カノウおにいさんの気象・地震再発見

気象や地震についての目からうろこが出る話全集です。
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兵庫県南部地震より15年 未曾有の大被害は地震の揺れ方が一要因

2010-01-17 13:45:11 | インポート

本日から15年前の平成7年1月17日午前5時46分、兵庫県淡路島付近の深さ16km付近を震源として、地震の規模マグニチュード7・3の地震が発生しました。

この地震こそ、兵庫県南部地震(気象庁命名の名称です。消防庁等官公庁の被害報告上の名称は 阪神淡路大震災と、他、一般的には、阪神大震災などとも呼ばれています。)ですね。

兵庫県南部地震の発生で、気象庁の観測(当時の震度階級ですが)、神戸で震度6、京都 彦根 豊岡で震度5を観測し、後に、淡路島の一部から神戸市内、芦屋市、西宮市、宝塚市の一部では、家屋の倒壊が30%以上となる震度7(当時の震度階級)の地域は帯状に分布していたことが判明しています。この帯状に分布する震度7の地域こそ、震災の帯と呼ばれていますよね。

この地震の影響で、死者行方不明者6437名 建造物の全壊が10万棟以上と、未曾有の大災害となってしまいました。

この地震では、当時大阪では、公式発表の震度は4(大阪管区気象台)と発表されたものの、当該、大阪管区気象台が地形的に 上町台地(礫層で堅固な地盤です)にあるため、地震の揺れ方が軽かったのですが、大阪市内の大半の地域が、軟弱な地盤であったこと、それに、地震の震源から大阪府北部地域にもエネルギが発散されたため、大阪府北部や大阪市内では、一部で、現行震度で震度5強から震度6弱程度まで達する強い揺れに見舞われ、建造物全壊1000棟弱 死者20名の大被害となりました。

大阪府内では、公式発表震度が4とのことで、地震時の初動対策が遅れて、実際に救援物資が被害地域に到着したのが翌日になってから と言う地域もあったとのことです。

この兵庫県南部地震が契機となりまして、その後、気象庁発表の震度階級の見直しや、震度計測地点の増大が行われたりしたわけです。

さて、この兵庫県南部地震ですが、未曾有の大災害を引き起こした原因は、神戸市 という大都市の直下で発生した大地震と言うこともさることながら、地震の揺れ方にも大きな要因があったと私は考えています。

兵庫県南部地震では、比較的周期の長い地震波が卓越したことが、建造物に大きなダメージを及ぼしたと言うことですね。

まず、引用図①地震の波形のモデル(一般的なもの)をご覧ください。国土交通省 国土技術政策総合研究所HPより引用。

Shiki1

地震が起きると、上図に示すような加速度の波形が観測されます。最大加速度は、図中に示すように、加速度の最大値のことをいいます。

ところが、兵庫県南部地震の震源地近くの神戸(当時の神戸市中区山手の神戸海洋気象台)の波形を見ますと(引用図② 気象庁HPより引用・加工※SNは南北方向 EWは東西方向 UDは上下方向の波の成分を表現します。図内横線マス目は10秒毎となります。)

2

引用図からは、ちょっと見ずらくて済みませんが、神戸では、およそ0・7秒から1秒程度の周期の波が卓越しており(ちなみに最大加速度は818ガルその時の波の周期は0・7秒でした。)、特に、最大加速度発発生後に、前記した、およそ0・7秒から1秒程度の周期の波で強く揺れている部分があることが判ります。

私たちの住む、地球上に位置する建造物や地形は、その形状や硬軟によって、地震波などの外力を受けて揺れやすい周期を保持しています。この周期を固有周期と呼んでします。

仮に、建造物や地形などが持つ固有周期と、地震波の揺れの周期とが合致するようになると、当該建造物や地形は特に揺れが激しくなります(これを共振と呼んでいます。)が、一般的に我住居など、我々が日々の生活の拠点としている建造物の固有周期は、おおむね0・5秒~1秒程度。当該建造物の高さが増すほど、固有周期は大きくなります。

地盤でも、地盤が軟らかいほど固有周期は大きくなります。

一方、地震波自体の特性ですが、地震発生させる地殻の破壊が複数個所(この数が増えれば尚更の事)でドミノ崩して気になったり(兵庫県南部地震発生時も同様ですが)、当該破壊が比較的ゆっくりと進行するほど、より周期の長い地震波を卓越させるようになりますすし、地形的に地震波が屈折などして、地震は波同士が合流する場合など、地震波自体、より周期の長い波が多くなってしまいますし、地震波の周期が長くなすほど、地震波としてのエネルギーが大きくなりますので、当該地震波の継続時間はより長くなるますし、減衰しにくく、より遠方まで伝播という性質がありますね。

前記した、神戸(神戸海洋気象台)の卓越している地震波の周期と建造物の周期とが合致していますよね。さらに、件の 震災の帯 と呼ばれる地域では、地形的に地震波が屈折して地震波同士合流していたと言うことですから、一層、周期の長い地震波が建造物を共振させて、建造物に甚大なダメージを引き起こした と言うことです。

地震波の中で、建造物を共振させやすい、周期1秒前後の周期の部分を、キラーパルス とも呼ばれています。

近い将来来るべき、東海地震や南海地震、それに宮城県沖地震などのプレート間巨大地震も、当該地震を発生させるメカニズム(アスベリテイーと呼ばれるプレート間の固着域が複数あり、このアスベリテイーがドミノ崩し的に破壊されて地震波を形成させるもの)より、比較的周期の長い地震波は広範囲に発生させるため、前記 キラーパルス による被害も甚大なもののなると懸念されます。