カノウおにいさんの気象・地震再発見

気象や地震についての目からうろこが出る話全集です。
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25日未明から明け方にかけて、近畿地方で局地的大雨 前線は線ではなく面として捉える 立体的な状況をも

2008-05-25 23:54:29 | インポート

①5月25日3時の天気図 気象庁HPより引用

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②5月24日21時のAXFE578図 日本気象予報士会HPより引用

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③5月24日1時の近畿地方周辺アメダス風向風速分布図 気象庁HPより引用

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④5月24日2時の近畿地方周辺アメダス風向風速分布図 気象庁HPより引用

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⑤5月25日3時の近畿地方周辺レーダアメダス解析雨量図 気象庁HPより引用

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梅雨前線の活動が活発となったため、25日は、未明から明け方にかけて、近畿地方や四国地方の一部で局地的に、1時間40㎜を超す激しい雨に見舞われ、近畿地方では、浸水などの被害が出た箇所もありました。

この激しい雨の区域は、強まったり弱まったりしながらも全体として、東へ移動し、午前中は東海地方や関東地方の一部でも、一時間に30㎜以上の降水量を観測した箇所も散見しました。

引用図①と引用図⑤とを比較すると、天気図(地上天気図)上の前線の位置と、実際の強い降水域とは、必ずしもその発生位置は一致しないことがわかりますね。

本ブログの平成18年11月の記事で、私は、前線は線として捉えるのではなく、帯として捉えるべき と書いたことがありますが、前線の位置は、杓子定規に線できちんと引けるものではありません。ちょうど、水の中に油をたらすと、水と油の境界部分は、きちんとした線とはなりませんが、この様子に、前線も似ています。

前線を挟んでの、暖気と寒気との鬩ぎ合いは、日本列島の地形的要因をも加味されて、非常に複雑です。暖気や寒気が段階的に流れ込んだり、気流が収束して、ある一部地域に、集中して流れ込むこともありますね。

今回、近畿地方や四国地方で25日未明に局地的大雨になったことは、前線を挟んで、南側の暖気が局地的に収束した部分が東へ移動し、当該部分が四国山地の影響で、南西から北西方向に帯状に広がる強い降水域を形成し、この強い降水気が、紀伊水道北部での地表付近で、地形的に気流が収束したことで、雨雲が局地的に発達する原動力をもらって、当該降水域がさらに発達していった と言えそうです。

引用図②の上側より、24日21時現在、朝鮮半島付近には上空の谷があり、下側の図より、九州南東沖上空1500m付近に、南西風と南南西風とがそれぞれ35ノットから40ノットと強めに吹きつつ、四国沖で収束し(引用図にはありませんが、上空1500m付近の相当温位がこの収束している地域周辺で340K程度と相当高温多湿です。)西から北東へ広がる顕著な上昇流域を形成しています。さらに、24日21時現在に朝鮮半島付近にある谷の東進とともに東へ移動し、、これに伴って、上空1500m付近の気流の収束域も、北東方向へ移動したと推定され、その結果、当該気流の収束域が25日未明に四国山地の影響で、南西から北東方向へ強い降水域を形成したと考えられます。

さらに、引用図③④より、25日1時から2時にかけて、大阪湾周辺では風向が疎らで風速は弱めですが、紀伊水道には、四国東部の南西風と紀伊半島南部からの南東風が合流して、おおむね南よりの風向で風速は強めとなっていますね。地表付近でも気流が収束している様子がわかります。

四国東部に発生した、南西から北東へ延びる強い降水域は、東へ移動するとともに、紀伊水道周辺での地表付近の気流の収束域に入り、降水域を発達させる原動力をもらって、当該降水域がさらに発達していき、今回の激しい雨に繫がったというわけですね(引用図⑤)。

このように、前線は、周囲の地形的特性の影響を受けます。それに、上空1500m付近や3000m付近の気流の様子、さらには上空5500m付近の渦度分布の様子をも加味し、立体的な状況を見極めることが大切です。