カノウおにいさんの気象・地震再発見

気象や地震についての目からうろこが出る話全集です。
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兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)から26年!改めて合掌!!

2021-01-17 01:51:17 | 日記
兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)から、本日で26年が経ちました。

この地震、神戸という大都市のほぼ直下で発生した直下型大地震で、神戸や淡路島を中心にした阪神地区に未曽有の大被害をもたらしました。が、いつまでも、防災上の観点から、この地震の特徴・教訓は語り継がなければなりません。

本日は、この立場から、本ブログで記した記事を抜粋し、兵庫県南部地震というものを語っていこうと思います。

以前、本ブログにて記述したように、この兵庫県南部地震、建造物にダメージを及ぼしやすい周期の地震波が卓越した地震ということでした。
今一度、平成23年3月に発生した東北地方太平洋沖地震での速度応答スペクトル図(任意の固有周期を持つ建造物が地震でどのようは速度を観測したかを図示したもの)
を引用図①(東京大学地震研究所HPより引用)をご覧ください 。




周期1秒以上の地震波が、木造家屋への影響が大きくなるもので、鉄筋や鉄骨建造物も同様です。それに、建造物の階数がより高くなると、影響を受けやすい地震波の周期は大きくなります。
さらに、速度応答スペクトルが周期1秒以上で200㌢毎秒以上になると、建造物に壊滅的な被害が生じるようになります。

ご覧のように、東北地方太平洋沖地震での築館、塩竃、日立では、応答速度が100㌢毎秒以上の固有周期は1秒以下なのに対して、兵庫県南部地震でも、神戸市中央区葺合と須磨区鷹取の速度応答スぺクトル値を見ると、
周期1秒以上で200㌢毎秒以上をなっております。故に、兵庫県南部地震では、建造物にダメージを及ぼしやすい地震波が卓越したといえるわけです。

さらに、昨年発生した熊本地震での、熊本県益城と熊本での速度応答スペクトル図(防災科学技術HPより引用)を引用図②で紹介しでみました。


◇4月14日21時26分発生

益城


熊本



◇4月16日1時25分発生

益城


熊本


ご覧のように、昨年の熊本地震(4月14日21時26分と 4月16日1時25分)においては、益城、熊本いずれも、周期1秒以上で速度100㌢毎秒以上、益城では、4月14日、4月16日双方発生の地震でも、
速度200㌢毎秒を観測した周期が1秒以上の周期に見受けられます。


よって、昨年の熊本地震でも、兵庫県南部地震ほどではないにせよ、建造物のダメージを及ぼしやすい地震波が卓越した地震であるといえるでしょう。


兵庫県南部地震や熊本地震のように、建造物にダメージを及ぼしやすい地震波はどのような地形やメカニズムにして発生するか?ですが、

Ⅰ:基盤の上に表土層が堆積している箇所(火山の近隣など)

Ⅱ:地震発生する地殻の破壊が、ドミノ崩しのごとく、連鎖的になっていた。

ことがあげられますね。



④兵庫県南部地震発生させた断層破壊プロセス図 国土地理院HPより引用


⑤兵庫県南部地震時の神戸海洋気象台(当時は神戸市中区山手)の地震波形・スペクトル図 気象庁HPより引用


引用図④より、兵庫県南部地震発生させた断層破壊プロセスは、大きな破壊は3つ※3つを細分して5つという説もあります。で、明石海峡→神戸市中央区沿岸→神戸市東部 と推定されて、これに対応して、
当時の神戸海洋気象台の地震波形。プロセス図より、大きな揺れの部分が3つあることがわかります。

さらに、⑤より、大きな揺れの部分は、地震波のS波到達とともに発生しており、さらに、当該大きな揺れの到達時に、東西方向、南北方向、上下方向とも顕著なっており、かつ、東西方向、南北方向の地震波成分の継続時間が上下方向よりも長くなっております。
これは、表面波が顕著になっていて、神戸市周辺の地形的特性(基盤が地震波が進んで来る方向に開いていて、斜面状になった基盤の上に相対的に柔らかい表土層が堆積している.震源から地中を地表に進んできた来た地震波(実体波)と地表に到達後地表を進む地震波および基盤に跳ね返って地表をそれまでとは逆に進んできた地震波相互が合流し増幅するものである。))を反映して、実体波S波の部分が上下方向に変化したことと、表面波のラヴ波が顕著になったことですが、まさに、前記、Ⅰ、Ⅱを如実に反映しているといえますね。


※大阪府や京都府も甚大な被害であった!!最後に未曾有の大被害をもたらした兵庫県南部地震ですが、京阪神地域(兵庫県、大阪府、京都府の被害状況について記しました、ご参考にしてください!(気象庁発刊、㍻9年兵庫県南部地震報告より、震度分布は気象庁、JR,各自治体、阪神高速道路公団発表地震加速度値より筆者が推定したもの)

<兵庫県>
※神戸市、淡路島北淡町、津名町、一宮町、宝塚市、芦屋市、西宮市の一部で震度7を観測

死者:6394名 行方不明:2名

負傷者 :(重傷)857名 (軽傷)31497名

全壊家屋:103934棟 半壊家屋:136096棟 一部損壊家屋:240030棟


<大阪府>
※大阪では公式発表震度は4であったが、現行の震度算出方式では計測震度4・55(現行では震度5弱)であった。大阪市、豊中市、池田市、吹田市の一部地域では、震度6弱以上を観測したものと推定される。

死者:30名 

負傷者:(重傷)175名 (軽傷)3414名

全壊家屋:895棟 半壊家屋:7221棟 一部損壊家屋:87879棟


<京都府>
※京都市の公式発表震度は5 現行では震度5強、京都市一部や亀岡市などの一部地域では局地的に、現行震度では震度6弱程度の揺れがあったものと推定される。

死者:1名

負傷者:(重傷)3名 (軽傷)46名

全壊・全焼家屋:3棟 半壊・半焼家屋:6棟 一部損壊家屋:2741棟




冬型気圧配置時 日本海等圧線袋型 突風にも要警戒!!(令和2年12月30日の事例より)

2021-01-16 01:52:20 | 日記
①令和2年12月30日の天気図 気象庁HPより引用



②令和2年12月30日12時の日本付近雲画像図(赤外)気象庁HPより引用



令和2年暮れ押し迫った12月30日、午前中に本州南岸を低気圧が発達しながら東北東に移動して、
本州付近は西から冬型気圧配置が強まってきました。が、日本海で等圧線が袋型に歪曲しており、
これは、この袋型に歪曲した箇所が低圧部となっていることを示すもので、当該、等圧線歪曲した箇所で、
雪雲(雨雲)が発達しやすくなります。

引用図②より、前記日本海の等圧線歪曲箇所には、冬型気圧配置に伴う雲は筋状に太くまとまり、強い降水をもたらす様相で、
当該、筋状雲を日本海西部で拡大すると、

③令和2年12月30日12時、13時の日本付近雲画像図(赤外)の日本海西部拡大版
ⅰ:12時 ⅱ:13時 ともに気象庁HPより引用

ⅰ:

ⅱ:

③ⅰ、ⅱより、日本海西部等圧線歪曲箇所を通過する帯状雨の中、雲の渦巻きがいくつが散見され、当該雲渦巻き形が勾玉型にはっきりしている
aに注目すると、a自体、30日12時~13時にかけて島根県隠岐の島から鳥取県沖をと
東進しております。

このaですが、東進しながら、隠岐の島や中国地方東部から近畿地方にかけての広範囲に突風をもたらしたのです。

④海上保安庁管轄 三度埼灯台(島根県隠岐の島)と 長尾鼻灯台(鳥取県)位置 国土地理院HPより引用



⑤12月30日3時25分〜15時25分までの三度埼灯台、長尾鼻灯台 の風向風速時系列図(30分毎)海上保安庁HPより引用
ⅰ:三度崎埼灯台


ⅱ:長尾鼻灯台


⑥12月30日3時25分〜15時25分までの三度埼灯台の気圧変化図(30分毎)海上保安庁HPより引用


⑦12月30日12時、13時の全国ウインドプロファイラー風向風速分布図
ⅰ:12時 ⅱ:13時 気象庁HPより引用

ⅰ:

ⅱ:


引用図⑤⑥⑦より、勾玉型aが三度埼と通過した12時25分、三度埼では西南西風35㍍毎秒(10分間平均)、
長尾鼻の北を通過した12時55分、長尾鼻灯台では西風26㍍毎秒(10分間平均)を観測、海上海岸部での
瞬間最大風速は、10分間平均最大風速のおおむね1.3倍という経験則に当てはめれば、三度埼から長尾鼻
にかけて、aの通過に伴って、40㍍毎秒~45㍍毎秒もの、強い台風並みの猛烈な暴風が吹いたと推定されます。

さらに、a が12時25分頃直上を通過したとみられる三度埼では、30分間で気圧が5hPaも低下し、aがスケールの小さい低気圧であることがわかります

この、a のような、渦巻き状雲集団を、メソサイクロン と呼ばれるもので、台風などの熱帯性低気圧と同様に、螺旋状に幾重にも連なる雲を伴って形成されています。で、とりわけ、上空1000㍍~3000㍍の強風域に当該メソサイクロンの、螺旋状雲が幾重にも分布するもので、当該メソサイクロン付近の上空3000㍍~4000㍍付近の風速値をメソサイクロン通過時に瞬間風速としてもたらすポテンシャルがあると言えます。とりわけ、メソサイクロンを形成する螺旋状雲の外縁部で強風を観測しております。(筆者調べ)

引用図⑦より、今回のメソサイクロンが通過した日本海西部〜西日本の上空3000㍍付近では、風速40㍍毎秒以上になっている
ことがわかりますよね。

30日は、この、メソサイクロンaの東進に伴い、すぐ南側に入った中国地方東部や近畿地方中西部にかけて、あちこちで瞬間で30㍍毎秒を超える突風を観測!JR山陽新幹線や山陽本線などで一時列車運行がストップするなど、西日本の交通は混乱しました。

改めて合掌!!、台風19号(東日本台風)上陸より1年!

2020-10-13 23:29:11 | 日記
令和元年台風19号(東日本台風)上陸から1年経過しました。

1年経過した現在でも、東北や関東甲信といった台風の被害が甚大であった地域では、土砂崩れや浸水痕が生々しく残り、未だに応急仮設住宅住まいの方々が立つ海受けられます。
復興未だ半ばといったところでしょうか。

今回は、令和元年台風19号(東日本台風)を改めて振り返ってみたいと思います。


①令和元年10月12日12時、15時、18時、21時の天気図aと全国レーダーエコー図b天気図は気象庁HPより引用、レーダーエコー図は国土交通省川の防災情報HPより引用
※レーダーエコー図凡例
12時
a:

b:


15時
a:

b:


18時
a:

b:


21時
a:

b:

日本の南海上で、一時猛烈な勢力にまで発達した台風19号、各方面とも厳戒態勢の中、12日19時過ぎに、静岡県伊豆市付近に上陸、その後、神奈川県西部から東京と町田市付近を通過し、関東平野を北東へ進んで13日未明に福島県沖へ達しました。

台風の進路に当たった地域では猛烈な暴風に見舞われ、東京都心では、12日21時14分に最大瞬間風速41.5㍍毎秒(戦後最高)を観測しました。

さらに、台風19号の規模は大型だったためと台風の進行方向前側には前線もあったため、引用図①より、関東地方山間部や甲信越地方、東北地方の太平洋側には発達した雨雲がかかり続けてしまい、引用図②の各画像ご覧のように、あちこちで24時間雨量が500㍉以上と記録的な豪雨となり、関東、東北、甲信越、静岡県の1都11県に一時、大雨の特別警報が発表されて、東北や関東、甲信越では
、河川の氾濫、土砂災害が相次いでしまいました。

②令和元年10月12日の24時間雨量日最大値画像 気象庁HPより引用
岩手県周辺:

東北南部周辺:

関東北部甲信北部周辺:

関東南部甲信南部周辺:

引用図②各画像図より、

24時間降水量日最大で、
岩手県では、沿岸地域で150㍉~200㍉程度、

宮城県では、牡鹿半島東側と仙台湾沿岸沿い~南部地域でおおむね200㍉~300㍉、南部では一部600㍉超えた地点もあります。
さらに
福島県では浜通り地域や中通り地域山間部で200㍉以上、一部で300~600㍉程度。、

関東地方甲信越地方では、千葉県や甲府盆地、長野県東部地域の一部を除き、おおむね200㍉以上、関東北部西部山間部や甲信越山間部では、軒並み400㍉以上を観測して、
神奈川県の箱根では942・5㍉を観測しております。

筆者調べですが、
一級河川程度の河川で

源流地域で

おおむね総雨量200ミリ以上で、河川沿線洪水注意、内水氾濫発生し始める。
おおむね総雨量300ミリ以上で、河川沿い洪水警戒、氾濫危険水位達する箇所で始める。内水氾濫多発。


でありますから、これらの地域にこのような記録的な降水量を観測したため、当該地域に源を発する、阿武隈川、信濃川、那珂川、多摩川などの、一級河川の氾濫につながったわけです。

さらに今回の台風19号、台風自体及び周辺部の風の吹き方に、以下のような特性が見られました。

③引用図①と同時刻の、令和元年12日12時、15時、18時、21時の全国ウインドプロファイラー風向風速分布図※気象庁HPより引用

12時:

15時:

18時:

21時:

引用図③各時刻とも、北陸西部地域では、上空2000㍍、3000㍍よりも、上空1000㍍での風速が強めとなっており、この傾向は、15時、18時と、台風が本州へ接近とともに、
新潟付近から東北南部地域へと広がっています。

このように、上空2000㍍、3000㍍よりも、下層(上空1000㍍)での風速が強い地域は、寒気移流が強まっている証拠!で、併せて、下層や地上付近での風速が強まりやすい状況下にある と言えます。山越え颪風が強ま誌やすい状況下でもあるわけです。

事実、当該状況下にあった、12日昼頃からは、東北南部、北陸、近畿北部中部、山陰、九州北部にかけて、台風の中心から比較的離れているのにかかわらず、20㍍毎秒を超す暴風があちこちで観測されております。

令和元年房総半島台風(台風15号)千葉県上陸より1年!

2020-09-09 23:53:46 | 日記
①9月9日3時の天気図 気象庁HPより引用


令和元年房総半島台風(台風15号)※本文では台風15号と表記します。千葉県に上陸から1年経過しました。

令和元年9月9日5時ごろ、千葉県千葉市付近へ上陸した台風15号、気象庁よりもたらされた被害の甚大さを鑑みて、令和元年房総半島台風と命名されました。

台風15号は、上陸時は戦後関東に上陸した台風の中ではトップクラスの勢力であったため、千葉県や神奈川県など、関東地方南部地域中心に記録的な暴風が吹き荒れて、

◇全壊家屋 391棟 半壊家屋 4204棟 一部損壊家屋 72279棟 床上浸水 121棟 床下浸水 109棟

と、浸水家屋数より、損壊家屋数が圧倒的に多く、

最も被害が酷かった千葉県内でも

◇全壊家屋 363棟 半壊家屋 3929棟 一部損壊家屋 62986棟 床上浸水 34棟 床下浸水 57棟

損壊家屋数は推家屋数と比較して桁違いに多く、暴風に起因する被害が圧倒的に多く生じていると推測され、典型的な風台風 であったといえます。

この台風15号ですが、9日未明に三浦半島通過時、台風の中心がいったん北東方向へ変形して、北東側に中心が飛ぶような形になり分裂しました。台風の中心の、北東方向に分裂したこと、台風前側に分布する強風域をさらに強めてしまい、今回の記録的暴風を引き起こしたといえそうですね。

その様子を、9日2時、3時、4時と時系列で紹介していきましょう

⓶9月9日2時、3時、4時、5時の、レーダーエコー図(国土交通省川の防災情報HPより引用)と関東周辺アメダス風向風速分布図(気象庁HPより引用)
ⅰ 9日2時



9日2時現在、台風は、伊豆大島のすぐ北にあり(中心Aと表示)北上中。台風を取り巻く螺旋状雨雲が、関東地方南部で、幾重に重なり合いように分布していて、房総半島の南西からは、別の螺旋状雨雲が移動中で、千葉県南部地域の螺旋状雨雲と合流しかかっております。

台風を取り巻く螺旋状雨は、気圧傾度の大きい箇所で幾重にも連なる特性があり、螺線上雨雲の外縁部では強風を伴い、螺旋状雨雲同士が合流する箇所付近では、雨雲自体発達して、
その外縁部では強風は一層顕著となります。(筆者確認)


このため、9日2時現在、東京都羽田付近や千葉県安房地区で20㍍毎秒を超えており、館山で2時14分に最大風速28・4㍍毎秒(南風)2時31分に最大瞬間風速48・8㍍毎秒(南南西風)を観測しております。


ⅱ 9日3時




9日3時現在、台風15号の中心Aですが、移動速度から推測すると、神奈川県浦賀付近にあると推定されますが、その形はぼやけ始め、かわって、北東側の千葉県木更津付近に、B で表示する渦が顕著となってきました。この B 発生のため、中心北側の気圧傾度をさらに増大させたと考えられ、北側の螺旋状雨雲は一層発達しています。

このため、千葉県京葉地区や東京23区沿岸部で風が一層強くなり、羽田では30㍍毎秒もの東寄りの猛烈な風を観測!千葉県木更津では、前記時刻に近い 9日2時48分に最大瞬間風速49・0㍍毎秒(東南東風で、観測開始以来最高)2時53分に最大風速23・2㍍毎秒(南東風)を観測しました。



ⅲ 9日4時





9日4時現在、新たに発生した渦 B は千葉市の南西まで移動、中心のすぐ外縁の発達した螺旋状雨雲が千葉県から東京23区の東京湾岸地域にかかり始めてまいりました。千葉県から東京23区までの東京湾岸地域では、おおむね20㍍毎秒を超す北北東から東南東風となっており、千葉で29㍍毎秒(東南東風)東京羽田で25㍍毎秒(北北東風)といった暴風を観測しています。

一方、B の 西側に当たる東京湾上の 海ほたる では 3時25分に南東風23㍍毎秒だったのが、3時55分に風向が西南西風に変化して、風速は9㍍毎秒と一時的に弱まり、B が台風の新たな中心として形成されたといえます。


ⅳ 9日5時



台風15号は、9日5時ごろ、千葉県千葉市付近へ上陸確認されて、上陸後は千葉県北部を北東に移動していきました。

千葉県千葉市では、9日4時28分に 最大風速35・9㍍毎秒(南東風)最大瞬間風速57・5㍍毎秒と、最大風速、最大瞬間風速共に観測開始以来最高の猛烈な暴風を観測しております。さらに、およそ36分後、南西方向と南東方向との螺旋状雨雲が交わる千葉県成田では、最大風速29・6㍍毎秒 最大瞬間風速45・8㍍毎秒と、これまた、最大風速,最大瞬間風速ともに観測開始以来最大の暴風を観測しました。

台風を取り巻く螺旋状雨雲というもの、ご覧のように、一様に螺旋状に分布するものではなく、地形的特性をうけて、その発達具合や、雲の集団の走向具合にコントラストが生じて、台風の中心が分裂することはよくあることです。
なので、当該、台風を取り巻く螺旋状雨雲の分布状況から、台風のとりわけ強風となりやすいエリアを的確に見極めることが重要ですね。



◆台風15号、激烈暴風は内房の一部地域では瞬間70㍍毎秒以上と推測!!


①台風15号が、千葉県に接近・上陸した時刻頃の
ⅰ9日2時  ⅱ9日3時  ⅲ9日4時  ⅳ9日5時 の関東周辺レーダーエコー図 国土交通省川の防災情報HPより引用

ⅰ:


ⅱ:


ⅲ:


ⅳ:


とりわけ、千葉県内房地域では、被害が甚大な様子ですが、この内房地域では、筆者自身の推定で、およそ瞬間で70㍍毎秒を超える、激烈な暴風がふいたものと思われます。

②ⅰ千葉県の地形図 ⅱ千葉県内房地域の地形図 国土地理院HPより引用
ⅰ:

ⅱ:


③9月9日2時の千葉県内房地域周辺主な観測地点の最大風速 海上保安庁HPや白地図ソフトから筆者引用作成



まず、内房地域の暴風を語るうえで、基準となる、地形的特性を受けない海上にある観測地点 浦賀水道航路中央第一号AIS信号所のデータを基準として、洲埼灯台、剣埼灯台の
風向風速データ最大値と観測時刻を記しました。

これら地点とも、引用図①ⅰでも、台風15号の中心 A を取り巻く螺旋状降水域の外縁部に差し掛かった時刻で最大風速が観測されていると推定されて、浦賀水道航路の風速値より、剣埼ではおよそ1.31倍、洲埼では、およそ1・5倍増となっておりますが、剣埼、洲埼とも、地形的には、緩やかではあるか斜面沿いに位置しているため、地形的特性による風速の増大がみられることを確認されております。

引用図②ⅱより、千葉県内房地域、海岸線に山地が迫り地形的には比較的急峻で、浦賀水道に向かって西~南西方向の鞍部が幾重にもみられます。

今回の台風15号接近の際には、引用図②ⅰで示すように、台風の中心取り巻く螺旋状降水域の外縁部東側にかかり、浦賀水道から陸地方向への暴風が吹きつけたと推定されますが、同様な風向の際に、内房地域で、どれほどの地形的特性での風速の増大がみられるか?

この事例を示すものとして、④1979年(昭和54年)10月19日台風20号の際の、千葉県富津市明鐘岬と、富津岬での風向風速観測値をご覧ください(日本風工学会誌第15号、昭和58年2月 相馬清二先生投稿記事より引用)






この引用原稿では、地形的特性を受けない海上風として、砂丘突端に位置する富津岬の風速データが引用されており、明鐘岬と富津岬ともに、最大風速値と明鐘岬では最大瞬間風速値とも列記しております。
引用図③ⅱで、明鐘岬の地形的特性を勘案して風向風速データを見ると、海上風とみられる富津岬の風速データのおよそ1・67倍の風速を明鐘岬で観測しています。明鐘岬の地形的特性で、海上風速より1・67倍増幅されるわけですが、この風速から、さらに最大瞬間風速は、およそ1.38倍の風速となっています。

引用図③ⅱより、明鐘岬周辺と酷似している地形は、内房地域に随所でみられ、こういった地域では、浦賀水道から吹き付ける風の場合、明鐘岬周辺と同様な海上風からの風速の増大が見られれるものと推定されます。

よって、引用図③④より、浦賀水道の海上風速は32㍍より、内房地域では、地形的特性のより風速増大受けて、平均風速の最大で53㍍毎秒程度、最大瞬間風速で73㍍毎秒程度の激烈暴風を観測している地域があると推定されるわけですね。

浜松で国内観測史上最高タイ記録41・1℃を観測!2つの下降気流が要因

2020-08-20 01:44:18 | 日記
①ⅰ:17日12時の天気図 ⅱ:17日の日最高気温一覧画像(全国)ⅲ:17日の日最高気温一覧画像(静岡県周辺)
ともに気象庁HPより引用。

ⅰ:

ⅱ:

ⅲ:

8月になって、夏の太平洋高気圧はチベット高気圧のアシストをも受けて強まり、各地で猛暑となっていましたが、17日、静岡県の浜松で、昼の12時過ぎに気温41・1℃を観測!一昨年7月23日に埼玉県熊谷市で観測した日最高気温国内歴代1位タイ記録となりました。
引用図①ⅰ,ⅱより、猛暑日(日最高気温35℃以上)を観測した地点は本州の各地に散見しているものの、関東以西の太平洋側や瀬戸内地域に集中している分布をもしています。
静岡県内では、西部地域で日最高気温38℃以上の身体に危険というべき酷暑を観測している様子がわかります。

これらの日最高気温分布や、浜松での記録的猛暑の要因ですが


②ⅰ:8月17日9時の全国ウインドプロファイラー風向風速分布図 ⅱ:8月17日12時の全国ウインドプロファイラー風向風速分布図
ともに気象庁HPより引用

ⅰ:

ⅱ:

引用図②ⅰ、ⅱより、東北以西では、上空2000㍍、3000㍍まで時計回りの気流の流れ(高気圧性循環)がみられ、上空1000㍍では、風光は疎らで風速は弱めとなっています。背の高い優勢な高気圧に覆われている様子で、上空2000㍍と3000㍍の風向は東北、関東、中部、近畿、中国四国地方では、おおむね西北西〜北西風で、風速10㍍毎秒程度と強めになっています。こうなりますと、東北以西の太平洋側では、地形的に山越えフェーンの影響を受けて気温が上昇しやすい傾向にあるといえます。とりわけ、西北西〜北西に地形的鞍部になっている若狭湾〜濃尾平野〜愛知県〜静岡県西部にかけての地域では、上空2000㍍~3000㍍付近にかけて気流は収束しやすくなり、その結果岐阜県西部〜三重県北部の山地を超える気流が風下の濃尾平野〜愛知県〜静岡県西部の地域に、顕著なフェーン昇温を発生させやすかったといえます。

③ⅰ:8月17日9時の静岡県周辺アメダス風向風速分布図 ⅱ:8月17日12時の静岡県周辺アメダス風向風速分布図
ともに気象庁HPより引用

ⅰ:

ⅱ:


④静岡県の地形図 国土地理院HPより引用・加工



一方、とりわけ高温となった、静岡県西部周辺の地表付近の風向風速の様子を静岡県の地形図と見比べると、静岡県西部では、おおむね西南西や西寄りで風速は弱めですが、御前崎から静岡を含む駿河湾沿岸地域では、風速は弱めであるものの、風向は西部地域とな逆で、海風である南南西〜南東風となっており、県内中央部の山地へ気流が吹き付けている様子で、西部地域との風向のコントラストが大きになっていることより、県内中央部山地で気流が上昇していることが読み取れます。

県内中央部山地で気流が上昇している状態ですと、隣接する西部地域では、反対に気流は下降する場となりますので、静岡県西部では、前出の、濃尾平野〜愛知県〜静岡県西部にかけて顕著になっていたと推測されるフェーン昇温にプラス、県内中央部山地からの下降気流も加わってこと。そして15日から17日まで類似な気圧配置であったために、浜松を含む静岡県西部では顕著な高温が続いていたことも相まって、今回の浜松での記録的猛暑は発生したといえるでしょう。

静岡県西部では、

◆濃尾平野〜愛知県〜静岡県西部にかけてに顕著なフェーン昇温+駿河湾海風吹込みによる県内中央部山地からの下降気流 

を満たす気圧配置時に、例外なく記録的高温が観測されております。