宇宙ゼミ

「すっ、すみません、吉田ゼミの教室はこちらですか」

「君、また遅刻かね、吉田ゼミは隣だよ。見りゃわかるだろ
ここは『宇宙ゼミ』だよ、みんなセミの格好をしてるだろうが
今、外で鳴いてるのはクマゼミだ」

「みんなって、教授と学生一人だけじゃないですか」

「この星ではなあ、みんな真実には興味が無いんだよ
君、うちのゼミに来ないか、定員はあと19人空いている」

「いいんですか、僕は専攻なんてなんでもいいんです
でも、卒業論文書かないといけないんで
宇宙の研究ですか、興味深いですね」

「なに言ってるんだ、セミの研究だよ
もちろん、フィールドワークとして時々宇宙には行くけどね
去年はミャンマーのカヤン族の村に行ったし
先週はモルディブでヤマハの水上スクーターに乗ったし
実験農場とレーザー原子炉は宇治にあるし
うちの実験炉は核融合だから放射能は出ないよ
中性子は出るけどね」

「中性子が出れば放射能も出るんじゃないんですか」

セミ男、夏のインターネット環境

NTTやイオは地中まで光やADSLを引いてくれるのだろうか
そう考えると地表にスマートフォンを置いて
テザリングでWiFiルータとして使い
地中のパソコンからネットに接続すれば良いと思った
地中で電波は届くのだろうか

このアイデアまで到達するには
かなりの日数と試行錯誤があるのだが
そうとう長くなるので省略する

スマートフォンはUSB接続やWiFiでインターネットのルータとして
使えるのだが、有線LANとのブリッジの方法がわからなかったのだが
昨晩、夢のお告げで単純な方法を思いついた
月末で請求がくるので31日中に設定しないと翌月も請求が来てしまう

これでイーモバイル１台だけですべて済ませるのが可能になった
イーモバイルも以前のサルのCMより今の板野友美のCMのほうが
少しマシなので良しとする

使わない月は基本料が数百円なので海外逃亡中の経費節約にもなる
イーモバイル端末も基本的にSIMフリーのようだが
使ってる周波数帯が違うようなので国内他社のキャリアは使えないかもしれない

しかし、部屋を見渡すと、iPhoneやiPodやXPERIAやb-mobileやpocketWiFiが
ころがっているので、いったいどんだけ無駄使いをしてるのか、であるが
これも仕事のうちと考えれば必要経費であろうか

地中は夏でも涼しいのですごしやすい

セミ男

もう８月になろうとしている
道を歩いているとあちこちにセミの抜け殻が落ちている
今日はちょうどいい大きめの抜け殻を拾った
クマゼミの紳士サイズのMである
8月からはこれをかぶって「セミ男」として土の中で生きていこうと思う
なぜなら僕の人生には夏が無かったからだ
これからもきっと夏は来ないだろう
もし、もしも、本当の夏が来たときには
ガジュマルの樹に這い登って
早朝の気持ちのいい空気の中
僕はこの殻から抜け出して
宇宙に出ようと思う

2013年、八田二郎の夏休みの日記より

一生一秒物語（106）

「宇宙ゼミの抜け殻を吸い込んでメインエンジンが損傷した

冥王星でのスイングバイによる地球帰還を試みる」

2099年、人類初の太陽系探査飛行に挑んだ八田二郎の通信より