借りて後悔する珍しい例になった。買えばよかったー。
ジャスラックには内緒で、ちょっと原詩と村上訳を紹介しましょう。
Born To Be Blue
When I met you the world was bright and sunny
When you left the curtain fell
I'd like to laugh but nothing strikes me funny
Now my world's a faded pastel
Well,I guess I'm luckier than some folks
I've known the thrill of loving you
And that alone is more than I was crested for
'Cause I was born to be blue
"Helen Merrill With Clifford Brown"
「ブルーに生まれついて」
あなたに出会ったとき 世界は輝いていた
あなたが去ったとき 帳(とばり)が降りてしまった
笑いたいと思うのだけれど
おかしいことなんて何ひとつない
今では世界は色あせたパステル
それでも、私はまだ幸運な方なのだろうか
あなたを愛する喜びを味わえたのだから
たとえそれだけでも、私には
身にあまることなのかもしれない
だって私はブルーに生まれついたのだから
英詩において、韻とは何なのかも含めて、味わい深い。ヘレン・メリルの名盤で聴きなおそう。土蔵のどこかに、しまってあるはずなんだけど(^_^;)。
次回はシェリル・クロウ篇。