カノウおにいさんの気象・地震再発見

気象や地震についての目からうろこが出る話全集です。
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台風4号が南西諸島の南海上へ 今後は台風ばかり気を取られては危険!

2008-05-18 23:45:38 | インポート

①5月18日15時の天気図 気象庁HPより引用

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②5月18日9時のAXFE578図 日本気象予報士会HPより引用

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③5月19日9時の予想天気図 気象庁HPより引用

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④5月18日9時のFXJP854図(上側左図5月18日21時,上側右図5月19日9時,下側左図19日21時,下側右図20日9時の日本付近上空1500m付近の風速風速分布と相当温位予想図) 日本気象予報士会HPより引用

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南西諸島の南海上には台風4号があり、あす19日以降、本州の南海上を北上する進路予想となっています。

すでに、各メデイアでの気象情報では、このことが取り上げられていますが、明日19日からあさって20日にかけて、本州付近(特に東北太平洋側から関東以西の本州南岸沿いの地域)で注意するべきことは、台風以外の部分にあります。(といってしまうと少々語弊ありますけど。台風だけに気をとられていると危険と言うことを私は言いたいのです。)

それは、引用図③より、南西諸島北部周辺にかかる前線ですね。

引用図②の上側図より、黄海の低気圧に対応する正渦度移流域が18日9時現在、中国山東半島周辺に見られますが、このすぐ南側の中国上海周辺にも、等高度線がU字型になって、正渦度移流域がもうひとつあるのがわかります。

このことは、引用図①でみられる、黄海の低気圧の南側に、今後、低気圧が発生する兆候を示すものでありますが、引用図③では、当該正渦度移流域に対応して、南西諸島北部周辺に、前線(北側が盛り上がっていますね)として表現されています。

引用図④より、この前線上に低気圧が発生し、19日午後以降、本州南岸沿いを北東へ進み、あさって20日9時には、関東南部まで進んでくる予想です。これら前戦や低気圧の南側には、暖湿流が大量に流れ込み、南から南西の風もあす19日からは、本州付近で次第に強まり、あす20日9時には、関東南部の低気圧周辺(特に低気圧のすぐ南側)では風速がおおむね50ノットから60ノット程度まで強まることが予想されます

明日19日は、南西諸島北部周辺に表現される前線の動向に注意!この前線上に低気圧が発生して、今後、この低気圧が本州南岸沿いの地域に大雨と強風をもたらすでしょう。

とりわけ、あさって20日朝方には、関東周辺では暴風警報クラスの風速となる恐れもあります。


台風2号は関東の南東海上で温帯低気圧へ 本州付近へは西から上空寒気ともなった低気圧が接近

2008-05-13 22:59:08 | インポート

①5月13日15時の天気図 気象庁HPより引用

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②5月13日9時のAXFE578図 日本気象予報士会HPより引用

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③5月13日15時の日本付近レーダーアメダス解析雨量図 気象庁HPより引用

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④5月14日9時の予想天気図 気象庁HPより引用

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台風2号ですが、13日朝、八丈島の南東海上に達して、午後には、温帯低気圧に変わりました。

八丈島では13日0時49分に最大瞬間風速36・1mを観測し、島内では13日朝方にかけて、10分間平均でも30m近い猛烈な風が吹き、一時、暴風警報がだされて、関東近海ではおおしけとなり、千葉県の一部や伊豆諸島、小笠原諸島には波浪警報も発表されました。

台風による被害は、大したことがなかったことが幸いですが、西からは、上空に寒気を伴なった低気圧が本州付近へ接近してきました。

引用図①より、日本海西部にある低気圧がそうですが、この低気圧、引用図にはありませんが、上空5500メートル付近で-24℃以下という強い寒気を伴っています。引用図②の下側より、上空1500m付近の気温差ががこの低気圧周辺では30℃程度にも達するほど差があり、大気が不安定な様子がわかりますね。

さらに、引用図②を良く見ると、この日本海西部に低気圧に対応する、上空5500メートル付近の正渦度移流域が日本海西部に広がっており、別の正渦度移流域が東シナ海に見られ、(引用図②の上側)、これら南北に広がる正渦度移流域に対応して、引用図②下側より、西日本では、上空3000メートル付近で活発な上昇流域が南北に広がっています。この活発な上昇流域に対応して、強い降水域が日本海西部のみならず、中国地方や四国沖にも広がっています(引用図③より)。

今後、日本海西部の低気圧とは別に、四国沖に低気圧が発生するでしょう。そして、14日には、日本海西部の低気圧は日本海を、四国沖に発生する低気圧は本州南岸を東進するでしょうね。これに伴って、14日は、大気が不安定な地域は東日本や北日本へも広がってくる婿実で、広範囲で、短時間に降る強い雨や落雷、降雹、突風などには注意が必要です!


台風2号が本州南海上を北上中 明日13日に伊豆諸島近海へ 台風接近時は等圧線の混んでいる部分と相当温

2008-05-12 23:46:45 | インポート

①5月12日18時の天気図 気象庁HPより引用

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②5月12日9時のFXJP854図(上側左から12日21時,13日9時,13日21時,14日9時の日本付近上空1500m付近の風向風速と相当温位分布予想図) 日本気象予報士会HPより引用

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③5月13日9時の予想天気図 気象庁HPより引用

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台風2号が本州の南海上を北東へ進んでいます。

台風2号は、12日18時現在、中心気圧965hpa 最大風速は35mとなっており、北東へ50kmの速度で移動しています。※12日22時には、中心気圧970hpa 最大風速は35m 北東へ55kmで移動中です。

台風が日本列島へ接近すると、台風情報内に、風速25m以上の暴風域とか、風速15m以上の強風域という区分で、円形に表示がありますが、これは、台風の円形の回転している部分の風速であって、実際に陸上で吹く風速には、気圧配置による等圧線の分布具合や地形的要因、さらには、台風の移動速度(これは台風の回転部分に入る場合ですが)が加わります。

台風接近時には、天気図上で、高気圧が何処にあり、どういう張り出し方をしているかを見極めましょう。等圧線が混んで気圧傾度が大きくなっている箇所が風速が大きくなります。今回の5月12日から13日ですと、引用図①③より、台風の進行方向前面(北東側)で等圧線が大変混んでいますね。

事実、12日22時、台風の風速15mの強風域がかかり始めたと推定される、八丈島では、最大風速19・9m 最大瞬間風速34・1m(いずれも東北東の風)と、大人でも立っていられないほどの猛烈な風が吹いています。

次に、台風の雨域ですが、台風が通常、螺旋系に幾重にも帯状の雨雲を伴っています。特に相当温位が高い部分が帯状になっていたり、相当温位のコントラストが大きくなっている部分(前線)で発達した降水域があり、当該部分が陸地にかかる(気流が地形的に山の斜面にぶつかり強制的に上昇する場合がより一層)箇所で、強い雨が降るものです。

引用図②より、これから13日夜にかけてには、台風の進行方向前面(北東から北側)で、地表と風向が同一で、風速がおおむね50ノット以上(暴風警報クラスの風速が吹く目安となります。)と予想されます。また、13日午前中には相当温位の混んでいる部分が、伊豆諸島にかかりそうですね。

よって、これから13日夜にかけて、台風の進行方向前面に入る、伊豆諸島や関東地方東部沿岸部(千葉県や茨城県)を中心に、北東から東より風が強まり、暴風警報クラスの風速に達する箇所もありそうです。海上ではおおしけとなるでしょう。雨ですが、伊豆諸島では、13日午前中いっぱい強い雨の恐れがあります。

今後の気象情報には充分注意しましょう!


関東の北東気流は2つタイプがあります

2008-05-11 18:53:45 | インポート

①5月11日9時の天気図 気象庁HPより引用

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②5月11日9時の関東周辺アメダス風向風速分布図 気象庁HPより引用

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③5月11日9時の関東周辺アメダス気温分布図 気象庁HPより引用

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④5月11日9時のAXFE578図 日本気象予報士会HPより引用

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昨日から本州南海上に前線が停滞し、前線上を低気圧が東進しました。

このため、東北の太平洋側や関東地方には、東海上からの冷たく湿った海風(俗に北東気流と呼ばれていますが)が吹き込み、雨が降ったことも重なって気温が上がらず、軒並み、3月中旬から下旬頃の寒々しい1日となりました。

東京でも、最高気温が14・1℃(3月下旬並)と、平年と比較すると8・2℃低く、昨日と比べても3・1℃低い気温となりましたが、この気温は、雨が止んだ後の午後4時36分に観測されたもの。雨が降っていた日中は10℃を少し上回る程度と、冬のような寒さとなってしまいました。

この、関東地方や東北地方太平洋側に低温をもたらす北東気流ですが、高気圧の張り出す部分の南縁や西縁に入るときに発生します。以前本ブログでも紹介しましたように、北東気流は、地表からおよそ上空1000mから、せいぜい1500m程度といった下層部分です。よって、北東気流に伴う低温域は、本州の内陸部の山脈を越えられず、東北地方の日本海側や北陸地方、それに甲信地方や静岡県中部以西では北東気流による影響を受けにくいものです。

北側や東側にある高気圧から吹出す気流は、東海上に流れる親潮の影響で、風向が北東方向に変化し、北東気流となって関東地方や東北地方太平洋側に吹き付けます。さらに北東気流が陸地に侵入すると、摩擦の影響で北よりに変化し、北東気流自体、言ってみれば 背の低い気流でありますから、内陸部に地表の摩擦の影響をうけて、気流自体、滞留するようになります。

下層部分にしか吹かない、背の低い気流自体滞留するとどうなるか?ちょうど、冷房の効いた部屋をイメージしてください。部屋の中央より端の部分が冷えやすくなるのと一緒、冷えた空気自体部屋の床部分(地表付近)へ集まり、部屋の壁(内陸部の山脈)を超えられず、当該部屋の端部分に冷気が溜まってしまいますよね。北東気流による気温低下の理屈も、この冷房のかけた部屋とおなじことですね。

よって、北東気流でより低温となりやすいのは、いかに気温の低い気流が東海上から吹き付けられるか?と言うことがポイントとなり、関東ですと、三陸沖から北日本方面で、また東北地方では千島近海から北海道の北で下層が寒気移流が顕著であると、北東気流に伴う気温低下が大きくなるものです。

引用図④の下側をご覧ください。オホーツク海には、上空1500m付近で-6℃以下(地表で雪となる目安の気温です。)の低温域が分布して、オホーツク海南部から千島近海、それに、三陸沖にかけては、等温度線が風向と垂直になっており、寒気移流となっている様子がわかります。さらに、引用図①より日本海中部から北海道の南東海上には高気圧があり、関東地方では、当該高気圧の南縁に入っています。

このため、関東では、北東気流が入り込んで時ならぬ低温となってしまいました。

関東地方では、北東気流になる気圧配置として大きく分けると

<1>高気圧の中心が北側(北緯40度より北側)にある場合

<2>高気圧の中心が関東の東海上(北緯35度より北側)にある場合

とがあります。

このうち、顕著に低温となりやすいのが、<1>のタイプですね。等圧線が伊豆諸島付近まで真横方向に走っているときは、関東地方広範囲で低温が著しくなります。今回の5月11日はこの気圧配置ですね。(引用図①を参照)

<2>のタイプは、関東東海上から南海上では南から南東風となっていますが、鹿島灘周辺の親潮の影響で、関東東部沿岸では北東から東より風となって、関東平野に吹きつけるようになってしまうためです。

関東地方の気温低下はタイプ<1>ほどではありませんは、関東地方一帯に雲が広がってしまいます。伊豆諸島付近から千葉県東部や南部沿岸に南海上から南東風が吹き込むことが多く、関東南部から東部沿岸部に、件の、沿岸前線が発生しやすく、この南東風の気温と湿度の変化如何で関東地方の天気が左右されますね。関東東部や南部では、朝晩、濃霧が発生しやすくなりますし、南海上からの南東風が大変暖かく湿っていたり、上空に寒気が流れこんでいたりして、大気の状態が不安定な場合、関東の沿岸部では局地的に強い雨が降ることもあります。

<1>と<2>をミックスさせたタイプもありますね。この場合、関東地方では東海上にかけて等圧線の走向に注意!東海上で等圧線が東西方向から北西~南東方向に走っていると、当該等圧線がかかる関東地方の地域では、海上から相対的に気温の高い気流が流れ込んでくるようになり、件の、沿岸前線が発生しやすく、このような状況下で、本州南海上を低気圧が東進する場合、当該沿岸前線周辺で雨量がまとまったり、冬季は、雨と雪の境目となります。


8日未明 関東で震度5弱 緊急地震速報間に合わず 地震は局地的 定性的に着目するべき

2008-05-08 23:24:43 | インポート

①5月8日1時49分気象庁発表の、5月8日1時45分茨城県沖で発生した地震の震源・震度分布図 気象庁HPより引用

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5月8日1時45分頃関東地方から東北地方にかけて、かなり強い地震がありました。

当初、この地震の震源地は茨城県沖 ( 北緯36.2°、東経141.7°)で震源の
深さは約40km、地震の規模(マグニチュード)は6.7と推定 と気象庁より発表されましたが、

その後、気象庁からは、

この地震の規模は、マグニチュード  7.0 深 さ 51km。  震央の緯 度は、北緯 36度13.7分。経 度は、東経 141度36.5分と訂正されました。

この地震で、茨城県水戸市(内原町)と栃木県茂木町では震度5弱を観測し、岩手県から千葉県までの広範囲で震度4を観測しています。

今回の地震は、関東地方が乗っかっている、北米プレートの下側に沈みこむ、太平洋プレートの境界付近で発生した地震と思われ、このタイプの地震は、昭和53年と平成17年に発生した宮城県沖地震と同じタイプの地震です。

昨年10月1日よりスタートした、緊急地震速報ですが、当初、震源地はほぼ予測できたものの、関東一円で最大震度4との予測でした。これに、修正(地域的特性を考慮したのでしょうか?)を加え、千葉県の一部で最大震度5弱と予測し、発表したのですが、修正に時間がかかってのでしょうか、地震発生には発表は追いつかず、震度5弱だった水戸市では大きな揺れの40秒後で、栃木県茂木町では38秒後。震源地から100キロ以上離れた東京都心でも約30秒後となってしまいました。

ここで、今一度、緊急地震速報のメカニズムについて紹介しましょう(本ブログ平成19年10月1日の記事です。)

<緊急地震速報のメカニズム>

まず、地震波には、地震発生後 P波 →②S波(主要動などといわれ、地震の被害をもっとも引き起こす部分です。)→③表面波の順にやってきますが、

1・まず最初にやってくるのP波の振幅や伝わって来た方向より、当該地震の規模(マクニチュード)を算出します。

2・地震のマグニチュードと地震を起こす震源断層の長さの関係式から、当該地震の震源断層の長さを算出して、

3・地震のマグニチュードと、当該地震の地震波の最大速度と震源断層からの距離の関係式と、最大速度と計測震度との関係式を利用して、当該地震の、各地点地点の震度を算出する。

43で算出した予想震度で、震度5弱以上と推定される地震のうち、震度4以上の地域を緊急地震速報で発表する。

以上となります。

ただ、注意しなければならないのは、地震の揺れ方の大きさを左右するものは、その土地の表層地盤の硬軟(表層地盤が軟らかいほど、地震波が増幅して揺れ方は大きくなります。) と 震源から地表までの地殻内の特性による地震波の屈折 です。

このうち、緊急地震速報の作成メカニズムでは、前記の部分は 前記項目3で考慮されていますが、の部分は考慮されていません。の部分は複雑ですからね。

よって、比較的深い地震では、緊急地震速報の予想震度は低めに出る可能性が大きく、また、比較的震源が浅くても、地形的特性によっては、やはり、予想震度が実際の震度より低くなることもあるのでは?と思いますね。地域的特性は充分に反映されてませんから。

また、震源が直下の地表付近ごく浅い箇所で発生した地震は、前記したP波とS波がほぼ同時にやってきてしまいますから、緊急地震速報は出せません。

以上ですが、地震も、気象と同様、いや、気象以上に、局地的特性が強く、過去の地震より、その揺れ方の地域的特性を充分に見極めること。地震と言うものは、局地的・定性的に受け止める必要があることを、今一度、私は強調したいと思います。

この点では、まだまだ、緊急速報のメカニズムは不完全なもの。さらに、

個々の地震の、局地的・定性的に分析した特性の部分のデータ蓄積が待たれるところですね。

でも、その発生すらまったく予測できなかった地震が、発生後にしろ、予測できたことは(勿論防災情報には生かせませんでしたが)、地震予知について、確実に1歩前進した と言えるのではないでしょうか?